揺らぐ王都
魔王城での戦いから数日後。
王都。
空は晴れているのに、街は重かった。
城の謁見の間。
王は玉座に座り、険しい顔をしている。
その前に立つのは、白銀の鎧をまとった男。
王国騎士団長・レオニス。
「報告しろ」
王の声は低い。
「魔王城への侵入は確認されました」
ざわめき。
「侵入者は四名。うち一人は……」
レオニスが一瞬言葉を止める。
「元魔族、アルヴァン」
空気が凍る。
王の目が鋭くなる。
「裏切り者か」
「はい。そして同行しているのは、例の少女」
「勇者候補、と噂されている者か」
王は腕を組む。
「証明は?」
「ありません」
沈黙。
王は静かに言う。
「勇者はまだ現れていない」
その言葉は重い。
王都では今、“勇者不在”が不安を生んでいた。
魔王が姿を現した。
だが正式な勇者認定はない。
聖剣も沈黙したまま。
そのとき。
バン、と扉が開く。
神殿長が駆け込んでくる。
「陛下!聖堂で異変が!」
王とレオニスが立ち上がる。
場面転換。
王都大聖堂。
中央に安置された、一本の剣。
王国に代々伝わる“聖剣”。
だが誰も抜けなかった。
何百年も。
今――
その刃が、淡く光っている。
神官たちがざわめく。
「勇者が現れたのか!?」
「いや、誰も触れていない!」
レオニスが近づく。
聖剣は、微かに震えている。
王が低く呟く。
「……選ばれたのは誰だ」
その瞬間。
聖剣の光が強くなる。
だが。
王都ではない。
遠く。
北方。
魔王城の方向へ。
光は、そちらを向いている。
レオニスが目を細める。
「王都ではない……?」
神殿長が震える声で言う。
「聖剣は……既に“持ち主”を定めている可能性が」
王の顔が険しくなる。
「無断で、か」
もし。
王の管理下にない勇者が誕生すれば。
王権は揺らぐ。
国の統制も。
王は決断する。
「騎士団を派遣する」
レオニスが顔を上げる。
「討伐命令ですか」
「違う」
王の目が冷たく光る。
「確保だ」
場面は魔王城へ戻る。
リュカは気づいていない。
遠く離れた王都で。
聖剣が、彼女を指していることを。
そして。
王国騎士団が動き出したことを。
アルヴァンがふと立ち止まる。
「……嫌な予感がする」
ノアが空を見上げる。
「魔力の流れが変わった」
ガルドが笑う。
「魔王だけじゃねぇのかよ」
リュカは前を見る。
魔王城のさらに上層。
でも。
敵は一つじゃない。
魔王。
そして王国。
勇者を巡る思惑が、動き始める。




