40 最後の槌は、自分の手で
三日間、ラークの工房の煙突からは、一度も煙が途切れなかった。
鍛冶通りの職人たちのあいだでは、ちょっとした噂になっていたらしい。錬成帝が、三日三晩、炉の前から一歩も離れずに、一振りの剣を鍛えている。槌の音が、夜中じゅう、一定の拍子で響き続けている。あれは、王家の宝剣でも打っているに違いない、と。
実際に打っていたのは、一年生の女の子の剣だったわけだけど。
「……ハスト様。私、変じゃないですか?」
四日目の放課後。工房の前で、フィアットは、自分の格好を何度も見下ろしていた。
学園の制服ではなかった。ラークが用意した、厚手の生成りの作業着。袖をまくり上げて、髪は後ろで一本にきつく編んである。手には、真新しい革の手袋。
「変じゃない。似合ってる」
「ほ、本当ですか?」
「あぁ。鍛冶屋の娘みたいだ」
「……それは褒め言葉、なんですよね?」
「最大限の」
フィアットは、少しだけ頬を膨らませてから、ふっと笑った。それから、胸に手を当てて、深呼吸をひとつ。肩が、小さく上下した。
緊張している。当たり前だ。今日、この子は、自分の剣に、最後の槌を打つ。
「……ハストさま」
反対側の袖を、くいっと引かれた。
「わたしも、いていい?」
セルカだった。今日は、ちゃんと最初からついてきた。紺色のエプロンドレスの上に、なぜか、ラークのお下がりらしい大きすぎる革の前掛けを巻いている。裾が、地面につきそうだった。
「お前、その前掛け……」
「……ラークが、くれた。姐さんも工房に入るなら、って」
「あいつ、甘いな」
「……セルカさん」
フィアットが、セルカのほうを見た。
「今日は、来てくれて、ありがとうございます」
セルカは、少しだけ目を丸くした。それから、ぷいっと横を向いた。
「……別に。ハストさまが、いるから、来ただけ」
「ええ。わかってます」
フィアットは、くすりと笑った。セルカの耳の先が、ほんのりと赤くなっていた。
……この三日で、何かあったのか、この二人。
◇
工房の扉を開けた瞬間、熱が、壁みたいにぶつかってきた。
「親父ィ……!! お嬢ォ……!! 姐さァん……!!」
炉の前で、ラークが振り返った。
ひどい顔だった。目の下には真っ黒な隈。頬はこけて、褐色の肌が煤でさらに黒くなっている。三日間、ほとんど寝ていないのが、一目でわかった。
なのに、目だけが、異様なほどぎらぎらと輝いていた。
「待ってたッス……!! 見てほしいッス……!!」
ラークは、金床の上を指さした。
そこに、一振りの剣が、横たわっていた。
まだ、柄も鍔もついていない。刃も研がれていない。ただの、細長い鋼の板。でも、その形は、四日前に俺が紙の上に引いた線と、寸分違わなかった。
鈍い銀色の鋼の奥で、青白い光が、ゆらゆらと揺れている。まるで、呼吸をしているみたいに。
「白鋼を、八百四十回、折り返したッス」
ラークの声が、かすれていた。
「普通の鋼なら、二百回も折り返せば、粘りが死ぬッス。でも、白鋼は違う。折り返すたびに、鉄が、細かく、強く、しなやかになっていく。……そして、八百四十回目で、鉄が、もうこれ以上は要らないって、言ったッス」
「鉄が、言った……?」
フィアットが、首を傾げた。
「言うんスよ、お嬢。いい鉄は、ちゃんと、言うッス」
ラークは、真顔だった。冗談を言っている顔じゃなかった。
俺は、金床に近づいて、剣身の上に、そっと手をかざした。
触れはしない。触れたら、俺の魔素が移る。それでは、意味がない。
