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猫とボクと普通(?)の日々  作者: zaq2
第三部 灰色の猫
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第二章 猫ではない

 翌朝。

 灰尾は駐車場から調べた。

 昨日、小鬼が見たという場所。

 土の残る植え込みの脇に、薄い足跡がある。

 猫のものに見える。

 だが。


「……違うな」


 指の開き方が僅かにおかしい。

 深さも揃っていない。

 同じ四足で歩いているはずなのに、一歩ごとに体重の掛かり方が微妙に変わっている。

 匂いもある。

 猫に近い。

 近いが。

 知らない。

 灰尾は鼻を上げた。

 自分の匂いに似たものが、ほんの少し混じっている気がした。


「気色悪ぃ」


 足跡を追う。

 路地を抜け。

 低い塀を越え。

 倉庫の並ぶ裏手へ入る。

 そこで足跡が消えた。

 代わりに。

 屋根の上に何かいる。

 灰色。

 四足。

 耳。

 尾。

 一本だけ。

 灰尾とは違う。

 毛皮。

 遠目なら猫だ。

 だが灰尾は、その場で止まった。

 耳の動きが違う。

 左右が別々に動いているのではない。

 動く順番そのものが、猫らしくない。

 前脚を一歩出す。

 肩が遅れて付いてくる。

 瞬きをする。

 その間隔も妙だった。

 相手も灰尾を見ている。

 逃げない。

 鳴かない。

 ただ見ている。


「お前」


 灰尾が声を掛ける。

 返事はない。


「猫じゃねえな」


 灰色のものが身を低くした。

 跳ぶ。

 その瞬間。

 後ろ脚が、妙に長く見えた。


「……?」


 次の屋根へ着地する。

 もう普通の長さに見える。

 見間違いか。

 灰尾が追う。

 相手は屋根から屋根へ移る。

 速い。

 だが、猫の速さとは少し違う。

 跳ぶたびに、後ろ脚の伸び方が変わる。

 さっきまでの脚なら届かないはずの屋根まで越えたかと思えば、次は短い距離なのに、着地で深く沈み込む。

 灰尾は一度、進路を外した。

 真後ろから追えば逃げるだけだ。

 一本先の路地へ回り込み、屋根の向こうへ出る。

 間に合わない。

 灰色の影は、住宅の向こうへ消えていた。

 代わりに、古い物置の屋根へ新しい爪痕が残っている。

 四本。

 猫らしく並んでいる。

 その少し先には、幅の違う着地跡。

 同じ身体で付けたにしては、間隔が合わない。

 灰尾は鼻を寄せる。

 匂いはやはり同じだった。

 別の獣が混じったわけではない。


「……なんだ、お前」


 返事をするものはいない。

 灰尾は追いすぎなかった。

 足跡。

 匂い。

 動き。

 全部おかしい。

 それでもまだ、自分で追える。

 誰かを呼ぶほどではない。


「猫じゃねえな」


 もう一度、口にした。

 それだけは確かだった。

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