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#20 乱流

 第五階層で出会ったあの圧倒的な絶望の象徴であった黒い巨大竜、リジガードラゴン級を撃破した我々、隕石孔調査軍は、その巨大な亡骸が横たわる広大な空洞を新たな拠点とし、前線基地の構築を急ピッチで進めていた。

 第一階層から数えて、どれほど深く潜ってきたのだろうか。見上げれば、はるか上方には第二対竜戦闘隊の魔力によって、結果的に巨大黒竜を弾き飛ばし、その頭部を突き刺した天井の分厚い岩盤が見える。今ではその黒竜の突き刺さっていた首は取り除かれ、地上の死骸は解体された後、研究のために一部が地上へと運ばれた。

 この深層に至り、地上からの距離は途方もないものとなっている。そのため、大量の物資と人員を輸送する手段として、第一階層から続く巨大な螺旋通路を利用した鉄道の敷設工事が本格化していた。すでにその鉄道はこの第四階層まで延伸されており、シューッという蒸気の音と、石炭の焦げた匂いを撒き散らしながら、黒光りする大型の機関車が貨車を引いて次々と第四階層へと滑り込んでくる。そこからここ第五階層まではまだ、トラック頼みだ。こうして運ばれた物資が山積みになる光景は頼もしいが、それだけ地上から切り離された異世界にいるという事実を、この調査軍全員に突きつけていた。


 あちこちで金づちの音が響き渡る第五階層の前線基地に、嫌な報告が飛び込んできたのは、基地移転から三日後のことだった。


『第五階層のさらに奥へ向かった偵察機が、消息を絶ちました』


 司令部テントで通信兵が青ざめた顔で報告する。


「まさか、撃墜されたのか? ということは、また魔力探知機に大型竜の反応はあったのか」


 レーマン大佐が鋭く問いただすが、通信兵は首を横に振る。


「いえ……偵察機からの通信では、『強烈な風』という報告と共に、激しい風切り音だけが聞こえたかと思うと、そこでプツリと通信が途絶えました。大型竜の反応は報告されていません」

