私、城なんて頼んでないよ?
シンチャオ、趙氏貞です。
今日のベトナム語は Cách đây bao xa?(カック・ダイ・バオ・サー?)。
「ここからどのくらい遠いですか?」という意味で、目的地までの距離を尋ねる時に便利です。
「清河、蒲田って Cách đây bao xa?」
「軍ごと引っ越せるくらいだ」
「距離を聞いてるんだけど」
「着いたら砦を七つ造るぞ」
「まだ着いてもいないよ?」
旅行では、先に距離が分かれば、歩くか乗り物を使うか決めやすくなります。
今回は私たちも、少し遠くへ移ります。
ただし――
着いた先で、なぜか城を造ることになりました。
蜂起開始から三か月。
私たちは勝っていた。
だから、県衙にいられなくなった。
朝、興が戻ってくるなり、門の前で水を飲んだ。
「北の道にまた斥候がいた」
「呉軍?」
「たぶん。近づかないで、こっちを見て帰った」
清河が壁にもたれたまま鼻を鳴らした。
「また場所見に来たか」
「ここなら、もう知ってるでしょう?」
「だから見に来るんだよ。兵がどれくらいいるか、象が何頭いるか、どっから荷車が入るか。ついでにお前がまだここにいるか」
最後のところで、景謙が私の後ろへ立った。
「氏貞、門から離れろ」
「どうして?」
「今の話を聞いてなかったのか」
肩に手が載る。
軽く押され、そのまま二歩下がった。
「ここでも見えると思うけど」
「俺が気になる」
景謙も一緒に下がった。
私と景謙の距離だけは、少しも変わらない。
最近、こういうことが多かった。
昔から兄の友人だから、近くにいること自体は珍しくない。
でも前は、私がどこに立つかまで景謙が決めることはなかった。
「もう大丈夫だよ」
そう言った。
景謙の手は、すぐには離れなかった。
門の外を見たまま、指だけが私の肩に残っている。
兄が奥から出てきた。
こちらを見る。
最初に私ではなく、景謙の手を見た。
そのまま二人の間を通る。
景謙はようやく手を離した。
「お前ら、こっち来い!」
兄は朝から機嫌が悪かった。
庭へ行けば、理由は分かる。
米俵が山になり、その横では鍛冶が槍を直している。軒下には怪我人が寝かされ、門の近くには荷車が三台、兵が十数人、里から来た使者が四人。
その全部を避けながら、書佐が木簡を抱えて歩いていた。
象までいた。
「昨日、米を入れた荷車が門で詰まった」
兄が言った。
「その前は怪我人を運び出そうとしたところへ象が来た。今朝は使者が入れなくなった」
「象、大きいからね」
「感想を言うな!」
兄は米俵を叩いた。
「ここへ火矢一本入れられたらどうなる?」
「燃える」
「見りゃ分かる!」
清河が笑った。
「氏貞に聞く方が悪いだろ」
「お前は黙ってろ!」
兄は庭を指した。
「米も武器も荷車も一緒に焼ける。門を塞がれりゃ怪我人も出せねえ。象はもっと出せねえ。その上、氏貞までここにいる」
「私も燃えるの?」
「そういう話じゃねえ!」
書佐が木簡から顔を上げた。
「いえ、かなりそういう話でもあります」
「だろ?」
「現在の県衙には、行政、兵站、軍事指揮、負傷者、兵の宿営まで集中しています。一か所を叩かれれば、すべて止まります」
私は黙った。
それは困る。
そもそも県衙は役所だった。
人が来て、文書を扱い、周辺の里と連絡するための場所であって、何千人もの兵と象を詰め込んで戦争を続けるために造られた場所ではない。
しかも敵は、ここを知っている。
道も知っている。
私がいることまで知っている。
興が地面へ線を引いた。
