「チャーリー」+「電話」
「訂正や追加があったら、どんどん言ってくれ」
「アーノルド、たしかメイドは二人いたはずだ」
「そうだよ、ベイカーの言うとおりだ。金髪の子と黒髪の子の二人がいる。どちらも生きているといいなあ。あと、二人とも殺人犯ではないことを希望する」
彼らの指摘により、アーノルドはもう一人メイドを書き足した。
そのあとチャーリーが、
「そうそう、庭師は消していいと思う。この前、一緒に飲んだんだ。その時に言っていたぞ。奴さん、親戚の結婚式があるんだと。嘘じゃなければ、昨日から西海岸にいるはずだ」
おみやげの希望を聞かれたので、西海岸の名産品を頼んだという。
「庭師と連絡をとれるか?」
アーノルドが尋ねると、チャーリーは壁の時計をちらりと見てから、
「今すぐかけてみよう」
庭師に聞けば、丘の上の館に誰がいるのか、正確な情報がわかるかもしれない。
「だったら、チャーリー、これも聞いてくれないか。おとといに、この町で見たって奴がいるんだ」
ベイカーが言う。
「見たって、何をだ?」
「大富豪の三男坊だ。目撃者は複数いる」
「あいつを見たって話なら、僕も聞いたよ」
ベイカーとデデーオーに対して、チャーリーがうなずく。
「わかった。三男のことも庭師に聞いてみよう」
アーノルドは考える。大富豪の三男がこの町に戻ってきているとしたら、丘の上の屋敷に滞在しているのではないか。
もしそうなら、「屋敷にいる者たちの一覧」に、「三男」が加わることになる。
そこで、ある疑問が浮かんできた。
(この町に戻ってきているのは、三男だけだろうか?)
あの大富豪には、三人の息子がいる。
三男だけじゃなくて、長男や次男も、この町に戻ってきているかもしれない。たとえば、遺産相続についての「家族会議」とかで。
推理小説では、殺しの動機が「遺産」、そういうことが結構ある。
しかし、そんな風に見せかけておいて、殺しの動機が遺産とは無関係。動機は「復讐」だった、ということも結構ある。
(もしも今、長男、次男、三男が、丘の上の館にいるとしたら・・・・・・)
同じことをデデーオーも考えたらしい。
大急ぎでパソコンのキーを叩いてから、
「長男は海外にいる。今日はゴルフ用品の展示会に出席しているよ。展示会のホームページに写真が出ている。さすがに、影武者を雇ったりはしていないと思う」
「ナイスだ、デデーオー。次男の方もわかるか?」
「それがね、昨日はニューヨークにいたみたいだけど、今どこにいるのかはわからない。明後日には、ゴルフ業界の会合に出席する予定になっている。場所はラスベガスだ」
ニューヨークからなら、一日あれば余裕で、この町に来ることができる。また、この町からラスベガスに行くのも、一日あれば十分だ。
(長男がこの町にいないことは確定だが、次男は可能性があるわけか)
一方で、三男はこの町にいるらしい。
長男や次男と異なり、三男は家業のゴルフ事業とは別の道に進んだ。
で、アーノルドはこの前偶然、テレビで三男を見つけた。「探偵」という設定の「お笑い芸人」をしていた。ネタはいわゆる、『推理小説あるある』だ。
一ポンドも笑えなかった。あれなら、ベイカーの「円周率暗誦」を聞いていた方が面白い。
(待てよ。お笑い芸人なら、SNSをやっているかも。ブログに近況を書いているかもしれない)
「駄目だ。奴さん、電話に出ない」
チャーリーが片手で、「お手上げ」のジェスチャーをする。
とはいえ、庭師が携帯電話の電源を切っているとか、電波の圏外にいるとかではないらしい。
「しばらく待てば、かけ返してくると思うが」
それまで、「庭師からの情報」はお預けだ。
そこで携帯電話が振動した。チャーリーの携帯電話ではなく、アーノルドの携帯電話だ。
電話の画面に表示されているのは、アーノルドの知らない番号だった。
(こいつは、ひょっとして)
ベイカーとチャーリーも同じことを考えたらしい。
こんなタイミングだ。電話をかけてきたのは、「丘の上の館にいる誰か」かもしれない。
一方で、デデーオーだけが壁の時計に目をやった。
アーノルドは電話に出る。
携帯電話から聞こえてきたのは――
少しだけ沈黙するアーノルド。
電話を顔から離すと、仲間の一人に小声で尋ねる。
「デデーオー、おまえのじゃなくて、俺の携帯番号を教えたのか?」
この電話は、ピザ屋の宅配からだ。警察署の前に着いたという。
「それが一番効率的かなと思って。リーダー、お会計よろしく」
うきうきしながら立ち上がるデデーオー。
「ピザを運ぶの手伝うよ」
アーノルドは耳に携帯電話を戻すと、デデーオーを連れて、警察署の外に向かった。