手のひらの下で、鋼の奥の青白い光が、かすかに揺らいだ。……まだ、眠っている。誰のものでもない、まっさらな鉄だ。
「……いい仕事だ、ラーク」
ラークの顔が、くしゃくしゃに歪んだ。
「お、親父に……親父に、褒められ……ッ」
「泣くのは後にしろ。まだ終わってない」
「……ッス!!」
ラークは、作業着の袖で、乱暴に顔を拭った。
◇
「最後の仕上げ打ちは、百打ちッス」
ラークが、フィアットに、一本の槌を手渡した。
小ぶりの、片手で振れる槌だった。柄は、使い込まれて、飴色に光っている。
「これは、オレが、初めて自分で打った槌ッス。……お嬢の手には、ちょっと重いかもしれないッスけど」
フィアットは、両手で槌を受け取った。それから、片手に持ち替えて、軽く振ってみる。
「……大丈夫です。剣より、軽いですから」
「頼もしいッス」
ラークが、火ばさみで剣身を掴んで、炉の中に差し入れた。白に近い橙色の炎の中で、鋼が、ゆっくりと赤く染まっていく。
「火の色が、桜の色になったら、出すッス。そしたら、金床の上で、お嬢が打つ。冷めて、色が黒っぽくなったら、また炉に戻す。それを繰り返して、百打ち」
「はい」
「一打ちごとに、ちゃんと、鉄の声を聞くッス。強すぎても、弱すぎてもダメ。……って言っても、最初は、わかんないと思うッスけど」
ラークは、ちらりと俺のほうを見た。
俺は、フィアットの隣に立った。
「フィアット」
「はい」
「打ち方の技術は、ラークの言う通りにすればいい。でも、それとは別に、ひとつだけ」
フィアットが、俺を見上げた。
「一打ちごとに、自分の道を、ひとつずつ叩き込め」
「……道」
「お前が、この剣で、何を斬って、何を守って、どこへ行きたいのか。それを、一打ちごとに、思い出せ。考えるんじゃない。思い出すんだ。お前が今まで歩いてきた道の中に、もう全部ある」
フィアットは、しばらく黙っていた。
それから、槌の柄を、ぎゅっと握り直した。
「……はい」
炉の中で、鋼が、淡い桜色に染まった。
「今ッス!!」
ラークが、剣身を炉から引き抜いて、金床の上に置いた。
フィアットが、槌を振り上げた。
一打ち目。
澄んだ音が、工房の中に響いた。火花が、ぱっと散る。
フィアットは、目を閉じていた。
二打ち目。三打ち目。
最初の十打ちは、ぎこちなかった。音が揃わない。強さもばらばら。ラークが、黙って首を横に振る。鋼が冷めて、炉に戻される。
フィアットの額に、汗が浮かんでいた。
――思い出せ。
俺は、声に出さずに、心の中で繰り返した。
十一打ち目。
音が、変わった。
さっきまでより、ずっと澄んでいた。ラークの眉が、ぴくりと動いた。
十二打ち目。十三打ち目。
フィアットの唇が、小さく動いていた。声は聞こえない。でも、何を言っているのかは、なんとなくわかった。
――遅刻魔で、居眠り魔だと思っていた人が、実は『覇王』だった日。
――屋上で、何もできない自分が情けなくて、しょげていた日。
――レイラさんに魔術を、陛下に幻術を、シュベルトさんに剣を、クレハさんに戦い方を教わった日々。
――順位戦の決勝。見えない拳を、見えないものを見る目で、斬った日。
音が、揃い始めた。
一定の拍子。強すぎず、弱すぎず。まるで、ラークが三日間、夜通し響かせ続けた槌の音を、そのまま受け継いだみたいな音だった。
ラークが、目を見開いていた。
「……嘘だろ。四十打ちで、鉄の声、掴みやがった……」
五十打ち。六十打ち。
フィアットの手袋の中で、たぶん、マメが潰れている。槌を握る指が、白くなっている。それでも、拍子は乱れなかった。
七十打ち。