「東で戦が起きても、南で戦が起きても、報せはいったんここへ来るよね」
「うん」
「兵を出すのもここから」
「うん」
「二か所同時に来たら?」
「兄さんが怒る」
「そこじゃねえ!」
やっぱり怒った。
でも意味は分かった。
戦が小さかった頃なら、全部ここでよかった。
今は違う。
戦場が広がり、人も米も武器も象も、県衙一つでは抱えきれなくなっていた。
私の偽物まで増えている。
「じゃあ、軍を移そう」
私が言った。
清河が笑う。
「やっとか!」
景謙は笑わなかった。
「氏貞も移るんだな?」
「軍が移るなら、私も行くでしょう?」
その瞬間だけ、景謙の目元が緩んだ。
「そうか」
なぜそんなに安心するのかは、分からなかった。
本営の候補になったのが蒲田だった。
県衙を捨てるわけではない。
書佐には残ってもらう。
周辺の里との連絡、文書、徴発した米の受け入れ、兵になりたい者の受付はこれまで通り県衙で行い、軍に必要なものだけ蒲田へ送る。
「つまり私は、こちらで行政を続けます」
「寂しくない?」
「はい」
蒲田の方角から象が鳴いた。
続いて清河の怒鳴り声が聞こえた。
兄まで何か叫んでいる。
書佐は少し考えた。
「たいへん静かになります」
「よかったね」
「はい」
即答だった。
蒲田へ着いて最初に思ったのは、広い、だった。
次に思ったのは、見える、だった。
少し高い場所へ登ると、こちらへ近づく道がいくつも見える。
「あそこから来たら分かるね」
「ああ」
清河が目を細める。
「向こうも見える」
「裏へ回ったら?」
「その前に別の道を通るな」
興がしゃがみ込み、地面へ線を描いた。
「ここに見張りを置いて、こっちにも置けば合図がつながるよ」
「雨なら?」
「走るしかないかな」
「誰が?」
「僕じゃないよ」
「まだ何も言ってないよ?」
「叔母上が言う前に答えただけ」
「誰が叔母上だ!」
清河の声が遠くから飛んできた。
文七は象を連れて土地を見ていた。
私は平らで広い場所を指した。
「象はここかな」
「そこは嫌です」
「どうして?」
「落ち着かないと思います」
「象が?」
「はい」
「何があるの?」
文七は少し考えた。
「なんとなく」
兄が頭を抱えた。
「調べろ。こいつのなんとなくは無視すると後で仕事が増える」
近くの者へ聞くと、雨が続けば水が溜まりやすい場所らしい。
「知ってたの?」
「象が嫌そうだったので」
文七と別の場所へ行こうとした時、横から景謙が入った。
私と文七の間だった。
「氏貞、そっちは足場が悪い」
肘を取られる。
「こっちだ」
「文七は?」
「象と一緒なら問題ない」
「私も象に乗るけど」
「今は乗ってない」
引かれるほどではない。
でも、私が進もうとした方向とは違う。
「景謙、もう分かったよ」
「ああ」
返事だけだった。
指は肘から離れない。
数歩進んで、私がもう一度その手を見ると、ようやく離れた。
文七は何も言わなかった。
ただ、私ではなく景謙を見ていた。
高い場所から周囲を見ると、低い高まりがいくつもある。
「あそこにも人を置いたら?」
興が顔を上げる。
「こっちとつながる」
「その向こうは?」
「もう一つ欲しい」
清河が腕を組んだ。
「七か所だな」
「何が?」
「砦だよ!」
また話が大きくなった。
七つ全部を大きな砦にはしない。
敵が来そうな道には厚い柵を置き、遠くを見るだけなら見張り場でいい。
本営へまっすぐ入れないよう道を曲げ、象が出る道と荷車が入る道も分ける。
景謙が地面の図を指した。
「氏貞はここだ」
「中央?」
「どこへでも動ける」
