「デデーオー」+「裁判」
パソコンのキーを高速で叩くデデーオー。
「へー。これはなかなか」
「この町にいるのか?」
「今もいるかどうかはわからないけど、この町に来たのは、おとといだ。駅前での写真をブログに載せている。そのあとはブログが更新されていない」
「最後に更新した時間は?」
「おとといの午後三時だね。三時きっかりの更新だから、予約投稿じゃないかな」
「駅前の写真から、時間の情報を得られないか?」
「この影の感じだと、正午あたりっぽいけど・・・・・・」
少しカチャカチャやってから、
「見つけたっ! 正午ちょうどに着く列車がある!」
「その列車で、三男はこの町にやって来たのか」
とベイカー。
アーノルドも続く。
「じゃあ、次は宿泊先だ」
丘の上の館に泊まっているのか、それともホテルか。知り合いの家、という可能性もある。
「まずは、この町にあるホテルの『宿泊者記録』をあたってくれ」
「その前にいいかな。先にみんなで共有しておきたい情報がある。この三男、裁判を起こされているよ」
「どういうことだ?」
インターネットで得た情報を、デデーオーがかいつまんで話してくれる。
大富豪の三男は、「お笑い芸人」だ。「自分は探偵」という設定で、『推理小説あるある』を語るという芸風。
それが、ある人たちを激怒させたらしい。
推理小説のファンだ。
三男は推理小説のネタバレをやり過ぎて、彼らの怒りを買った。本人だけでなく、所属事務所にまで抗議が殺到したという。
やめておけばいいのに、推理小説のファンを煽る三男。『裁判』と題した動画を、インターネットで公開した。
非常にふざけた内容で、さらに推理小説のネタバレをしまくったのだ。もちろん、推理小説への敬意は皆無。
そして、判決は「無罪」だ。当然だろう。「弁護士」も「検察官」も「裁判官」も、三男の「変装」なのだから。誰がどう見ても、これは「やらせ裁判」。
この直後に、事態が大きく動く。
ネタバレされた中には、発売したばかりの推理小説も含まれていた。
「で、本当の裁判になっちゃったわけ」
デデーオーが笑顔で言う。
裁判所に訴えたのは、発売したばかりの小説の作者だ。「もしもネタバレされていなければ、もっと売れていたはず」と主張している。
ここまで騒ぎが大きくなり、芸能事務所は本気で「まずい」と考えたようだ。「あのバカが個人で勝手にやったことだ」と、事務所の関与を公式に否定。即日、三男を解雇した。
しかし、それで騒ぎは収まらない。
推理小説のファンも反撃に出る。自分たちで製作した『裁判』の動画を、インターネット上で公開し始めた。「弁護士」も推理小説ファンなら、「検察官」も推理小説ファンだ。当然、「裁判官」も推理小説のファンである。
その『裁判』の動画が、非常に好評だとか。それで推理小説のファン以外にも、情報が少しずつ拡散しているらしい。
「で、その『裁判』動画、新作がつくり続けられていて、今はシーズン2の中盤」
ここまですべて「有罪」判決だという。しかも、本物の裁判の方も、来月には始まるそうだ。




