光を狩る者
最初の報せは、北方都市リゼルからだった。
光の共鳴者が現れた町。
聖剣と同じ波長を持つ少女――
まだ十四歳。
剣も握ったことのない、ただ優しいだけの子。
彼女の共鳴が、夜空を淡く照らしたその夜。
空が裂けた。
黒い影が落ちる。
レオンだった。
少女の光が震える。
「……あなた、誰?」
答えはなかった。
黒剣が振るわれる。
「ダークネス・スラッシュ」
光は一瞬で裂けた。
少女は倒れる。
命は奪わない。
だが――
胸の奥の“光核”だけが砕かれる。
共鳴は消えた。
レオンは無表情のまま、次の場所へ消えた。
二人目は砂漠の都市カザーン。
豪胆な青年。
自警団の隊長。
光を纏い、民を守ろうとした。
「俺は逃げねぇ!」
叫びと共に斬りかかる。
速い。
強い。
だが。
闇がそれを上回る。
三合。
終わり。
黒刃が光を貫く。
共鳴、断絶。
青年は膝をつき、光を失う。
レオンは振り返らない。
三人目。
四人目。
各地で報告が上がる。
「共鳴者が敗北」
「闇の剣士出現」
「圧倒的戦力差」
王都。
作戦室。
空気が凍る。
ノアが机を叩く。
「この速度は異常です」
「移動術式を常時展開している……」
ガルドが歯を鳴らす。
「狩りだ」
リュカは黙って報告書を握りしめている。
震えているのは、怒り。
レオンは殺していない。
だが。
“未来”を奪っている。
共鳴を失った者は、二度と光に触れられない。
勇者候補は、削られていく。
夜。
王都の塔の上。
リュカは空を見る。
胸が痛む。
遠くで、また一つ、光が消えた。
共鳴は繋がっている。
だから分かる。
「……やめてよ」
小さく呟く。
その時。
背後の空間が歪む。
振り向く。
レオン。
黒い外套が夜に溶ける。
「来ると思った」
リュカは構える。
聖剣が光る。
レオンの目が細まる。
「もう六人だ」
淡々と告げる。
「残りは、何人だ?」
挑発ではない。
事実確認の声。
リュカの瞳が燃える。
「やめて」
「それが、お前の答えか?」
レオンの魔力が膨れ上がる。
王都全体が軋む。
圧倒的。
「光は選別する」
レオンが言う。
「なら俺は、ふるい落とす側に立つ」
「真に残る者だけでいい」
その思想は、冷酷で、合理的で――
どこか王の論理に似ている。
リュカが踏み出す。
「違う!」
「仲間を削る強さなんて、強さじゃない!」
一瞬。
レオンの瞳が揺れる。
だが。
すぐ消える。
「証明してみろ」
黒刃が夜を裂く。
リュカが受け止める。
光と闇が激突。
衝撃が街を震わせる。
ガルドとノアが駆けつける。
三対一。
それでも。
押される。
レオンは余裕すらある。
一閃。
ガルドが膝をつく。
術式破砕。
ノアが弾き飛ばされる。
リュカだけが立つ。
息が荒い。
だが退かない。
レオンが剣を構える。
「最後の確認だ」
「お前は、生き残る側か?」
リュカは叫ぶ。
「違う!」
「みんなで、生き残るんだ!!」
光が爆ぜる。
聖剣が眩く輝く。
だが。
完全には届かない。
レオンは跳躍。
距離を取る。
「まだ足りない」
黒い裂け目が開く。
「次は、もっと強い光を狩る」
消える。
夜が戻る。
リュカは崩れ落ちる。
涙は出ない。
ただ、唇を噛む。
光の巡礼は、希望の旅だった。
今は。
闇に追われる逃走劇になっている。
世界は揺れている。
光は減っていく。
そして。
次の共鳴者の場所は――
王都、内部。




