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砂鳥物語-花蜜の苑  作者: 千羽鳥


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6/21

5物語の情景

 ホーカーがタウベと別れたのには理由があるのだろう。

 術にかかって襲うかもしれない。錯乱させる類の術なのか、操られてしまうのか。どちらかだとすれば危ない。

 眠らせるとすれば一人でいるほうが危険だが、ホーカーはその可能性は低いと考えたらしい。

 それに、捜索は分担したほうが効率がいい。

 一緒に行動していたらこちらが見つかってしまう可能性も高い。

 しかもホーカーはあれだけジエダスのことを知っていたのだから、顔見知りなんだろう。

 塔の追手を避けようと行動されるなら、ホーカーよりタウベが先にジエダスを見つける可能性のほうがある。

 太陽は真上。あの位置に月が昇るまで、まだたっぷり時間がある。

「そういえば、ここに住んでる人はいないのかな」

 いくら花が多いといっても、道を埋め尽くすほどではない。

 よく見れば野菜を育てる小さな畑が点在して、もっとよく見れば畑ではなく花壇に野菜が植えられている。

 これだけの花や野菜の世話を一人でしているとは思えない。

 しかし家どころか小屋のような建物さえ見当たらない。さながらここは、歪で巨大な庭苑だ。

 砂漠では草花を見る機会が少ない。

 瑞々しい野菜を拝めるのは畑を持つ者の特権。まして花など、魔法薬や染料の材料としてくらいしか育てる価値もないだろう。

「あ、そっか。あの本に書かれてた情景って、こんな感じだったんだ」

 想像力に乏しいタウベは以前その本を読んだとき、ただの文字の羅列に思えた。舞台も主人公の心情も想像できなかった。

〝穏やかな風が花蜜の香りを届けてくれるだろうか。彼は想った〟

〝彼が愛情を注いだ花の香りを、素敵だと言ったあの女性に〟

〝しかし、吹き戻った風が運んだのは、彼女の訃報だった〟

〝自分の愛は届いていたのか。本当に彼女は手の届かないところに行ってしまったのか〟

〝口実が欲しかっただけなのだ。彼はもう一度、あの女性に届けたかっただけなのだ〟

〝色鮮やかな花を。酔いそうになるほど甘く、芳醇な香りを〟

〝彼女は喜んでくれるだろうか〟

「……予想通り、色々と分からずじまいになったなぁ」

 主人公の心情は分からないままだろう。でもこれで、情景は想像できるようになったかな。

 塔を出る直前に読んだ本の結末を思い返しながら、タウベは住人探しを続けた。


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