24 裏作業ほど楽しいモノなくないですか?
はてさて、時間は進んで、夕方。
終業の鐘が鳴ると同時に、俺は鞄に教科書を最速で詰め込んでいた。周りからの視線はかなりすごかったが、そんなことはどうでもいい。俺は早々に教室を立ち去った。一応、礼儀として、扉を出るときに小声で「さ、さようなら〜」と言っておいたから、大丈夫だろう。
教室の後ろのほうで、フィアットが、何か言いたげにこっちを見ていた。今日は、レイラさんと陛下との、幻術の最終調整の日だ。俺は、目だけで「頑張れよ」と伝えて、廊下に出た。
そして、向かった先は、もちろん。
暗殺組織『ラガー』の本部の、目の前だ。
そう。目の前だ。
「……さすがに、ここ集合は、舐め腐ってるんじゃないか……?」
王都の東、商業区の外れ。大通りから一本入った路地の突き当たりに、その建物はあった。表向きは、とある貿易商会の王都支店ということになっている。五階建ての石造りで、窓には全部鉄格子。入口の両脇には、商会の制服を着た屈強な男が二人、腕を組んで立っている。どう見ても、ただの商会じゃない。
その真正面の路地の角に、俺たちは堂々と立っていた。
俺が呆れたようにこぼすと、二人は口を揃えて言い返してきた。
「そんなことはないぞ?」
「そんなことないんじゃない?」
何食わぬ顔で言う、警戒心ゼロの二名。俺は「もう駄目だ、こりゃ」とため息をついた。
改めて、目の前の建物を見上げる。外壁には、細かい彫刻が施されていた。窓枠は真鍮。屋上には、小さな庭園まであるらしい。暗殺稼業は、ずいぶん儲かるようだ。
そんな感慨に浸っていると、約一名が、奇天烈な発言を始めた。
「ヨシ!! この建物、僕の家より広いし、気に食わないから崩そうか!! うん、そうしよう!! きっとそのほうがいいよね!? さぁさぁ、はっす〜!! 今すぐこの建物を三等分してあげようッッ!!」
シュベルトが、腰の聖剣の柄に手をかけていた。
「お前の私欲で建造物を破壊させんなって!! ……一応、人が苦労して設計して作ったものなんだからさ。な?」
いや、そんな小学生みたいなふてくされた顔するなよ、二十歳オーバー。なんか、俺が悪いみたいな空気になってるじゃねぇか。
それから、俺はもう一人のほうを振り返った。
「おい、そこの三百歳超えのエルフも、そんな目で見るんじゃない!! あと、ちゃっかりロケットランチャー構えてんじゃねぇ!!」
クレハおば……お姉さんは、いつの間にか、肩に巨大な筒を担いでいた。長い耳を、ぴくぴくと不満げに動かしている。そう、この人は、ロリババアと同じく、見た目どおりの年齢ではない。三百年以上を生きる、長命のエルフなのだ。
「はぁ……。そこの馬鹿は聖剣抜くなし、クレハ姉はさっさとロケラン仕舞う!!」
俺は、両手をぱんと打った。
「そんじゃ、まずは全員ローブ着て、普通に交渉しに行くぞ……。向こうが素直に依頼を破棄して、ローズマイト家との契約書を渡してくれれば、それで終わりだ」
「ヘッ!! 命拾いしたな!!」
「……仕方ないな」
シュベルトが建物に向かって捨て台詞を吐き、クレハおば……お姉さんがロケランをしぶしぶアイテムボックスに戻した。
……あれ? おかしいな。どっちが悪者か、わからなくなってきたぞ〜?
