灰と光 ――王都崩壊級決戦――
空が割れている。
灰の魔力が雲を焼き、王都を覆う。
リュカは血を吐きながら、それでも剣を握る。
目の前には――
灰の勇者。
「来い」
その一言で、地面が沈んだ。
■ 開戦
リュカ、突撃。
灰の勇者、迎撃。
衝突。
爆音。
石畳が粉々に砕け、衝撃波で周囲の建物が倒壊する。
「速いな」
灰の勇者の声は静かだ。
だが、剣圧が暴風のように襲う。
三連撃。
四連撃。
リュカは受ける。弾く。だが――
重い。
一撃ごとに、腕が軋む。
「どうした、“新型”」
灰の勇者の黒い腕が膨張する。
禍々しい紋様が浮かび上がる。
「俺は完成形だ」
拳が振り下ろされる。
王都中央塔が、真っ二つに割れた。
■ 仲間の参戦
「リュカ、一人で抱え込むな!」
瓦礫を飛び越え、ミラが魔法陣を展開。
無数の光弾が灰の勇者へ降り注ぐ。
爆発。
煙。
しかし――
灰の勇者は立っている。
「温い」
腕を振る。
灰の衝撃波が街路を薙ぎ払い、ミラを吹き飛ばす。
「がはっ……!」
そこへ――
「背中、空いてるぞ!」
ガルドが飛び込み、渾身の一撃。
灰の勇者の肩を裂く。
初めて、血が飛ぶ。
黒い血。
「……ほう」
灰の勇者の口元が、わずかに上がる。
「連携は悪くない」
次の瞬間。
地面から灰の刃が噴き出す。
ガルドの脚を貫く。
「ぐああああ!!」
■ 覚悟
リュカの中で、何かが決壊する。
また、守れないのか?
違う。
守る。
今度は。
「うおおおおおお!!」
魔力が爆ぜる。
灰に対抗する、純白の奔流。
それは怒りじゃない。
意志だ。
守りたいという、ただそれだけの。
灰の勇者の目が、揺れる。
「……その光は、王の紋章とは違う」
リュカは踏み込む。
速い。
さっきより、明らかに。
灰の勇者の懐へ。
斬撃。
黒腕が弾く。
だが押す。
押し切る。
光と灰が激突し、王都全域が震える。
城の塔が崩れ落ちる。
広場が陥没する。
市民は遠くへ避難している。
それでも、もう限界だ。
王都が、持たない。
■ 灰の勇者の本気
「いいだろう」
灰の勇者が剣を地面に突き立てる。
王都全体に、巨大な魔法陣が浮かぶ。
「これは、王に与えられた力だ」
灰が渦を巻く。
空が、灰色に染まり切る。
「“勇者炉心解放”」
魔力が暴走する。
建物が次々と蒸発する。
「止めろ……!」
リュカが叫ぶ。
「止められるか?」
灰の勇者の身体が崩れ始める。
自壊しながら、力を引き出している。
「俺は、燃え尽きるために作られた」
その声に、怒りではなく――
哀しみが混じる。
「なら私が止める!!」
リュカの足元に光の紋様が広がる。
王の刻印ではない。
自分の紋。
自分の魔力。
自分の証。
「私は――選ばれたんじゃない!!」
「選ぶんだ!!」
踏み込み。
全魔力解放。
光が柱となり、灰を押し返す。
二つの力がぶつかる。
王都の空が裂ける。
衝撃で、遠くの城壁が崩壊する。
■ 決着
灰の勇者の瞳が、わずかに人間に戻る。
「……自由、か」
光が、貫く。
灰を裂き、黒腕を砕き、胸を穿つ。
爆発。
灰が、雪のように舞う。
静寂。
王都は半壊。
中央区は壊滅。
だが――
立っているのは、リュカ。
目の前には、膝をつく灰の勇者。
消えかけている。
「……お前は、俺とは違う道を行け」
その身体が、灰となって崩れる。
最後に残ったのは、焦げた剣だけだった。
リュカは、膝をつく。
王都は崩れた。
だが守った。
守れた。
遠くで、鐘が鳴る。
だが。
城の奥から、重い扉の開く音が響いた。
王が動いた。
そして――
玉座の奥に、もう一つの魔力が。
これは。
魔王。