「風だと? まさか、この閉ざされた地下空間で機体を落とすほどの乱気流が発生したとでも言うのか」


 レーマン大佐が訝しげに眉をひそめる。だが、事実として偵察機は還ってこない。原因を究明し、その先の脅威を把握し、排除しなければ、本隊の進軍は不可能だ。


「第二対竜戦闘隊に連絡、同戦闘隊の撃竜四機で強行偵察を実施せよ。直ちに、出撃を命ずる」


◇◇◇


 隊長が司令部からの命令を受け、私とファルケンベルク曹長、ヴァーグナー曹長、そして隊長の四人は、修理を終えたばかりの愛機へと乗り込んだ。

 千二百馬力のエンジンを轟かせ、我々は第五階層のさらに奥、暗闇が支配する未知の空域へと飛び立った。

 しばらく進むと、魔力探知機が微かな反応を示した。


『前方に敵影。ワイバーン級……数は、たったの十匹だな』


 シュタイナー大尉の無電に、ファルケンベルク曹長が鼻を鳴らす音が聞こえた。


『なんだ、たったの十匹ですか。リジガードラゴン級の親玉でも出るかと身構えて損しましたよ。さっさと片付けましょう』


 確かに、これまでの七十匹、八十匹という絶望的な大群や、超巨大竜との死闘を思えば、十匹のワイバーン級など我々の敵ではないように思えた。


『油断するな。ここで俊足の偵察機が堕とされている。どうやら、強風か何かで落とされたとの報告だ。何か、仕掛けてくるぞ。各機、散開して攻撃態勢に入れ』


 大尉の指示で、我々はスロットルを押し込み、暗闇の中に青白い魔力障壁を漂わせる十匹のワイバーン級へと突入した。

 魔導砲の照準を合わせ、射程圏内に捉えようとした、その瞬間だった。

 十匹のワイバーン級が、不自然なほど規則的に、そして狂ったような速度で一斉にその巨大な翼を羽ばたかせたのだ。


「なっ……!?」


 ドンッ! という目に見えない巨大なハンマーで殴られたような衝撃が、機体を襲った。

 上下左右の感覚が一瞬にして喪失する。ワイバーン級たちが一斉に引き起こしたそれは、単なる羽ばたきの風ではない。何らかの魔力的な干渉を伴った、超強力な竜巻だ。


『くそっ! 操縦桿が効かない!』


 ヴァーグナー曹長の悲鳴が響く。私の機体も、まるで濁流に放り込まれた木の葉のようにきりもみ状態となり、完全に制御を失った。


「こ、このままでは、地面に激突する!」


 魔導砲を撃つどころの騒ぎではない。私は死に物狂いでフラップを全開にし、スロットルを絞って急減速をかけながら、無理やりラダーを蹴り飛ばし、機首を反転させる。左翼先端が地面の岩肌をかすり、火花を散らす。が、どうにか体勢を立て直し、上う称した。

 機動力の高い撃竜だからこそ可能な操縦だ。直線が早いだけの偵察機では、とても対処できなかっただろう。


『全機、離脱する! 一旦、基地へ帰投だ』


 シュタイナー大尉の怒号が響く。四機の撃竜は機体をミシミシと軋ませながら、どうにかその狂気の乱気流圏から転げ出るように逃げ出した。

 遠くから振り返ると、十匹のワイバーン級は追ってくる様子もなく、ただその空域で規則的に羽ばたきを続け、防壁を形成し続けていた。少数の敵だが、あれでは近づくことすらできない。我々は一発の魔導砲も撃てなかった。射程の二倍の位置で、あの暴風だ。ともかく、強行偵察の任務は果たせたわけだし、そのまま基地へと逃げ帰るしかなかった。

 そして戻った先の、第五階層の前線基地でのブリーフィングの席上。


「あんなもの、空を飛ぶ機体ではどうにもなりません。魔導砲を放つ間もなく墜落します。陸軍に任せるべきでしょう」


 ファルケンベルク曹長が忌々しげにテーブルを叩く。私も同意見だった。相手が炎を吐いてくるなら防御魔導で防げるが、空間そのものをかき回されては飛行機は無力だ。


「いや、陸軍では難しいな。動きが鈍い分、(ブレス)魔導の餌食にあう」


 隊長が反論する。実際、陸軍でワイバーン級を堕とすのはほぼ無理だろう。あの風を食らっても、戦車ならば吹き飛ばされることなく前進できる。が、その代わりに(ブレス)の餌食になる。魔導砲戦車で空を舞うワイバーン級を堕とすのは、至難の業だ。

 様々な意見が出たが、どれも決定打に欠ける。第二対竜戦闘隊の皆が頭を抱えているところへ、「お邪魔してもよろしいかな?」と、野太い声が響いた。

 テントの入り口をくぐってきたのは、陸軍第五機甲大隊のギュンター・ミュラー大尉だった。


「ミュラー大尉か。先日の黒竜戦では、見事な砲撃を見せてもらった。貴官らの戦車隊がいなければ、あれにとどめを刺すタイミングを逃すところだった」


 シュタイナー大尉が立ち上がり、敬礼を交わす。


「いやいや、空の英雄たちにそう言ってもらえるとは光栄だ。黒竜の首を吹き飛ばしたあの感触は、戦車乗りとして一生の誇りになる。しかし、その空の英雄たちがお困りのようだと聞いて、訪ねてきた次第だ」


 ミュラー大尉の言葉に、シュタイナー大尉は苦笑しながら、先ほどの「乱流を操るワイバーン級」の厄介さを打ち明けた。機体が木の葉のように舞い上がり、近づくことすらできないのだと。

 それを聞いたミュラー大尉は、太い腕を組み、こんな妙案を出す。


「貴官らの戦闘機と、我が大隊の戦車を、鋼鉄のワイヤーで括り付けたなら、どうか? 我が機甲大隊の戦車三十トンの重量が『重り(アンカー)』となれば、いくら乱気流だろうが、貴官らの機体が吹き飛ばされることはないはずだ」