もうどうしようもないことだと判断した俺は、まぁこいつらのことだし仕方ないだろう、と割り切ることにした。考えるだけ無駄なのである。
俺は前に向き直り、アイテムボックスからいつものローブを引っ張り出して羽織った。二人も、同じように、ローブを羽織る。認識阻害が、三人の姿を、夕暮れの路地にぼやかしていく。
「じゃあ、そろそろ本番と行こうかな?」
シュベルトのその声を合図に、俺たちは、ラガーの建物へと歩き出した。
◇
入口の二人の男は、近づいてくる三つのローブ姿に気づいて、腕をほどいた。
「止まれ。ここは関係者以外――」
「交渉に来た」
俺は、フードの奥から、静かに言った。
「セルジーネ家の娘を狙う依頼、受けてるだろ。ローズマイト家から。それを、破棄してほしい。依頼の契約書を渡して、二度とあの子に手を出さないと誓うなら、今日は何もせずに帰る」
男たちの顔色が、変わった。
一人が、懐に手を突っ込んだ。もう一人が、扉の脇の呼び鈴の紐を、思いきり引いた。
建物の中で、甲高い鐘の音が、何度も、何度も鳴り響いた。
「……交渉決裂、だね」
シュベルトが、楽しそうに言った。
「だな」
俺は、ため息をついた。
「打ち合わせどおりに行くぞ。シュベルトは一階から三階。クレハ姉は外。俺は上から行く。……今回は殺すなよ。ローズマイト家を潰すには、生きた証人が要る。全員、生かして騎士団に引き渡す」
「はいは〜い」
「了解だ、ハス坊」
次の瞬間、三人は、三方向に散った。
◇
正面の扉が、内側から開け放たれた。
短剣、細剣、鎖鎌、毒針の筒。思い思いの得物を手にした男たちが、十人、二十人と、雪崩のように飛び出してくる。
その真ん中に、シュベルトが、ひとりで、ふらりと歩いていった。
「我が力は、聖なる方へ。……『聖剣フェリクス』」
白く輝く聖剣が、シュベルトの左手に現れた。
いつものへらへらした笑顔のまま、シュベルトは、聖剣を、ゆっくりと横に一閃した。
――男たちの得物が、一斉に、真っ二つになった。
短剣も、細剣も、鎖鎌の鎖も。剣を振るった男たちの身体には、傷ひとつない。ただ、手にしていた武器だけが、きれいに切り落とされて、石畳の上にばらばらと落ちていく。
男たちが、呆然と自分の手を見下ろした、その一瞬。
シュベルトは、もう、男たちの群れの中にいた。聖剣の柄頭で、顎を。肘で、鳩尾を。足払いで、膝を。白い光が、群れの中を縫うように走り抜けるたびに、男たちが、一人、また一人と、白目を剥いて崩れ落ちていく。
十秒後。入口の前に立っていたのは、シュベルトひとりだった。
「えぇ〜……。もう終わり? ラガーって、もうちょっと骨のある組織だと思ってたんだけどなぁ」
シュベルトは、聖剣を肩に担いで、ため息をついた。それから、開け放たれた扉の奥、階段のほうを見上げた。
「まぁいいや。上に、もうちょっといるでしょ。……三階まで、楽しませてもらおうかな」
◇
建物の裏手の窓から、何人かの男が、ロープを伝って逃げ出そうとしていた。
書類の束を抱えた男。金貨の袋を背負った男。そして、ひときわ上等な服を着た、幹部らしき男。
その全員の、ロープを握る手の、すぐ上。
パァン、パァン、パァン、パァン。
ロープが、四本同時に、ぷつりと切れた。
男たちは、二階分の高さから、裏庭に積まれた藁束の上に、どさどさと落ちた。たまたま、そこに藁束があった。……いや、たまたまじゃない。あの人が、撃つ前に、落ちる位置を計算して、藁束の山を狙い撃ちで崩しておいたのだ。
「逃げるなよ〜。アタシから逃げられたやつは、この三百年で、ハス坊とアーネット姉だけだからな〜」
通りを挟んだ向かいの建物の屋根の上で、クレハおば……お姉さんが、二丁のリボルバーをくるくると回していた。長い耳が、楽しそうに揺れている。
