「すまん。警察は今、何もできないぞ」
「チャーリーとデデーオーは、良い子にお留守番しているかな?」
「今の状況でそれを期待するのは、現実逃避だ」
アーノルドとベイカーが部署に戻ると、問題児の二人は席にいた。
ただし、大人しく留守番していたにしては、満面の笑みだ。
しかも、自分たちからは何も言ってこない。
なのに、その目は質問されるのを待っている。
(何かやったな)
だろうとは思っていた。
アーノルドはざっと部署の中を確認する。
ぱっと見たところ、イタズラの痕跡はないようだ。
しかし、何もやっていないとは、到底思えないので、
「何かハッピーなニュースはあるか?」
アーノルドが尋ねると、チャーリーとデデーオーが同時に言う。
「『ねずみ花火・シーズン2』」
「また留置所に行ったのか」
呆れるベイカー。
「あれは最高だった♪」
「二人もやってくる? シーズン3」
アーノルドとしては、少しだけ興味をそそられたが、
「やめておく。他には何もやっていないよな? 怒らないから正直に言いなさい」
「シーズン2以外だと、ネットの裏サイトで注文したくらいだね。日本の警察官が使っているという、ものすごい『自白剤』。『カツドン』とかいう名前のやつ。売っているのを見つけたから、試しに一つ買ってみた。二〇〇ドルだったよ」
その『自白剤』なら、アーノルドも噂で聞いたことがある。効果抜群だとか。
「だったら、俺の分も『カツドン』を注文してくれ。以前から欲しいと思っていたんだ。取り調べが楽になる」
「オーケー。手数料はもらうよ。いくつ注文する?」
「とりあえず、三ダース」
「いきなり大人買いするんだね。豪快だなあ」
デデーオーがパソコンをカチャカチャする。
「で、アーノルドよ、そっちはどうだったんだ? 何か有益な情報はあったのか?」
チャーリーからの質問に対して、
「どうも三男は白のようだ。あいつはここ数日、丘の上の館には行っていない」
それを踏まえると、「事件当時、あの館にいる者たちの一覧」は、次のようになる。
館の主人(大富豪)
執事
メイド(金髪)
メイド(黒髪)
料理人
運転手
丘の上の館から、問題の電話があったのは、「午後十時十五分」頃だ。
執事が電話をかけてきた。あの館で殺人事件が起きたらしい。
ただし、途中で電話は切れてしまった。電話回線に何か問題が発生したようだ。
台風により外は暴風域。館につながる唯一の道は、土砂崩れで通行不能だ。今すぐ警察が、あの館に駆けつけることはできない。
だから、アーノルドは『推理』することを提案した。
あの館で何が起きたのか。
重要そうなポイントを前もって話し合っておいて、それを『初動捜査』に活かすのだ。
アーノルドはチャーリーとデデーオーに、三男の取り調べで得た情報を話す。
一通り伝え終わると、
「たしかに、三男は白っぽいね。名探偵チャーリーのご意見は?」
「白だな」
つまらなそうにチャーリーが言う。
「庭師からの電話はあったか?」
アーノルドが尋ねると、
「まだだ。もう一度かけ直してみたが、電話に出ない。奴さん、まさか死んでいるんじゃないよな」
「そうじゃないことを期待する」
アーノルドは考える。
三男を取り調べしたことで、情報は増えた。
が、『推理』を大きく進展させる、そんな情報はなかったように思う。
庭師と連絡がとれたとしても、あまり状況は変わらないかもしれない。
(やはり、あとは現場に駆けつけてからか)
丘の上の館にいる者たちには悪いが、
(すまん。警察は今、何もできないぞ)
そう思いつつも、
(何か見落としはないか)
アーノルドは考える。




