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砂鳥物語-花蜜の苑  作者: 千羽鳥


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20/21

幕外(砂塔)

 塔に辿り着き、十階でタウベと別れたホーカーは十一階を目指す。

 チークの重い扉をノックして開けると、いつも通りの人物たちが笑顔で迎えた。

「やあ、おかえり。任務は失敗かい?」

「……報告はいらねぇ感じ?」

 失敗すると思って行かせたのだから、スマイル隊長も人が悪い。

「報告を頼むよ。重要なのはどう失敗して、君が何を持ち帰ったか、だからね」

「ジエダスは植物を守るため、弟子と共に貧民街二地区に移住。後にジエダスとその弟子は死亡。フィエルは二人の移住よりも前に死亡していたため、今の二地区に居住者は無し。植物だけがいる状態だ」

「そういう話にまとめてきたんだね」

 ホーカーは頷くと、懐から羊皮紙を取り出す。筒状に丸められたそれには赤い封蝋がある。

 それをスマイルの隣りに立っている副隊長のボーマシに手渡すと、ボーマシは内容を読み上げる。

〝貧民街二地区は無人である〟

〝これを砂塔が事実と認めるならば、ささやかなる奇跡を約束する〟

〝亡霊 フィエル〟

「……シンプルな商談とは言い難いね。説明してくれるかな」

「二地区には薬にできる草花と野菜が〝自生〟してた。この国は薬も食糧も潤沢とは言えねぇだろ? だから塔側が無人の二地区に干渉しないことを条件に、薬と食糧をくれるって契約書を持ってきた」

 スマイルは笑い話を聞いたときのような顔をして言う。

「それは君が亡霊と約束してきたってことでいいのかい?」

「提案したのはタウベさ。そんで約束するのは俺でもタウベでもねぇ」

 ホーカーはピッと正面の人物を指差す。

「なるほど。いやぁタウベは賢い子だね。面白そうだからサインしてあげるよ」

 隣りでボーマシがむっとしているのも気づかないふりで、スマイルはさらさらと本当にサインして見せた。

 亡霊たちにとって価値を持った契約書を手に、ホーカーは窓から飛び出していく。

「魔導士師団にはどう説明するつもりだ」

 ボーマシが尋ねると、

「惜しい人を亡くした、ってところかな」

 スマイルは肩をすくめて答えた。


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