「チャーリー」+「疑念」
警察署で『推理』をする。そんなアーノルドの提案に対して、最初に口を開いたのはチャーリーだった。
「今夜は最悪の天気だ。外に出ることなく警察署内で『推理』をする、それについては大賛成だ。しかし、先に確認しておきたいことがある」
チャーリーの雰囲気が変わった。丸眼鏡ごしの視線が鋭くなっている。取り調べ室でする目つきだ。容疑者に向ける目つき。『金色混沌』がやる気になった。
最年長だけあって、この四人の中でチャーリーは、最も多くの犯人を逮捕している。
「アーノルドにベイカー、殺人事件の『推理』をする前に、おまえたち二人の電話について確認しておきたい。まずは、本当に電話があったのか」
「疑っているのか?」
ベイカーの返しに、チャーリーも返す。
「当たり前だろ。おまえたち二人が戻ってくるなり、今の流れだ。殺人事件の電話に、土砂崩れの電話。タイミングが良すぎて、疑いたくもなる。俺やデデーオーをからかうために一芝居を打ったのかも、とな」
「あり得るね。ここに戻ってくる前に、二人だけで打ち合わせをしてきたのかも」
デデーオーの方は、本気で疑っているわけではなさそうだ。顔が笑っている。
二人からそんな疑いをかけられて、
「ベイカーの方は知らないが、俺の電話は本物だ」
「アーノルドの方は知らないが、俺の電話は本物だ」
アーノルドの声とベイカーの声が重なる。
それを聞いて、ニヤリとするチャーリー。容疑は深まったな、そんな顔をしている。
「オーケー、オーケー、仲がよろしくて結構だ。まるで練習してきたみたいにな。デデーオー、こいつらの電話を確認してみろ。『俺たち侮辱罪』で、留置所に放り込むチャンスだ」
「そういうことなら、がんばろうかなっと。二人のクズを留置所に放り込んだら、この班の次期リーダーは僕でいいんだよね?」
デデーオーがパソコンのキーを叩き始める。
「二人に外部からの電話があったのは本当だ。アーノルドの方の発信源は、丘の上の屋敷。で、ベイカーの方は・・・・・・町外れのアパートだね。そこからなら、丘の上につながる道が見えると思う」
それを聞くなり、笑顔に戻るチャーリー。
「友よ、疑って悪かった」
アーノルドに握手を求めてくる。
「友よ、気にするな。さっきのアイデアは今度使わせてもらう。おまえやデデーオーをからかうために一芝居を打つから、楽しみにしていてくれ。あと、『俺たち侮辱罪』というのは、チャーリー、おまえにも適用されるのか?」
「友よ、そんな罪名は存在しない。あと、俺の知っているチャーリーという男は、非常に素晴らしい人物だ」
アーノルドはチャーリーの握手を拒否した。
その隣でベイカーが言う。
「デデーオー、録音データも出せるか? さっきの電話の内容を、ここにいる全員で共有しておきたい。俺の電話と、アーノルドの電話だ」
「わかった。まずはリーダーの電話からね」
デデーオーのパソコンから音声が流れ始める。
――はい、こちら警察署。
――大変なんです! 人が殺されていて!
――俺です。わかりますか、アーノルドです。あなたの身は現在、安全な状況にありますか?
――大丈夫だと思います。
――話を続けてください。
――先ほど館の一階で、人が殺されているのを見つけました。
――あなたが『第一発見者』ですね?
そのあと、「いいえ、違います。最初に見つけたのは――」というところで、電話が切れている。
次に、ベイカーの方。四人は黙って、電話の録音内容を聞く。
住民からの通報で、「土砂崩れが起きて、それを見た」という内容だ。
ベイカーがいくつかの質問をしている。
それらに答える通報者。嘘をついている感じはなさそうだ。




