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勇者はだれ?  作者: 臥亜


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灰の勇者

第五層の空気はまだ重い。


魔王の言葉が残響のように胸に刺さっている。


王国は選別していた。


勇者を作ろうとしていた。


沈黙を破ったのは――


乾いた拍手だった。


パン、パン、パン。


全員が振り向く。


第五層の奥。


崩れた柱の上に、一人の男が座っていた。


年は二十代半ばほど。


長い灰色の髪。


右腕には包帯。


左目は閉じられたまま。


だが、右目は金色に光っている。


「いやぁ、盛り上がってるね」


軽い口調。


だが、魔力が異様に濃い。


ノアの声が震える。


「……魔力構造が異常」


アルヴァンの顔色が変わる。


「まさか」


魔王が静かに言う。


「来たか」


男は立ち上がる。


ゆっくりと。


足元の石が、溶ける。


「紹介しようか?」


にやりと笑う。


「五十年前の“失敗作”」


リュカの喉が鳴る。


「……生きてるの?」


男は肩をすくめる。


「半分ね」


包帯の隙間から、焼けただれた皮膚。


だが、その奥で光が脈打っている。


「俺は選ばれた」


「でも、制御できなかった」


右目が強く光る。


空気が歪む。


「王都、半壊」


ガルドが息を呑む。


あの映像の都市崩壊。


「あれ、俺」


静かに言う。


「止めたのは、そこの魔王様」


魔王は否定しない。


男はリュカを見る。


まっすぐ。


「で、君が次?」


リュカは光剣を握る。


「私は暴走しない」


男は笑う。


「みんなそう言う」


次の瞬間。


消えた。


視界から。


「上!」


ノアが叫ぶ。


天井から光の奔流。


リュカが受ける。


ドォン!!


吹き飛ばされる。


壁が砕ける。


男が着地する。


「未熟」


その一言が重い。


ガルドが突っ込む。


拳を叩き込む。


男は片手で止める。


「遅い」


衝撃。


ガルドが床を転がる。


アルヴァンが炎を放つ。


男は光で弾く。


「属性が混ざってる……!」


ノアが分析する。


「光と闇が不安定に融合してる!」


男はリュカに歩み寄る。


「勇者はさ、兵器なんだよ」


「国にとっても、世界にとっても」


足元がひび割れる。


光が漏れる。


制御できていない。


「俺は失敗作」


「君はどうなるかな?」


リュカは立ち上がる。


怖い。


でも。


逃げない。


「私は――」


光剣を構える。


「兵器じゃない」


男が笑う。


「証明してみなよ」


一瞬で距離を詰める。


剣と光がぶつかる。


轟音。


床が砕ける。


リュカは押される。


力が違う。


経験が違う。


男の目が近い。


「怖いだろ?」


小さく。


「壊す力が、自分の中にあるって」


リュカの胸が痛む。


確かにある。


強すぎる光。


でも。


「怖いよ」


正直に言う。


男が一瞬、目を細める。


「でも」


リュカが踏み込む。


光が安定する。


揺れない。


「だから、仲間と戦う!」


アルヴァンが炎を重ねる。


ガルドが背後から拘束。


ノアが魔力制御式を展開。


四人の力が絡み合う。


男の光が、乱れる。


「……なるほど」


小さく呟く。


「一人じゃないか」


暴走の光が膨れ上がる。


制御不能。


第五層全体が崩れ始める。


魔王が初めて動く。


片手を上げる。


空間が固定される。


男は笑う。


「やっぱりあんた、甘いね」


光が弾ける。


眩い爆発。


煙が晴れる。


男の姿はない。


ただ、焼け焦げた紋様だけが残る。


リュカが息を荒げる。


「……逃げた?」


魔王が答える。


「まだ死ねぬ」


「未練がある」


リュカは拳を握る。


暴走勇者。


生き残り。


失敗作。


未来の可能性。


自分も、ああなるのか?


魔王が言う。


「選べ」


またその言葉。


リュカは顔を上げる。


「私は暴走しない」


静かに。


強く。


魔王は小さく笑う。


「ならば証明しろ」


最上層への階段が現れる。


だが今、物語はさらに深くなった。


魔王。


王国。


そして――


“失敗した勇者”。


本当の敵は誰か。


まだ、決まっていない。

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