「チャーリー」+「キャベツ」
時計の針が十二時を回る。
日付が変わった。
この町はなおも暴風域だ。
パトロールから戻って来た連中から、先ほど土砂崩れの状況を聞いた。その復旧にどのくらいの時間がかかるのかは、わからないという。
現場の写真を撮ってきてくれたので、それをアーノルドたち四人は、ノートパソコンの画面で見ていた。
アーノルドが思うに、かなり大きな土砂崩れだ。
「この規模だと復旧に、早くても半日以上はかかりそうだな」
「じゃあ、仮眠の話はナッシング? もうネット通販で、『最高級まくら』を注文しちゃったんだけど」
「いや、頭がクリアな状態の者が、引き継ぎの時にいた方がいい。ベイカーとデデーオー、二人はどこかで仮眠をとってくれ」
「そうだぞ。徹夜明けの俺は、頭の中身がキャベツになる。人間の言葉には無反応だ。引き継ぎはおまえたち二人に任せたぞ」
そのあと急に叫び出すチャーリー。
「キャベッツ♪ キャベベベベベ♪」
深夜ならではのテンションだ。
アーノルドも笑いながら加わる。
「キャッ♪ キャベ♪ キャベベッツ♪ キャベキャベーベ♪」
最後は二人一緒に、両腕でVサインをつくって、
「キャベーツー♪」
昔、アーノルドはチャーリーと、『真夜中キャベツ星人レタス畑キャベツマンボ事件』を解決した。犯人を逮捕した直後、二人でこの両腕Vサインをしたのだ。懐かしい。
その事件のことを知らないベイカーは、呆れ顔だ。
デデーオーに対して、「このバカな流れにつき合うな。こいつらみたいなアホになるんじゃないぞ」という視線を送っている。
(チャーリーとの「おふざけ」は、このくらいにしておくか)
アーノルドは現状を整理する。
庭師からの連絡はない。
大富豪の三男が、今どこにいるのかも不明だ。
これといった新しい情報がないので、四人による『推理』は行き詰まっている。
そんな中、進展と言えるかどうか、先ほどまで『道化師王』のエリオットが、警察署に来ていた。
こちらから呼び出したのではない。この悪天候の中、エリオットの方から、わざわざやって来たのだ。
いつものように道化師のお面をつけていて、安っぽい王冠を頭の上に乗せていた。
三男が買った商品の内、店に在庫があったものを、「事件の参考になるかと思って」と持ってきたという。
警察官のコスプレ衣装(帽子、上着、ベルト、ズボン、バッジ)
ゾンビのマスク
囚人服
毒薬の瓶(中身は砂糖菓子)
エリオットは繰り返しアピールしていた。「警察に協力的な市民として、これは当然のこと」だと。
が、本音も口にしていた。「『捜査経費』でいくつか買ってよ。オススメはね、全部♪」と言っていた。
それを丁重にお断りするベイカー。
しかし、エリオットは商品を置いていった。「雨が強くなってきたから」という理由で。「明日以降に取りに来る」そうだが、「それまで署内で展示販売していいよ」とも言っていた。たぶん、実際に取りに来るのは、一週間後とかだろう。
チャーリーがゾンビのマスクに手を伸ばしながら、
「そろそろ店に戻っただろうし、商品回収のために、今すぐエリオットを警察署に呼び出すか?」
「悪くないアイデアだ。しかし、それは勘弁してやろう」
とアーノルド。
優しさから言ったわけではなかった。
丘の上の館で起きた殺人事件、もしも三男が犯人だった場合、『道化師王』のエリオットから、さらにくわしく話を聞く必要があるかもしれない。
なので、その時までは、エリオットにへそを曲げられては困る。からかうとしたら、それが終わってからだ。用済みになってから。
「たとえば、あの店を後日、『家宅捜索』しようかと考えている」
「ほほう♪ 店内を警察官で、いっぱいにしてやるんだな♪」
「そうだ。あいつも本望だろう。警察官たちが次々と、商品を手に取ってくれるわけだから」
「もしかしたら、売上につながるかもしれない♪」
アーノルドとチャーリーが悪い笑顔をしていると、
「リーダー、『推理』の方はまだ続けるのか?」
ベイカーが聞いてくる。
「でなければ、今の内に仮眠をとってこようかと思っている」
「そうだなあ」
アーノルドは考える。