藁束の上で起き上がった幹部の男が、懐から何かを取り出そうとした。小さな硝子玉。中で、紫色の煙が渦を巻いている。毒煙の魔道具だ。
パァン。
硝子玉が、男の指先で、粉々に砕けた。紫の煙は、男自身を包み込んだ。……ただし、その煙の中の毒は、さっきの弾丸に込められていた浄化の術式で、とっくに中和されていた。
男は、ただ咳き込みながら、藁束の上で目を回した。
「だから、逃げるなって言っただろ〜?」
◇
俺は、建物の屋上に、転移で降り立った。
小さな庭園だった。手入れの行き届いた薔薇の植え込みに、白い石のベンチ。夕焼けの最後の光が、真鍮の手すりを赤く染めている。暗殺組織の本部の屋上とは思えない、穏やかな場所だった。
その庭園の奥に、ガラス張りの温室のような部屋があった。
中に、男がひとり、座っていた。
上等な椅子。上等な机。机の上には、帳簿と、封蝋の押された書類の束。そして、男の手には、ワイングラス。白髪交じりの髪を後ろに撫でつけた、品のいい初老の男だった。
ラガーの首領だ。
俺は、温室の扉を開けて、中に入った。
首領は、慌てる様子もなく、ワイングラスを机の上に置いた。
「……下が、ずいぶんと騒がしいと思えば。剣聖と、銃王か。それに……」
首領の目が、俺のローブを、上から下まで、ゆっくりと眺めた。
「その、顔の見えぬ外套。……噂に聞く、『碧の亡霊』とやらは、君かね」
碧の亡霊。
夜の王都で、高ランクの魔物を斬って回っている、正体不明の何者か。そういう噂が、裏の世界で流れているらしい。俺は、初めて聞いた。
「さぁな」
俺は、机の前まで歩いていった。
「依頼の契約書を、渡せ」
「ふむ。ローズマイト家との、かね」
首領は、書類の束の一番上の一枚を、指先でとんとんと叩いた。羊皮紙に、薔薇の紋章の封蝋。ローズマイト家の家紋だ。
「渡すと思うかね。この依頼一件で、我が組織は、向こう三年は遊んで暮らせる額を受け取っている。……それに」
首領が、微笑んだ。
「この部屋に入った時点で、君の負けだ」
首領の指が、机の裏の何かを、押した。
温室のガラスの壁に、一斉に、魔術陣が浮かび上がった。赤黒い光。部屋全体を包み込む、多重の封印結界。そして、その結界の内側の空気が、じわじわと重く、粘りつくように変わっていく。
「魔力を吸い上げる結界だ。中にいる者の魔力を、根こそぎ奪い取る。剣聖でも、銃王でも、ここに入れば、ただの人間になる。……さて、亡霊君。君は、どうかな?」
確かに、身体から、魔力がじわじわと抜けていく感覚があった。ローブの認識阻害が、少しずつ薄れていく。
よくできた結界だ。この国の、普通の魔術師なら、確かに、これで終わりだっただろう。
「……あぁ。これ、魔力を吸うだけなんだな」
俺は、右手を軽く掲げた。
「『覇権ソルバート』……フォルムスライサー」
碧い炎が、俺の右手に、権の形を結んだ。
首領の目が、見開かれた。
「なっ……魔力を、吸われているはずでは……!?」
「覇権は、魔力じゃないんだよ」
俺は、碧い権を、軽く一振りした。
音は、なかった。
温室を包んでいた赤黒い結界が、ガラスの壁ごと、すっぱりと斜めに断ち切られた。魔術陣が、ばらばらに砕けて、光の粒になって散っていく。断ち切られたガラスの壁の上半分が、ずるりと滑り落ちて、薔薇の植え込みの上に音もなく着地した。
夕焼けの風が、温室の中に吹き込んできた。
首領は、椅子に座ったまま、動けなくなっていた。
俺は、碧い権の切っ先を、首領の喉元に、そっと向けた。
「もう一回だけ、言う。依頼の契約書を、渡せ」
首領の手が、震えながら、書類の束を差し出した。
俺は、それを受け取った。ローズマイト家の封蝋。依頼内容。報酬の額。標的の名前。
