三勢力衝突 ――王都戦争――
契約騎士団の刃が振り下ろされる、その瞬間。
空が、黒く塗りつぶされた。
裂け目。
先ほどとは比べ物にならない規模。
王都上空に巨大な魔法陣が展開する。
紫と黒の紋様。
ノアが叫ぶ。
「上空、超高密度魔力反応!」
騎士団の動きが一瞬止まる。
空から落ちてくる。
無数の影。
翼を持つ魔族。
巨躯の重装魔族。
瘴気を撒き散らす術士。
王都中央広場へ、雨のように降下。
地面が砕ける。
民の悲鳴。
魔族の咆哮。
魔王軍、本隊。
先頭に立つのは、黒い外套の魔将。
片目に傷。
巨大な大剣を担いでいる。
低い声が広場に響く。
「魔王様の命」
「王都、完全破壊」
ガルドが吐き捨てる。
「最悪だな!」
契約騎士団の隊長が即座に命じる。
「第二目標変更」
「魔王軍迎撃」
五人が一斉に跳ぶ。
人間離れした速度。
白銀と黒が激突。
轟音。
魔族の胴が両断される。
だが、次の瞬間。
魔将が踏み込む。
巨大剣が横薙ぎ。
騎士団二名が吹き飛ぶ。
鎧が軋む。
無傷ではない。
リュカが息を呑む。
「……強い」
アルヴァンが目を細める。
「魔王軍の将クラスだ」
魔族が一斉に王都へ拡散する。
建物が崩れる。
火柱。
混乱。
三つ巴。
騎士団 vs 魔王軍。
その間に挟まれるリュカたち。
ノアが叫ぶ。
「このままだと王都が消える!」
ミラが炎を放つ。
空中の魔族を撃ち落とす。
ガルドが突進し、巨躯を叩き伏せる。
アルヴァンが騎士団と魔族の間を切り裂く。
だが、数が多い。
多すぎる。
魔将がリュカを見つける。
「勇者候補か」
地面が割れる。
一瞬で間合いに入る。
大剣が振り下ろされる。
リュカが受ける。
腕が悲鳴を上げる。
重い。
桁違い。
魔将が笑う。
「未熟」
押し切られる。
その瞬間。
横から黄金の光刃。
契約騎士団隊長が割り込む。
魔将の剣とぶつかる。
火花。
隊長が低く言う。
「対象は我らのものだ」
魔将が嗤う。
「奪ってみろ」
衝撃波が王都をさらに削る。
リュカが吹き飛ぶ。
立ち上がる。
息が荒い。
目の前で、王の秩序と魔王の破壊が真正面からぶつかる。
ノアが叫ぶ。
「リュカ! 今なら離脱できる!」
リュカは首を振る。
「逃げたら終わる」
王も魔王も。
どっちもこの街を盤面にしている。
なら。
ガルドが隣に立つ。
「どうすんだ、リーダー」
アルヴァンが血を拭う。
「三勢力全部敵だぞ」
ミラが震える声で言う。
「でも……守りたい」
リュカの胸が熱くなる。
怖い。
圧倒的すぎる。
でも。
「王にも魔王にも任せない」
剣を握る。
「この街は私たちで守る!」
光が弾ける。
未完成。
でも確かに強い光。
三勢力の中心へ、リュカが飛び込む。
魔将の背へ斬撃。
騎士団の刃を弾き返す。
両者が一瞬、距離を取る。
魔将が笑う。
「面白い」
騎士団隊長が冷たく告げる。
「均衡外因子、危険度上昇」
王都の空。
黒と黄金と白の光が交錯する。
建物が崩れ。
地面が裂け。
人が叫ぶ。
完全戦争。
そのとき――
王城跡から、再び黄金の柱が立ち上る。
王の声が空に響く。
「収束せよ」
重圧。
全員の動きが止まる。
魔将が歯を食いしばる。
「……出てくるか」
空間が割れる。
黒い裂け目も同時に開く。
魔王の声が重なる。
「まだ壊し足りぬ」
王と魔王。
同時降臨の気配。
リュカの背中を汗が流れる。
今ここで二柱がぶつかれば。
王都どころか――国が消える。
三勢力全面衝突は、神話級へ。
リュカは歯を食いしばる。
「止める」
誰に向けた言葉でもない。
自分に。




