無謀宣言 ――王と魔王の間に立つ者――
空が裂ける。
王城跡から黄金の柱。
王が姿を現す。
その対角線上。
黒い裂け目から、魔王がゆっくりと降り立つ。
二柱。
向かい合う。
その間にあるのは――
壊れかけた王都。
魔族も、騎士団も、兵も、すべてが凍りつく。
王が静かに言う。
「予定より早いな」
魔王が応じる。
「貴様の駒が、面白い動きをした」
二人の視線が、同時にリュカへ向く。
心臓が跳ねる。
呼吸が浅くなる。
足が震える。
正直、逃げたい。
本能が叫ぶ。
勝てない。
次元が違う。
だが。
一歩、踏み出す。
「やめろ」
声が、震える。
でも止めない。
「ここでぶつかったら、街が消える」
王が冷ややかに見る。
「それが均衡だ」
魔王が薄く笑う。
「それが進化だ」
どっちも、自分の理屈。
どっちも、正しい顔をしている。
リュカは叫ぶ。
「ふざけんな!!」
声が王都に響く。
全員の視線が集まる。
リュカは、二柱のちょうど真ん中に立つ。
背後は瓦礫。
前は、神話級の存在。
それでも。
剣を掲げる。
「お前らの理屈で、勝手に世界を回すな!」
魔力が膨れ上がる。
未完成。
荒削り。
だが確実に強い。
王が目を細める。
「退け、少女」
魔王の魔力が空を黒く染める。
「潰れるぞ」
圧が同時にかかる。
骨が軋む。
膝が沈む。
血が滲む。
それでも、倒れない。
アルヴァンが叫ぶ。
「リュカ、下がれ!」
ノアが歯を食いしばる。
「圧死する!」
ミラが涙を浮かべる。
「お願い、やめて!」
リュカは、歯を食いしばる。
怖い。
震える。
でも。
「怖いに決まってるだろ……!」
声が割れる。
「でも!」
足を前へ出す。
圧に逆らう。
「誰かが止めないと、ずっとこのままだ!」
王と魔王の力が、ぶつかりかける。
黄金と黒が衝突寸前。
その中心に、リュカ。
身体が悲鳴を上げる。
皮膚が裂ける。
それでも、目だけは逸らさない。
「私がやる!」
魔王が初めて、はっきりと笑う。
「愚か」
王が低く告げる。
「無力」
同時に、二柱が力を解放しかける。
その瞬間。
リュカの剣が、爆発するように光る。
暴走じゃない。
怒りでもない。
ただ一つの意志。
守る。
その純度が、圧を弾く。
一瞬だけ。
本当に一瞬。
王と魔王の魔力が、止まる。
空気が凍る。
魔王の目が細まる。
「……なるほど」
王もまた、わずかに驚きを見せる。
「均衡外の力」
リュカは息を荒げながら叫ぶ。
「戦うなら、私とやれ!」
「街を巻き込むな!」
無謀。
無茶。
無計画。
だが。
その宣言は、王都中に響いた。
兵が顔を上げる。
民が涙を拭う。
契約騎士団の一人が、わずかに動揺する。
魔将が低く笑う。
王が言う。
「ならば証明せよ」
魔王が続ける。
「どちらの王にも属さぬ力を」
空がさらに歪む。
二柱の魔力が、今度はリュカ一人へ向く。