景謙が私の横へしゃがむ。
肩が触れた。
少し避けた。
景謙も同じだけ寄った。
「護衛は四人置く」
「そんなに?」
「少ないくらいだ」
「清河もいるよ?」
「清河は戦えば前へ出る」
「文七は?」
景謙の指が止まった。
「象のところにいればいい」
「でも文七は――」
「氏貞」
遮られた。
景謙の顔が近い。
「お前はもう、好きに歩き回っていい立場じゃない」
「歩かないと分からないこともあるよ?」
「なら俺に言え」
「景謙に?」
「俺が一緒に行く」
決まったことのように言った。
誰も頼んでいないのに。
私が立ち上がると、景謙も立った。
肩についた土を指で払う。
一度。
落ちた。
それでも、もう一度払った。
そのまま手が肩に残った。
「景謙」
兄だった。
「何だ?」
「兵糧庫決めるぞ」
「今行く」
「お前じゃねえ。氏貞だ」
景謙が兄を見る。
「俺も行く」
「好きにしろ」
兄は歩き出した。
私も続いた。
景謙が並ぼうとする。
兄が振り返り、無言で私と景謙の間へ入った。
景謙は兄を見る。
兄は前だけを見る。
誰も何も言わなかった。
兵糧庫は奥へ置いた。
しかも一つではない。
「分けるぞ」
兄は即答した。
「一つ焼かれて全部なくなったら、何食うんだ」
「じゃあ武器も?」
「分ける」
「怪我人は?」
「象の道から離す」
「荷車は?」
「入口に近くする。ただし絶対に門を塞がせねえ」
清河が笑った。
「兄貴、城造るの向いてんじゃねえか?」
「俺は米運んでただけだ!」
「今は城まで作ってるね」
「城は運べねえ!」
その日から蒲田は巨大な工事場になった。
木が切られ、穴が掘られ、柵が立つ。
鍛冶が金具を作り、荷車が土を運び、象には太い材木を引かせる。
清河は当然、象にも無茶を言った。
「もう一本いけるだろ!」
文七が象を見た。
「そっちへ行きます」
「何が?」
象が清河へ向いた。
「うわっ!」
「象です」
「見りゃ分かる!」
清河が逃げる。
文七は平然と象の鼻を撫でた。
「大声を出すので、気になったみたいです」
「何で私が悪いんだよ!」
たぶん少しは悪い。
兄はもっと忙しかった。
「その米は奥だ! 新しい方から食うな! 西へ材木回せ! 象の餌を人間の兵糧庫へ積むな!」
「兄さん」
「何だ!」
「楽しそうだね」
「どこを見てそう思った!」
でも、兄なしでは誰も動けなくなりつつあった。
米が足りなくても、荷車が遅れても、負傷兵をどこへ送るか分からなくても、結局みんな兄のところへ来た。
本人はずっと「俺は米を運んでいただけ」と言っているけれど、その米を含めて、軍を止めないための仕事が兄のところへ集まっていた。
景謙は逆に、蒲田が出来上がるほど私の近くにいる時間が増えた。
見張り場へ行けば後ろにいて、兵糧庫ではいつの間にか隣にいる。
私が誰かを呼ぶより早く、景謙がその相手を見る。
若い兵が報告に来た時も、景謙は自然に私の前へ半歩出た。
「氏貞殿へ直接――」
「ここで言え」
「しかし――」
「俺が聞いている」
私は景謙の肩越しから顔を出した。
「私に報告なんでしょう?」
兵が困った顔をした。
景謙は一度、私を見る。
それから半歩だけ退いた。
「話せ」
私が許可したのではない。
景謙が許可したみたいだった。
兵が話している間、景謙の手が私の肩へ載った。
最初より重い。
報告が終わる。
兵が去る。
まだ手は載っている。
「景謙」
兄が呼んだ。
「何だ」
「手」
「氏貞が何も言ってねえだろ」
兄の顔から、少しだけ表情が消えた。
「だから何だ」