――ハスト様と、二人で、中央市場を歩いた日。
――屋上の、溶けない氷の花の前で、五分間、立ち尽くした日。
ほんの一瞬、音が揺らいだ。
でも、次の一打ちで、すぐに戻った。いや、むしろ、さっきまでより、ずっと強く、まっすぐな音になった。
八十打ち。九十打ち。
工房の中の空気が、変わっていくのがわかった。
鋼の奥の、青白い光。さっきまで、ゆらゆらと眠るように揺れていたその光が、一打ちごとに、少しずつ、少しずつ、形を持ち始めていた。
一本の、細い線。
剣身の芯を、柄から切っ先まで、まっすぐに貫く、一本の光の線。
――あれは。
俺は、息を呑んだ。
あの線は、俺が引いた線じゃない。ラークが鍛えた線でもない。
フィアットの、線だ。
九十九打ち。
フィアットが、目を開けた。
槌を、高く振り上げる。
「――私は」
初めて、声が出た。
「私は、ハスト様の隣に立つために、剣を握ったんじゃありません」
え。
「……隣に立ち続けられる、私でいるために。昨日の私より、明日の私が、ちょっとだけ強くなっているために。……そして、その強さで、誰かの明日を、まっすぐに守るために」
フィアットは、金床の上の剣を、まっすぐに見つめた。
「それが、私の道です」
百打ち目。
今までで、一番澄んだ音だった。
音が、工房の壁に跳ね返って、いつまでも、いつまでも、鳴り止まなかった。
剣身の芯の光の線が、一瞬だけ、強く輝いた。
それから、すうっと、鋼の奥へ沈んでいった。
◇
しばらく、誰も、口を開かなかった。
炉の唸る音だけが、工房の中に響いていた。
「……焼き入れ、ッス」
最初に我に返ったのは、ラークだった。声が、震えていた。
「最後に、水に浸けて、一気に冷やすッス。それで、鋼が締まって、剣になる。……でも、白鋼の焼き入れは、水の温度が、ものすごく難しいッス。冷たすぎると割れる。ぬるすぎると締まらない。普段は、オレが、三日かけて水を寝かせて――」
「……わたしが、やる」
全員の視線が、工房の隅に集まった。
セルカが、大きすぎる前掛けの裾を引きずりながら、水槽の前に歩いていった。
「……ちょうど真ん中の、冷たさ。バターと、同じ」
セルカは、水槽の水面に、そっと手のひらをかざした。
指先から、白い冷気が、ふわりと降りる。水面に、薄い霜の膜が一瞬だけ張って、すぐに溶けた。もう一度。また溶ける。三度目。今度は、霜は張らなかった。ただ、水面が、ほんの少しだけ、きゅっと引き締まったように見えた。
「……これで、いい。たぶん」
ラークが、恐る恐る、水槽に指を入れた。
それから、目を剥いた。
「……完璧ッス。オレが三日かけて作る水と、まったく同じッス……!!」
「……サリナさまに、習った」
セルカは、そう言って、フィアットのほうを見た。
「……フィアット。あなたの剣。最後は、あなたが、浸けて」
フィアットは、セルカの顔を、じっと見つめた。
「……いいんですか?」
「……いい剣に、なってほしいから」
セルカは、少しだけ目を逸らした。
「ハストさまの、線だから。……あと、あなたの、線だから」
フィアットの目が、大きく見開かれた。
それから、ゆっくりと、柔らかく細められた。
「……ありがとう、セルカさん」
ラークが、炉で最後にもう一度赤めた剣身を、火ばさみごとフィアットに手渡した。
フィアットは、両手で火ばさみを握って、剣身を、水槽の中へ、まっすぐに沈めた。
真っ白な湯気が、工房の天井まで立ち昇った。
湯気が晴れたとき、フィアットの手の中にあったのは、もう、ただの鋼の板じゃなかった。