 テントの中が、水を打ったように静まり返った。


「ミュラー大尉、たとえワイヤーで戦車と結び付けたとしよう。だがそれでどうして、機体が安定できると言うのか?」


 シュタイナー大尉が唖然として問う。


「凧、というものを御存知でしょう」

「無論、知っている」

「紐でつないだ凧は、強い風であおられても上に登ろうとする。ワイヤーはいわば、機体の回転を止めて上昇させるための安定装置だと思ってくれればいい」


 要するに、ミュラー大尉は我々を「凧」にすると、そう言っているのだ。

 一見すると良い案だが、いろいろと問題がある。


「ちょっと待ってください、戦闘機と戦車では速度が全く違う。それに、飛行中の機体にどうやってワイヤーを繋ぐというんですか?」


 ファルケンベルク曹長が声を荒らげる。私も頭が痛くなってきた。その通りだ、まさか最初からつなぎっぱなしで第六階層に向かうわけにはいかない。


「簡単なことだ。敵の暴風圏のギリギリ手前で、貴官らが失速スレスレまで減速し、機体の下部からワイヤーのついたフックを垂らす。下で並走する我が戦車の上部に仕掛けたワイヤーにそのフックを引っ掛ける。そのワイヤーにはウインチを付けてワイヤー長さを調整する。そうすれば、機体が天井にぶつかりそうになればウインチを巻取り、逆に落ちそうになれば戦車を加速させて舞い上がらせる。凧上げをやったものならば、そのあたりの感覚は分かる。貴官らはワイヤーの張力を保ちながら、暴風圏に突っ込みつつ魔導砲を放つタイミングをはかる。それだけだ」


 あまりにも豪快すぎる。だが、もし本当に機体を下から引っ張り続けることができれば、風に煽られて錐揉みになり墜落する事態は防げるかもしれない。


「しかし、ワイヤーの強度はもつのか?」

「陸軍が誇る牽引用の特殊鋼鉄ワイヤーだ。戦車二両を吊り上げても切れない。現にあのリジガードラゴン級の深く食い込んだ首を天井から引っこ抜くためにも使われたほどだ。心配するな」


 激論が交わされたが、他に打つ手はない。最終的に、シュタイナー大尉は深くため息をつき、決断を下す。


「よし、その作戦で行こう」


 そして、その翌日。

 急ごしらえで、四機の撃竜にワイヤーが取り付けられる。コックピット内のレバーを引けば、フック付きのワイヤーが垂れ下がる仕組みだ。そのワイヤーは、本体や翼のフレームに取り付けられている。

 まずは、あの十匹のワイバーン級がいる場所へと向かう。先行して、第五機甲大隊が向かっているはずだ。

 そしてまさにワイバーン級十匹を魔導探知機が捉えた辺りで、五台の戦車が待っていた。一台は指揮車で、残りの四台が、それぞれの撃竜と接続する車両だ。

 そして四機の撃竜が低空を這うように飛び、その真下を四両の四式中戦車が土煙を上げて並走していた。

 前方に、ワイバーン級が作り出す不気味な気流の歪みが見えてくる。


『行くぞ! 各機、フラップ展開しつつ減速! ワイヤーを投下!』


 私はスロットルを絞り、失速寸前の機体をどうにか安定させながら、座席の下のレバーを引いた。機体の腹部から、先端に重いフックのついた太い鋼鉄ワイヤーが垂れ下がる。


『捉えた! 接続完了!』


 真下を走る戦車のキューポラから身を乗り出した戦車兵が、見事な手際でフックを砲塔に付けられたウインチの先に固定する。


『戦車隊、全速前進! 撃竜四機、そのまま突っ込め!』


 ミュラー大尉の怒号と共に、私は再びスロットルを押し込んだ。機体と戦車を繋ぐワイヤーがピンと張り詰め、ギチギチと嫌な音を立てる。ウインチがワイヤーを伸ばし、我々はちょうど空間の中ほどの高度を取る。

