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逆転生勇者、現代国家に“災害級危険人物”認定されました  作者: 妖怪ステーキ


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22/27

第二十章 ホログラムの帰還

┌─ 【手記・DAY 63】

│ ノアを、迎えに行く。

│ ルナが、隣にいる。

│ クロードが、内側にいる。

│ ガルドと、ヴェイルが、僕の背中を、見ている、気がする。

└────────────


挿絵(By みてみん)


横浜港、深夜二時。

巨大なコンテナ船が、出航の準備を、終えていた。船腹に、星条旗が、描かれていた。

クロードの計画書によれば、ノアの結晶は、その船の、最下層の、特殊コンテナの中に、ある。

警備員は、二十人。

通常の、三分の一だった。

──クロードが、内側から、薄くしてくれた。

僕は、ルナを、抱き上げた。

「ルナ」

「ん」

「コンテナの上に、瞬間移動できるか」

「やったことの、ない場所だから、無理。でも、岸壁の、上は、できる」

「それで、十分だ」

ルナが、僕の頬に、片手を、置いた。

白い、光が、僕たちを、包んだ。

一瞬で、僕たちは、コンテナ船の、すぐ脇の、岸壁の上に、いた。

そこから先は、僕の、本来の仕事だった。

警備員の、最初の二人を、剣の柄で、軽く、首の急所を、打って、無力化した。

三人めも、四人めも、同じだ。

──殺さない。

これは、僕の、絶対の、ルールだ。

第十章で、見世物小屋の連中の、腱を、切ったあの夜、僕は、線を、踏み越えた、と、思った。

だが、ルナと、暮らした、六十日以上の日々で、僕は、もう一度、線を、引き直していた。

殺さない。

どんな相手でも、殺さない。

それが、僕の、ルナへの、応えだ。

──そして、もうひとつ。

──クロードが、教えてくれた、田中。

──夜中に、温かい弁当を、二つ、置いていった、田中。

──「勇者の人たち、悪い人たちじゃないですよね」と、泣いた、田中。

僕は、気を失った、警備員の、顔を、ちらりと、見た。

──三十代、男性。

──制服の、胸ポケットに、家族の写真が、覗いていた。

──小さな、女の子が、笑っていた。

──彼は、たぶん、命令で、ここに、いる。

──彼は、たぶん、内心で、僕たちを、応援しているかも、しれない。

──そして、たぶん、彼は、僕に、無力化されたことを、明日、家族に、笑って、話す。

──「すごい人に、首だけで、気絶させられたよ」って。

僕は、彼の家族の写真を、彼の胸ポケットに、深く、押し込んだ。

写真が、地面に、落ちないように。

そして、次の警備員へと、向かった。

──ガルドを、殺した、十万人の、視聴者と。

──この、家族写真を、胸ポケットに、入れて、警備に、立つ、田中たちは。

──同じ国の人間でも、別の生き物だ。

──そして、僕は、後者を、傷つける必要が、ない。

僕は、コンテナ船の、最下層に、降りていった。

ルナは、岸壁で、僕の帰りを、待っていた。

彼女の聖職者の力が、何かあった時、僕を、いつでも、彼女のもとに、戻せる。

特殊コンテナは、すぐに、見つかった。

分厚い、鋼鉄の扉。

僕は、剣で、その扉を、切り裂いた。

中に、結晶が、置かれていた。

以前、東京の地下施設で、見たものと、同じ。

透明な、結晶の中に、色のない、形のない、光のような、影のような、何かが、揺れていた。

「ノア」

僕は、結晶に、片手を、当てた。

結晶の中の、光が、ふわり、と、揺れた。

結晶の表面に、文字が、浮き上がった。

──Hi, Rain. 遅かったね。

僕は、ふっと、笑った。

「悪かった」

──ガルドと、ヴェイルのこと、知ってる。

「……ああ」

──このまま、私を、結晶ごと、外に、出してくれる?

