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勇者はだれ?  作者: 臥亜


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暴かれる王国

第五層の扉が開く。


黒い霧が流れ出す。


足を踏み入れた瞬間、空間が変わった。


広間。


天井は高く、中央に巨大な魔法陣。


その上に――


魔王。


玉座に座るでもなく、ただ立っている。


まるで最初から待っていたかのように。


レオニスが前に出る。


「総員、戦闘態勢」


魔王は視線をゆっくり動かす。


騎士団。


アルヴァン。


そしてリュカ。


「揃ったな」


その声に、空気が重く沈む。


リュカは光剣を握る。


「今度は逃がさない」


魔王はわずかに口元を上げる。


「逃げる?」


次の瞬間。


視界が歪む。


全員の足元に光の紋様。


転移。


景色が変わる。


暗い地下。


石壁。


鎖。


鉄格子。


ノアが息を呑む。


「……幻影じゃない。記録再現」


魔王の声が響く。


「これは五十年前」


レオニスの表情が硬くなる。


地下牢の奥。


幼い子どもたち。


十人ほど。


手首に刻まれた紋章。


中央には――


一本の剣。


聖剣。


だが、今と違う。


禍々しい光を放っている。


リュカの喉が乾く。


「……何これ」


魔王の声。


「勇者選別の儀」


子どもたちが一人ずつ前へ押し出される。


聖剣に触れさせられる。


触れた瞬間。


拒絶。


弾かれる。


衝撃。


血。


泣き声。


二人目。


三人目。


弾かれる。


倒れる。


そして――


一人。


剣が光る。


だが。


次の瞬間、暴走。


剣の光が少年を包み込む。


絶叫。


光が爆ぜる。


少年は、灰になった。


リュカが叫ぶ。


「やめて!」


映像は止まらない。


魔王が言う。


「王国は代々、勇者を“作ろう”としてきた」


レオニスが低く言う。


「黙れ」


魔王は続ける。


「適合者を見つけるために、子どもを集め」


「選別し」


「失敗作を処分した」


空気が凍る。


ガルドの拳が震える。


「嘘だろ……」


ノアの声が低い。


「理論上は……あり得る」


アルヴァンがレオニスを見る。


「知っていたのか」


レオニスは沈黙。


魔王が歩く。


再現空間の中を。


「王国は恐れている」


「魔王ではない」


「勇者の暴走を」


映像が変わる。


巨大な光。


都市一つが消し飛ぶ。


五十年前。


暴走した“未完成勇者”。


それを止めたのが――


若き日の魔王。


リュカが息を呑む。


「……あなたが?」


魔王は静かに言う。


「勇者は希望だ」


「だが未熟な希望は、災厄になる」


レオニスが剣を強く握る。


「それでも王国は守ってきた!」


魔王の視線が鋭くなる。


「守るために、何人捨てた?」


沈黙。


重い。


リュカの胸が締めつけられる。


王国は正義だと信じていた。


でも。


現実は、違うのか?


魔王がリュカを見る。


「お前も選別対象だった」


息が止まる。


「王都で聖剣が反応した瞬間、名は上がった」


「確保の名目は保護だ」


「だが適合しなければ――」


言葉は続かない。


でも、分かる。


ガルドがレオニスに怒鳴る。


「本当かよ!」


レオニスは目を閉じる。


「……勇者選別の儀は、存在した」


リュカの足元が揺らぐ。


信じていた国。


守ろうとしていた王都。


その裏。


魔王の声は静かだ。


「私は育てる」


「王国は選別する」


「どちらが正しい?」


問いが落ちる。


重い。


簡単に答えられない。


リュカは震える手で光剣を握る。


涙が滲む。


でも。


目は逸らさない。


「……だからって」


魔王を見る。


「あなたが人を襲っていい理由にはならない」


沈黙。


魔王の目が、わずかに揺れる。


「そうだな」


あっさり認める。


「私は魔王だ」


「世界を揺らす存在」


「だが王国もまた、綺麗ではない」


空間が戻る。


第五層の広間。


三勢力が向き合う。


もう単純じゃない。


敵は一つじゃない。


正義も一つじゃない。


リュカが静かに言う。


「私は……」


光剣が強く輝く。


「選ばれない」


「作られない」


「自分で決める」


レオニスがその姿を見る。


魔王は小さく笑う。


「それでこそ」


第五層の奥。


さらに上へ続く道が開く。


世界の真実が、少しだけ見えた。


でも。


まだ全部じゃない。

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