――フィアット・セルジーネ。順位戦当日、試合前に、競技場の控え室にて。
胸の奥で、何かが、ちりっと音を立てた。
碧い権の炎の縁が、ほんの一瞬だけ、別の色に滲みかけた。
俺は、ひとつ、息を吐いた。それから、権を消した。
「……騎士団が来るまで、そこで寝てろ」
首領の額に、指先で軽く触れた。碧い光が、ふっと灯る。首領の目から焦点が抜けて、椅子の上で、がくりと首が落ちた。眠らせただけだ。
◇
二十分後。
建物の外の路地に、三人で並んで立っていた。足元には、縛り上げられたラガーの構成員たちが、ずらりと転がっている。総勢、四十七名。全員、生きている。
「いやぁ〜、楽しかったね!!」
シュベルトが、満面の笑みで伸びをした。
「三階の奴ら、意外と粘ったんだよ。毒の霧を撒いてきたり、床ごと落とし穴にしてきたり。久々に、ちょっとだけ本気で剣を振ったかな」
「アタシは物足りなかったぞ。逃げたやつ、六人しかいなかった」
クレハおば……お姉さんが、不満げに長い耳を下げた。
俺は、手の中の契約書の束を、アイテムボックスにしまった。これは、エトワール経由で、陛下に届ける。ローズマイト家への処分は、たぶん、順位戦が終わってからになるだろう。今、動けば、フィアットの試合にまで余計な騒ぎが及ぶ。
「……さて」
俺は、ラガーの建物を見上げた。
「この建物、地下に毒の研究室があった。それと、まだ見つかってない隠し部屋が、たぶん三つくらいある。騎士団が中を調べてる間に、何か起動したら、危ない」
シュベルトの目が、きらりと光った。
「……ってことは?」
「……証拠はもう押さえた。中の人間も、全員外に出した」
クレハおば……お姉さんの耳が、ぴんと立った。
俺は、深いため息をついた。
「……一応、言っとくけど。設計した人に、心の中で謝ってからにしろよ」
「やったぁぁぁぁぁ!!」
「よぉし!!」
シュベルトの聖剣が、白く輝いた。クレハおば……お姉さんが、アイテムボックスから、さっきのロケットランチャーを取り出した。
――結果。
後に、その建物を見た者は、いなかった。
翌朝の王都新聞には、『東区の貿易商会支店、原因不明の倒壊。地下から違法な毒物研究の痕跡』という小さな記事が載った。その隅に、『倒壊直前、現場付近で不審な碧い光と、白い光と、爆発音が目撃された』と書かれていた。
……やっぱり、こいつらと組むと、ろくなことにならない。
◇
同じ頃。
私は、学園裏の森の演習場で、レイラさんと陛下と三人で、幻術の最終調整を行っていました。
ここ数日、時々陛下が王城を抜け出していらっしゃって、術式の軽量化を手伝ってくださったおかげで、私の幻術は、ずいぶん変わりました。ハスト様のようにとまではいきませんが、詠唱なしで、しかも速く、発動させられるようになったのです。
「――『幻術、サクリファイス・カウンターフィット』」
今は、もう、レイラさんの術式札は使っていません。
私の手のひらから、光の糸がほどけて、演習場いっぱいに広がっていきます。私の姿が、ひとつ、ふたつ、みっつ。十、二十。石柱の陰に、赤土の上に、木々の梢の下に。それぞれが、少しずつ違う構えで、少しずつ違う方向を向いて。
レイラさんが、ぱちぱちと手を叩いて喜んでくださいました。
「すごいです、フィアットちゃん!! 発動までにかかる時間が、最初の三分の一になってます!! 魔素の流れも、すごく綺麗ですよ!!」
「うーん……」
陛下が、顎に手を当てて、うんうんと頷いていらっしゃいました。
「やはり、フィアットちゃんやレイラちゃんくらいの展開速度が、一般的な一流、ということなのかな……? まぁ、はっす〜やアーネットが異質なだけか。実際、化け物だしな」
……一般的な、一流。