二人の間に妙な間ができた。
私は景謙を見た。
「もう報告終わったよ?」
ようやく手が離れた。
景謙は兄ではなく、私を見ていた。
「心配してるだけだ」
「分かってるよ」
そう答えると、景謙は満足したようだった。
兄は何も言わなかった。
数日後。
蒲田には七つの守りができた。
大きな砦もあれば、柵と見張り台だけの場所もある。
兵糧庫は分けた。
武器も分けた。
象の繋留地は負傷兵から離した。
県衙一つを叩けば全部止まった頃とは違う。
一か所を抜かれても、別が動く。
一つ焼かれても、全部は失わない。
県衙では書佐が行政を止めず、蒲田では兄が軍を止めない。
私は中央の高台から、それを眺めた。
三か月前には何もなかった。
呉から奪った役所ではない。
誰かに与えられた陣地でもない。
自分たちで道を決め、柵を立て、米を隠し、象を置いた。
「氏貞殿」
新しく来た兵が登ってきた。
「総大将。西の砦ですが――」
「待って」
男が止まる。
「今、誰を呼んだの?」
「氏貞殿です」
「その前」
「総大将?」
清河が吹き出した。
「諦めろ」
「まだ何も言ってないよ?」
「顔に書いてある」
私は字が読めないのに。
兵も笑った。
その時だった。
景謙が私の背後へ来た。
笑っていなかった。
腰より少し上へ手が当たる。
肩より低い。
前へ押される。
一歩だけ。
私は振り返った。
「景謙?」
「そいつと近すぎる」
「誰?」
「今の男だ」
もう兵は離れている。
「報告に来ただけだよ?」
「分かってる」
分かっている人の言い方には聞こえなかった。
「日が落ちる。下りるぞ」
また背中へ手が当たる。
さっきより強かった。
「自分で歩けるよ」
景謙の指が止まった。
「氏貞」
「何?」
数息、何も言わない。
兄が下からこちらを見ていた。
清河も笑うのをやめている。
景謙はようやく手を離した。
「……暗くなる前に戻れ」
その瞬間、北の見張り火が消えた。
二度、点く。
ほとんど同時に、東の火も三度揺れた。
興の顔が変わった。
「北と東。両方に動きがある」
清河は槍を掴んだ。
「何人だ?」
「まだ分からない。でも同時だ」
私は七つの火を見た。
県衙にいた頃なら、どちらか一方しか見えなかった。
今は違う。
二方向から来る敵を、こちらはもう見ている。
清河が笑った。
今度は戦の顔だった。
「完成した日にちょうどいいじゃねえか」
「何が?」
「決まってんだろ」
槍を肩へ担ぐ。
「この城が本当に使えるか、試すんだよ!」
まだ一日目なのに……
私が北の火へ向かおうとすると、景謙が先に一歩動いた。
ちょうど私の進路だった。
「景謙?」
「俺も行く」
「まだ行くって言ってないよ?」
景謙は退かなかった。
「行くだろ、お前は」
景謙の口元が上がる。
私より先に、私の答えを知っているような顔をしていた。
蒲田の七つの火は、その夜、すべて戦の合図に変わった。
呂清河だ。
今回はベトナムでの面子の話だ。
旅行中、人前で相手を怒鳴ったり、失敗を大勢の前で責めたりするのは避けた方がいい。
相手に恥をかかせないのも大事な礼儀だ。
「清河」
「何だ?」
「今日、兄さんに何回怒鳴った?」
「覚えてねえ」
「象には?」
「象は人じゃねえ!」
「私には?」
「お前は怒鳴らせるんだよ!」
旅行では腹が立っても、まず落ち着け。
人前で相手を追い詰めるより、静かに話した方がいい。
「清河も?」
「戦じゃなきゃな!」
「じゃあ今夜は?」
「敵が来てんだろ!」
そうでした。
次回。
造ったばかりの城を、さっそく使う。