一振りの、剣だった。
◇
柄を据え、鍔をはめ、刃を研ぎ上げるのは、ラークが一刻ほどで仕上げた。
その間、俺たちは、工房の裏の、試し斬り用の小さな庭で待っていた。
日は、もう傾きかけていた。鍛冶通りの煙突の向こうに、橙色の空が広がっている。
「……お待たせ、ッス」
ラークが、両手で、一振りの剣を捧げ持って、裏口から出てきた。
細身の、まっすぐな片手剣。白鋼の刃は、夕日を受けて、淡い銀色に光っていた。その奥に、青白い光が、静かに沈んでいる。鍔は、飾りのない薄い十字。柄には、フィアットの手の形に合わせて削った、黒い革が巻かれている。
柄頭には、小さな窪みが、ひとつ。何も嵌まっていない。
フィアットは、震える両手で、剣を受け取った。
握る。
その瞬間、フィアットの表情が、変わった。
「……あ」
小さな声が、漏れた。
「……手に、吸いつく」
フィアットは、剣を、ゆっくりと持ち上げた。片手で、まっすぐに構える。切っ先が、ぴたりと止まった。揺れない。
「重さが、どこにもないみたいです。……違う。重さは、あるんです。でも、全部、私の手の中にある。剣の先に、引っ張られる感じが、全然しない」
「重心を、鍔から指三本ぶん先にしたからな。振り終わりで、剣のほうから止まってくれる」
「……振っても、いいですか?」
「そのための庭だ」
ラークが、庭の真ん中に、試し斬り用の鉄の杭を打ち込もうとした。
その前に、セルカが、すっと前に出た。
「……待って」
セルカが、地面に、手のひらをついた。
庭の真ん中に、白い霜が渦を巻いた。それが、みるみるうちに、上へと伸びていく。
透き通った、一本の氷の柱。フィアットの背丈ほどの高さ。太さは、大人の腕を二本束ねたくらい。夕日を受けて、中で光が、きらきらと屈折していた。
「……わたしの氷。斬れる?」
セルカが、まっすぐに、フィアットを見た。
挑発じゃなかった。少なくとも、俺にはそう見えた。むしろ、何かを確かめたがっているような、真剣な目だった。
「……姐さん、それ、鉄より硬いッスよ……」
ラークが、小声で呟いた。
フィアットは、氷の柱を、じっと見つめた。
それから、セルカに向かって、ゆっくりと頷いた。
「斬ります」
フィアットは、氷の柱の前に立った。
足を、肩幅に開く。剣を、右肩の上に担ぐように構える。
目を、閉じた。
庭の空気が、しんと静まり返った。
鍛冶通りの槌の音が、遠くに聞こえる。夕方の風が、フィアットの編んだ髪の先を、わずかに揺らした。
一呼吸。
二呼吸。
フィアットの輪郭が、ふっと、揺らいだ。
幻術だ。陛下に習った、幻術。でも、前みたいに、自分の姿を隠すためのものじゃない。剣の軌道だけを、ほんの一瞬、三本に分けて見せる、薄い薄い幻。
……あいつ、いつの間に、こんな使い方を。
フィアットが、目を開けた。
踏み込む。
剣が、走った。
右上から、左下へ。
音は、しなかった。
氷の柱を、銀色の光が、一筋、斜めに通り抜けた。それだけだった。
フィアットの剣は、振り終わりで、ぴたりと止まっていた。手首で止めたんじゃない。剣のほうから、止まった。俺が線を引いた通りに。
一秒。
二秒。
氷の柱の上半分が、斬り口に沿って、音もなく、すうっと滑り落ちた。
ことん、と、地面に落ちる。
斬り口は、鏡みたいに、なめらかだった。夕日が、その面に映り込んで、きらりと光った。
「……斬れた」
フィアットが、呆然と呟いた。
そのときだった。
フィアットの手の中で、剣が、かすかに鳴った。
鈴の音のような、細く、澄んだ音。