「重いか」

──重くは、ない。ただ、扱いに、気をつけて。

「分かった」

僕は、結晶を、両手で、抱え上げた。

──意外に、軽い。

胸に、抱えるくらいの、大きさ、重さだった。

僕は、コンテナを、出て、船の最下層を、駆け上った。

岸壁に、戻ると、ルナが、待っていた。

彼女は、結晶を、見て、目を、見開いた。

「ノアおねえちゃん?」

結晶の表面に、文字が、浮き上がった。

──ルナ、おっきくなったね。

「まだ、十歳だよ」

──私の見立てでは、もう、十一歳の、心がある。

ルナが、ぼろぼろと、涙を、流した。

「ノアおねえちゃん、生きてた」

──まあ、私は、簡単には、死なないから。

彼女は、結晶に、ぎゅっと、抱きついた。

僕は、その光景を、しばらく、見ていた。

──六人のうち、四人が、ようやく、再集結した。

ガルドと、ヴェイルは、もう、いない。

だが、ノアが、戻ってきた。

僕は、ルナに、結晶を、預けて、岸壁に、座った。

そして、結晶に、向かって、口を、開いた。

「ノア」

──ん?

「お前の、本当の姿、見せてもらえるか」

結晶の中の、光が、しばらく、揺れた。

そして──。

結晶が、内側から、ぱきり、と、音を、立てた。

亀裂が、走った。

ルナが、慌てて、結晶を、地面に、置いた。

結晶が、ゆっくりと、割れていった。

中から、流れ出してきたのは──。

光、ではなかった。

水、でもなかった。

ただ、何かが、岸壁の上に、広がっていった。

そして、その何かが、ゆっくりと、立ち上がった。

人間の、形を、していた。

いや、人間の、形を、模していた。

半透明の、性別の、ない、年齢の、ない、表情のない、人型。

だが、顔だけは、僕の、見たことのある、顔をしていた。

──僕の顔、だった。

「お前、悪趣味だぞ」

僕は、自分の顔をした、ノアに、苦笑した。

ノアは、僕の声で、答えた。

「お前を、ずっと、観察していた。お前の顔が、私の中で、いちばん、なじみが、ある」

「他の、顔に、なれないのか」

「なれる」

ノアの顔が、ぐにゃり、と、変わった。

ガルドの顔に、なった。

「……」

「これ、嫌だろ、レイン」

「嫌だ」

ノアの顔が、もう一度、変わった。

ヴェイルの顔に、なった。

「これも、嫌だろ」

「やめろ、ノア」

ノアは、ふっと、笑った。

僕の声で、ヴェイルの顔で、笑った。

「分かった、分かった」

彼の顔が、元の、僕の顔に、戻った。

「とりあえず、これで、勘弁してくれ」

僕は、深く、息を、吐いた。

「ノア」

「ん」

「お前の、本当の本当の姿は、これで、合ってるのか」

ノアは、しばらく、僕を、見つめた。

「合ってない」

「……」

「だが、私の、本当の姿を、見せたら、お前たち、たぶん、卒倒する」

「ノア──」

「だから、これで、勘弁してくれ。本当に」

僕は、彼の言葉を、信じることに、した。

──ノアは、僕たちの、知らない、何かだ。

──それは、最初から、知っていた。

ノアと、ルナと、僕の、三人で、岸壁を、後にした。

夜明け前の、横浜港。

僕は、空を、見上げた。

──ガルド。

──ヴェイル。

──ノアが、戻った。

──次は、僕たち全員で、元の世界に、帰る。

──クロードを、置いて、いくわけにも、いかない。

──だが、僕は、まだ、知らない。

ノアが、僕たちに、まだ、最大の秘密を、隠していることを。

──そして、その秘密こそが、僕たちが、こちらの世界に、飛ばされた、本当の、理由であることを。

ノアが、僕の隣で、ぽつりと、言った。

「レイン」

「ん」

「私、実は、ね」

「……ん?」

「お前たちを、こっちの世界に、連れてきたの、私、なんだ」

僕の、足が、止まった。

◆ ◆ ◆

── 第二十章 了 ──

── 第四部 完 ──

次章「〝理〟との対話」── 第五部 開幕


第四部、ここまで読んでいただきありがとうございます。

続きが気になる、応援したいと思っていただけましたら、いいねや感想をいただけるととても励みになります。

次回、第五部もお楽しみに。

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