「ベイカー」+「FAX」
電話を切って十分後、『道化師王』のエリオットから警察署にFAXが届いた。
エリオットは今夜、店に寝泊まりするつもりだという。
なので、急いで調べてもらったのだ。大富豪の三男に何を売ったのか。くわしく知りたい。
届いたFAXによれば、
警察官のコスプレ衣装(帽子、上着、ベルト、ズボン、バッジ)
おもちゃの警棒
おもちゃの手錠(鍵つき)
ミニカー(パトカー仕様)
ゾンビのマスク
囚人服
バニーガールの衣装
毒薬の瓶(中身は砂糖菓子)
販売したリストの他にも、もう一枚あった。
ベイカーが呆れながら言う。
「あいつ、自分の店のチラシも送ってきたぞ」
警察署内に貼ってもらいたいらしい。チラシにはいくつもの商品が、写真つきで載っている。値段も書いてあった。
「なるほど。なかなかの商売上手だ」
アーノルドはそう言うと、
「チャーリー、この素敵なチラシを、どこに貼るのが一番いいと思う?」
「俺のオススメは、『凶悪犯罪者どもの指名手配書』の横だな」
「そうしよう。あいつもきっと喜ぶだろう」
電話で聞いたエリオットの話を、アーノルドは頭の中で再生する。
おととい、店に来た時、「三男」は一人だったらしい。誰かと一緒ではなかった。
また、ここ数日の間にエリオットは、この町で「次男」の姿を見ていないという。
「三男は一人で行動している。で、次男がこの町にいるのかは、不明か」
ベイカーが状況を整理する。
それをメモ用紙に書き取るアーノルド。
「では、『推理』を再開しよう」
そこでデデーオーが口を開いた。
「リーダー、その前にいいかな。三男の元マネージャーについて、情報がある」
さっきベイカーがエリオットに電話している間に、パソコンで見つけたらしい。さすが『電脳不眠者』だ。
「三男はすでに芸能事務所を解雇されている。けれども、元マネージャーは連絡をとっているみたい」
といっても、友好的な連絡ではないそうだ。
「ネット上での挑発をやめろ。さもなくば訴えるぞ。そんな感じ」
解雇したにもかかわらず、三男への抗議は未だに、芸能事務所に届いているとか。それで非常に迷惑しているようだ。元マネージャーも災難である。
「じゃあ、元マネージャーは、ここ最近の三男について、少しは知っているわけか」
「ベイカー、補足説明をありがとう。で、僕は元マネージャーと連絡をとってみるべきだと思っているけど、みんなの意見は?」
アーノルドは賛成だ。
ただし、条件をつける。
「丘の上の事件については、伏せておいた方がいいな」
芸能事務所は基本的に、マスコミと仲良しだ。元マネージャーに話すと、そこから情報がもれる可能性がある。
「こちらが警察だということも、伏せておいた方がいい」
「それだと、得られる情報がかなり減ると思うけど」
「現時点では、それでいく」
「了解。じゃあ、誰になりすます? 三男が『食い逃げ』したことにして、被害にあった『レストランのオーナー』とかどう? 三男は金に困っているみたいだし」
「三男の飲食代を、事務所が代わりに払ってください、か。それだと、情報を得るのに、かなりの話術が必要になるな」
「そうだよ。僕やベイカーには無理だね。こういうことは、口の達者なリーダーか元リーダーにやってもらわないと」
そこでチャーリーが口を挟んでくる。
「『弁護士』はどうだ?」
設定は『レストランのオーナー』とだいたい同じ。三男の法律相談に乗ったが、色々あって、その料金を踏み倒された『弁護士』だ。怒り狂って、三男の居場所を探している。
「ああいう料金は先払いじゃないか?」
ベイカーからの指摘に対して、
「序盤の数回は、先に払った。それで信用した。で、金額がふくれ上がったところで、三男がいきなり行方をくらませた、ってのはどうだ?」
「冴えているな、チャーリー。今の三男に信用はないだろう。元マネージャーも信じるんじゃないか?」
とアーノルド。
「話術は専門外なので、僕はパース」
「『弁護士』役なら、俺もパース」
デデーオーとチャーリーが言う。たしかに、この二人に『怒り狂った弁護士』役は向いていないかも。
アーノルドがベイカーに目をやると、クールな顔で「どうぞ」とジェスチャーしてきた。『北欧の処刑人』は『弁護士』に向いていそうだが、今回は「怒り狂った」という設定がある。
「わかった。俺がかけよう。デデーオー、元マネージャーの携帯番号を教えてくれ」




