奪還 ――闇に堕ちた共鳴――
海沿いの港町。
潮の匂いと、錆びた鐘の音。
そこにいた。
三人目の共鳴者。
名はレオン。
王都出身の元騎士見習い。
剣は未完成。
だが心は強い。
「王が間違ってるなら、俺が止める」
真っ直ぐな男だった。
聖剣は確かに共鳴した。
仲間になるはずだった。
――その瞬間。
空が、割れた。
黒い裂け目。
重力が歪む。
港の水面が逆流する。
リュカが歯を食いしばる。
「来る……!」
降り立つ影。
黒衣。
長いマント。
世界を見下ろす眼。
魔王。
圧倒的な静寂。
誰も動けない。
風さえ止まる。
魔王はレオンを見る。
「お前か」
レオンが剣を構える。
震えている。
だが、退かない。
「……何だ、お前」
魔王は一歩踏み出す。
空気が軋む。
「光は、未完成ほど美しい」
その言葉と同時に。
レオンの剣が暴走する。
聖剣の共鳴が、狂う。
リュカが叫ぶ。
「やめろ!!」
だが遅い。
黒い魔力が、レオンの胸に流れ込む。
拒絶。
叫び。
光と闇が衝突する。
港が崩壊する。
ガルドが吹き飛ぶ。
ノアが結界を張る。
ミラが魔力をぶつける。
効かない。
魔王は、ただ触れているだけだ。
レオンの目が白く染まる。
「俺は……俺は……」
聖剣の共鳴が、ねじ曲がる。
光が黒に侵食される。
魔王が微笑む。
「選択を与えよう」
「王の犬か」
「私の剣か」
レオンが叫ぶ。
「俺は――」
次の瞬間。
闇が爆発した。
衝撃波。
全員が地面に叩きつけられる。
煙が晴れる。
魔王の腕の中に、レオンがいる。
目は、闇色。
剣は黒く染まっている。
聖剣の鼓動が、悲鳴のように鳴る。
リュカが立ち上がる。
「返せ……!」
魔王は視線だけを向ける。
その一瞥で、膝が震える。
「奪ったのではない」
「選んだのは、彼だ」
嘘だ。
だが、完全な嘘でもない。
レオンの中にあった怒り。
王への失望。
守れなかった過去。
そこに闇が差し込んだ。
魔王は空へ浮く。
「光は、闇があってこそ輝く」
「奪い返してみせよ、勇者」
裂け目が閉じる。
静寂。
港は半壊。
波が戻る。
リュカは歯を食いしばる。
聖剣が震えている。
怒り。
悔しさ。
そして――恐怖。
エリアが震えた声で言う。
「私たちも、ああなるの?」
ノアが静かに答える。
「共鳴は、均衡だ」
「どちらにも傾く」
カイルが拳を握る。
「取り戻すぞ」
ガルドが立ち上がる。
「当たり前だろ」
リュカは海を見る。
まだ、レオンの残滓が残っている。
共鳴は消えていない。
繋がっている。
完全には堕ちていない。
リュカは剣を握る。
「助ける」
迷いはない。
「仲間だからだ」
聖剣が強く鳴る。
遠く。
魔王城方向。
黒く歪んだ共鳴。