 そのまま我々は、十匹のワイバーン級が待ち構える暴風圏へと突入した。

 直後、猛烈な風が襲い掛かる。


「がはっ……!」


 あらゆる方向から叩きつけられる暴力的な風。機体がきりもみ状態になりかけ、上下左右に激しく振り回される。だが、完全に吹き飛ばされることはなかった。機体の腹部から繋がるワイヤーが、機体が飛ばされるのをどうにか繋ぎ止めている。

 しかしだ、想像以上に凄まじい衝撃と予測不能なGが、全方位から私の身体を揺さぶる。脳が揺れ、視界がチカチカと明滅した。


『だ、だめです! 目が、回る……意識が……!』


 無線からヴァーグナー曹長の弱々しい声が響いた。元々、高G耐性のない彼にとって、この無茶苦茶な振り子状態は拷問に等しい。


『ヴァーグナー、無理をするな! 後退し、戦線離脱せよ!』


 隊長の指示で、ヴァーグナー機の戦車が後退に転じる。暴風圏を抜けた後にワイヤーが切り放され、フラフラになりながらもどうにか戦線を離脱した。

 さて、残るは私とシュタイナー大尉、ファルケンベルク曹長の三機となった。

 相変わらず、視界がぐるぐると回転し、キャノピーの外の景色がブレてまともに敵を狙えない。だが、やるしかないのだ。


「我が魔導の光よ、嵐を切り裂く刃となれっ!」


 私は振り回される機体の中で、歯を食いしばりながら魔石に魔力を注ぎ込んだ。一瞬、敵のワイバーンの姿が照準の十字を横切った瞬間、予測射撃で二十ミリ魔導砲のトリガーを引く。

 極太の光条が乱気流を突き抜け、見事一匹のワイバーンの胴体を貫いた。


『一匹撃墜! やったな!』


 私の戦果に勇気づけられ、隊長とファルケンベルク曹長も、回転する視界の中で強引に魔導砲を放ち始めた。陸軍の戦車が重りとして我々を繋ぎ止めてくれているおかげで、少なくとも「墜落する恐怖」だけは排除されている。

 さすがに回転しながらの射撃は、そう簡単には当たらない。が、相手は高々十匹だ。しかも、図体が大きい上に静止している。こんな状況でもなんとか一匹、また一匹と、ワイバーン級が光に貫かれて落ちていく。

 敵の数が減るにつれ、機体を襲っていた暴風が徐々に弱まっていくのが分かった。


『敵は残り、四匹! ほとんど風がない!』


 ファルケンベルク曹長が叫ぶ。


『よし、これならもう戦車(アンカー)は不要だ! ワイヤー切り離し! 一気に掃討する!』


 隊長の号令で、私はリリースレバーを強く引いた。パンッと音を立てて、ワイヤーが切り放される。

 機体を縛り付けていた呪縛が解け、撃竜は本来の軽快な機動性を取り戻す。鬱憤を晴らすかのように、我々三機はスロットルを全開にして残り四匹のワイバーン級へと躍りかかった。

 風を失ったワイバーンなど、もはやただの的だ。死に物狂いで風を起こし続けるワイバーン級に対し、私は狙いを定める。四機の撃竜に、四匹のワイバーン級。それぞれが一匹づつを狙い、続けざまに放たれた魔導砲がいとも容易く粉砕する。その瞬間、第六階層へと続く道は、完全に開かれた。