剣身の奥に沈んでいた、あの青白い光の線が、ほんの一瞬だけ、刃の表面に浮かび上がった。柄から切っ先まで、まっすぐに。
それから、また、静かに沈んでいった。
「……い、今の」
ラークが、口をぱくぱくさせていた。
「白鋼が……鳴いた……? オレ、ガキの頃から鉄を打ってきて、白鋼が鳴くのなんて、一回も……」
俺は、何も言わなかった。
言えなかった。
――その剣は、己が信じる道のために。絶対の向上心をもって振ること。聖剣は、そのとき応えるだろう。
頭の中に、あの誓いの言葉が、勝手に浮かんでいた。エスピノーザの家に残った、空っぽの鞘の内側に刻まれていた、シャロンの最後の誓い。
まさか。
これは、聖剣じゃない。ただの、いい鉄で打った、いい剣だ。
でも。
フィアットは、百打ち目に、自分の道を、はっきりと声に出した。誰かに言わされたんじゃない。自分の言葉で。
そして、剣は、鳴った。
……偶然だ。たぶん。
俺は、そう思うことにした。今は、まだ。
「――セルカさん」
フィアットが、剣を下ろして、セルカのほうを振り返った。
セルカは、斬り落とされた氷の柱の上半分を、両手で拾い上げていた。斬り口を、指でそっとなぞっている。
「……きれい」
セルカは、ぽつりと言った。
「……ずれてない。欠けてない。まっすぐ」
「あなたの氷が、まっすぐだったからですよ」
フィアットが、セルカの前にしゃがんだ。
「芯まで、少しも濁ってなかった。斬る前から、わかりました。……すごく、きれいな氷でした」
セルカは、しばらく、フィアットの顔を見つめていた。
それから、ふいっと目を逸らして、氷の欠片を、フィアットの胸に押しつけた。
「……あげる」
「え?」
「……溶けない、ように、しておく。……記念」
フィアットは、氷の欠片を受け取って、目をぱちぱちさせた。それから、くしゃりと笑った。
「……屋上の花の、隣に置いてもいいですか?」
「……だめ。あそこは、わたしの」
「じゃあ、私の部屋の窓辺に」
「……それなら、いい」
……やっぱり、この三日で、何かあったんだな、この二人。
◇
「ハスト様」
帰り道。鍛冶通りの出口で、フィアットが、立ち止まった。
腰には、新しい剣が下がっていた。黒い革の鞘は、ラークがおまけで仕立ててくれたものだ。父親の剣は、布に包んで、大事そうに胸に抱えている。
「この剣、名前を、まだ決めてないんです」
「あぁ。好きにつければいい」
「……名前は、この剣で、初めて誰かを守れたときに、つけようと思います」
フィアットは、柄頭の、何も嵌まっていない窪みに、そっと指を当てた。
「この窪みも、まだ、空けておきます。私の道は、まだ途中だから。……いつか、ここに何を入れるか、自分でわかる日が来るまで」
俺は、少しだけ、言葉に詰まった。
それから、フィアットの頭に、ぽんと手を置いた。
「……いい答えだ」
フィアットの顔が、夕日よりも赤くなった。
「お父様の剣は、今夜、お返しします。……きっと、泣かれると思いますけど」
「泣くだろうな。確実に」
「ふふっ。ですよね」
隣で、セルカが、俺の袖を、くいっと引いた。
「……ハストさま」
「ん」
「……わたしも、今日、がんばった」
俺は、笑って、もう片方の手を、セルカの頭に置いた。
「あぁ。お前も、偉かった。水の温度、完璧だったってさ」
セルカは、目を閉じた。撫でられるまま、じっと動かなかった。
……四十九、と、小さく呟いたような気がしたけど、たぶん、気のせいだ。
工房の煙突から昇る白い煙が、三日ぶりに、細く、細く、途切れようとしていた。