私は、少しだけ不安になりました。順位戦で、私の展開速度では、まだ足りないのでしょうか。私がおろおろしていると、陛下が、あわあわと両手を振りました。
「いっ、いや!! 別に、それだけでフィアットちゃんが弱いなんて思ってないからね!? むしろ、その速さでできること自体が、すごいことだからね!? ただ、あの二人がなんであんなに速く展開できるんだろうかと、考えていただけさ」
私は、今まで、それが当たり前だと思っていました。でも、そう言われて、初めて疑問が浮かびました。
アーネットさんは、もう何百年も生きていらっしゃるから、わかります。でも、ハスト様は、まだ十七歳なのです。森で十年鍛えられたと言っても、それだけで、陛下やレイラさんを置き去りにするほどの速さに、たどり着けるものなのでしょうか。
私が心の中で思っていたことを、レイラさんが、口に出しました。
「あっ、あのあの、陛下。ハストさんの持つ『覇権』には……持ち主に、知識を与えるような力は、あるのでしょうか……?」
陛下の眉が、ぴくりと動きました。
それから、何かに思い当たったように、ぱん、と手を打ちました。
「そうか……。そういうことか……!! はっす〜が、前に言っていたことじゃないか!!」
「そ、それは、どのような……?」
「はっす〜は、以前、『覇権』の性能について、少しだけ話してくれたことがあってね」
陛下は、遠くを見るような目をしました。
「彼は、こう言ったんだ。『覇権は、俺の知らないこと――この世界で、まだ誰にも見つけられていない数式や、データや、物質なんかを、俺が本気で求めたときに、教えてくれるんだ』ってね」
私の頭の中に、ひとつの光景が浮かびました。
魔術基礎Ⅰの授業。黒板の前で、ハスト様が書いて、大きな×をつけられた、あの式。私が、何度計算し直しても解けなかった、あの、存在しないはずの因子。
「じゃ、じゃあ……まだ誰も見つけていない、魔術式の組み方とかも……」
言い切る前に、陛下が、口を挟みました。
「それだけではない。二十階梯どころか……現代では誰も知る者がいない、最終階梯級の魔術の発動方法さえも、だ」
陛下は、ははっと笑いました。
「いやぁ、こりゃ参ったなぁ。はははっ」
笑っているように見えました。でも、陛下の目からは、光が、すうっと消えかかっていました。
「ま、まぁ、私たちは私たちなりに頑張ればいいと思うので!! そこまで気にすることでもないですよ!!」
私は、慌ててそう言いました。陛下は、ふっと目に光を戻して、私を見ました。
「ははっ。ありがとう。君が心配しなくても、私は大丈夫だ」
陛下は、両手をぱんと打ちました。
「さぁ、調整を再開しようか。――君の成長を、はっす〜に見てもらうために、ね」
陛下は、にたりと、含みのある笑みを私に向けました。
……え?
私、そんなこと、一言も言った覚えはありません。
「なっ……!?」
顔が、かっと熱くなりました。
そして、まさかの。
「ふぃ、フィアットちゃんの恋路に、幸あれ〜……!!」
レイラさんが、両手を胸の前で組んで、きらきらした目で私を見ていました。
「ひぇっ!? わ、私、そんなこと言った覚えありませんけどーっ!?」
叫んだ声が、夜の森に、高く響き渡りました。
まさか、レイラさんにまで、私の考えを読まれていたなんて。いえ、考え、というか。私自身、まだ、ちゃんと言葉にしたこともない、この――
顔が、どうしようもなく熱くて、私は両手で頬を押さえて、その場にしゃがみ込みました。
照明の魔石が灯る演習場で、私の二十体の幻影たちも、みんな一斉に、両手で頬を押さえてしゃがみ込んでいました。
「……あ」
「ぷっ」
「ふふっ」
陛下とレイラさんが、同時に吹き出しました。
順位戦まで、あと、三日。
私の恋路に、幸、あるのでしょうか。