『空域クリア、魔導探知機に反応なし。作戦終了』


 隊長機から、全ての敵が排除されたことが報告される。そして隊長は無線で、続けざまにこう告げた。


『ミュラー大尉、貴官の妙案に救われた。感謝する』


 シュタイナー大尉が無線で告げると、地上からミュラー大尉の豪快な笑い声が返ってきた。


『今回も、陸と空の共同作戦による勝利、我々は手助けをしたまでのことだ』


 魔導士でもないお方だが、この士官は本当に勇気がある。三度も我々を、いや調査軍を救ってくれた。

 そして帰投後の、第五階層の前線基地にて。

 機体から降りた私は、まだ足元がおぼつかないまま、出迎えてくれたミュラー大尉のもとへ駆け寄った。


「ミュラー大尉殿! 本当にありがとうございました! 大尉の素晴らしいアイデアがなければ、私たちは絶対にあの嵐を抜けられませんでした!」


 私は心からの純粋な感謝と興奮から、満面の笑みでこの勇敢なる士官に敬礼する。


「フィッシャー軍曹、無事で何よりだ。あんな暴風の中、敵を叩き落とすとは、大した腕前だ」


 ミュラー大尉も嬉しそうに私の手を握り返し、私の肩をポンポンと叩いた。

 が、その時だ。

 私の背後から、シベリアの永久凍土よりも冷たい視線が突き刺さるのを感じた。

 振り返ると、シュタイナー大尉、いや、ヘルマンが、目を据わらせてこちらを凝視している。その周囲だけ、空気が氷点下まで下がっているような錯覚を覚えるほどだ。


「あ、あの、隊長……?」


 私が恐る恐る声をかけると、ヘルマンはずかずかと歩み寄り、私の腕をガシッと掴んだ。


「ミュラー大尉。我々はこれから第二対竜戦闘隊ののブリーフィングがある。軍曹を借りるぞ」

「りょ、了解。ではまた、機会があればまた会おう、フィッシャー軍曹」

「ともかく、貴官の協力には感謝する。貴官のあの妙案がなければ、この勝利はなかった。感謝する。では」


 そういいながら、有無を言わさぬ無言の力で、私は隊長に連れていかれる。

 が、ブリーフィングをするわけでもなく、向かった先は基地の隅にある大尉の個人テントだ。その中に、半ば強引に引きずり込まれた。

 テントの入り口がバサリと閉じられた瞬間、ヘルマンは私をテントの支柱に押し付けるようにして、至近距離から睨み下ろしてきた。


「な、なんですか、突然……」

「随分と、他の男に愛想を振りまいていたな」


 低く、地を這うような声。私はポカンと口を開けた。


「えっ? あ、あれは純粋な感謝ですよ! だって、大尉殿のアイデアに救われたんですから!」

「言い訳は聞かん。あんな風に両手で男の手を握り、満面の笑みを向けるなど……軍紀の乱れだ」


 完全に理不尽だ。普段は冷静沈着な隊長が、どうしたと言うのか?

 と、そこでふと思いつく。そうか、あの厳格で、常に冷静沈着な部隊長が、陸軍の戦車隊長にヤキモチを焼いたのか。


「……あの、もしかして、妬いてるんですか、ヘルマン?」


 私がからかうように小声でファーストネームを呼ぶと、彼の耳まで一気に赤く染まった。


「い、いや、そうではなくてだな」

「そうじゃないなら、どうして私をこのテントに押し込んだりしたんですかぁ?」

「別にいいだろう。こういうのは初めてではないのだし、すでに噂で皆が知っている間柄だろう」

「その間柄を崩すまいと、必死に見えるんですけど」


 あまりにからかう私に、とうとう忍耐が吹き飛んだのか、強引に私の唇を塞いだ。

 火傷の治りかけの腕を庇うように、しかし逃げられないようにしっかりと抱き寄せられる。嵐のような空戦を生き抜いた直後の、高ぶったアドレナリンと、独占欲にまみれた甘く激しい口づけをされる。

 で、そのまま、この第五階層の冷たい暗闇の中、私は嫉妬深い隊長と共に、外の喧騒を忘れるほどに熱い一夜を過ごすことになった。

 にしてもだ、意外な一面を知ってしまったな。隊長、いや、ヘルマンもやっぱり「男」なんだなぁと、私はそう感じた。

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