↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/15

第10話 神々の支配者

中央記録庫の空間に、無数の光の剣が浮かんでいた。

十二枚の翼を持つ女神ルシアは、穏やかな微笑みを浮かべている。その表情だけを見れば、慈悲深い聖女のようだった。しかし、彼女の周囲に漂う魔力は、これまでレオンが対峙してきたどの敵とも異なっていた。

圧倒的な力。

そして、感情の欠落。

「人間は争いを繰り返す」

ルシアは静かに言った。

「国をつくり、国を壊し、他者から奪い、憎しみを増やす。あなたたちは、何度文明をやり直しても同じ過ちを犯してきた」

レオンは剣を構えたまま答えた。

「だから、すべての人間を消すというのか」

「消すのではありません」

ルシアは微笑んだ。

「正しい形へ修正するのです」

「正しい形?」

「苦しみのない世界です。争いも、飢えも、裏切りも存在しない。すべての生命が、定められた役割を果たす世界」

レオンは眉をひそめた。

「それでは人間ではない」

「人間である必要がありますか」

ルシアは不思議そうに首を傾げた。

「幸福であれば、自由など不要でしょう」

セレナが笑った。

「千年前から何も変わっていないな」

ルシアは彼女へ視線を向けた。

「古代魔王セレナ。あなたは七度の時間軸のうち、五度で世界崩壊の直接的な原因となりました」

「お前たちが世界を壊そうとしたからだ」

「結果は同じです」

ルシアは右手を上げた。

光の剣が一斉に動いた。

「異常存在を排除します」

レオンが叫んだ。

「散開!」

五人は同時に動いた。

セレナは黒い翼を広げ、空中へ飛び上がった。

アシュレイは黄金の剣を振り上げ、リーナは後方へ跳びながら弓を構えた。

未来のレオンは時間停止領域を展開する。

しかし、若いレオンには能力がない。

彼は純粋な身体能力だけで攻撃を回避しなければならなかった。

最初の光の剣が床へ突き刺さった。

巨大な爆発が起きる。

レオンは石柱の陰へ飛び込んだ。

その直後、石柱が粉々に砕け散った。

「くっ……」

彼は床を転がり、次の攻撃をかわした。

未来のレオンが叫んだ。

「右へ三歩!」

レオンは迷わず動いた。

直後、彼が立っていた場所を光の剣が貫いた。

「次は左!」

レオンは左へ跳んだ。

さらに三本の剣が通過した。

未来のレオンは、時間を数秒先まで観測していた。

「便利な能力だな」

若いレオンが言った。

「お前も持っていたはずだ」

「今はない」

「ならば、頭を使え」

若いレオンは苦笑した。

「言われなくても」

そのころ、セレナとアシュレイはルシアへ攻撃を仕掛けていた。

「魔王術式、第九階梯!」

セレナの周囲に巨大な黒い魔法陣が出現する。

無数の鎖がルシアへ向かった。

同時に、アシュレイが黄金の剣を振り下ろした。

「神聖剣術、終式!」

白い光が空間を切り裂いた。

二つの攻撃が同時に命中する。

しかし、ルシアは動かなかった。

彼女の周囲に透明な障壁が展開されていた。

「無意味です」

ルシアは静かに言った。

「あなたたちの能力は、すべて私が管理しています」

その瞬間、セレナの黒い鎖が消えた。

アシュレイの剣からも光が失われた。

「何だと……」

セレナが驚いた。

ルシアは微笑んだ。

「管理者権限を停止しました」

アシュレイが歯を食いしばった。

「神聖魔法が使えない……」

「当然です」

ルシアは答えた。

「私が与えた力なのですから」

リーナが弓を放った。

銀色の矢がルシアへ向かう。

しかし、矢は空中で静止した。

ルシアは指先で矢をつまんだ。

「原始的な武器ですね」

彼女は矢を折った。

「あなたたちは、自分たちがどれほど無力か理解していない」

その瞬間、レオンが叫んだ。

「リーナ、床の結晶を狙え!」

リーナは振り返った。

「結晶?」

「ルシアではない! 床だ!」

リーナは迷わず矢を放った。

銀色の矢が床に埋め込まれた青い結晶へ突き刺さる。

結晶が砕け散った。

その瞬間、ルシアの障壁がわずかに揺らいだ。

「……?」

ルシアが初めて表情を変えた。

レオンは静かに笑った。

「やはりな」

未来のレオンが尋ねた。

「何がわかった」

「ルシアは、この記録庫の魔力を利用している」

若いレオンは答えた。

「彼女自身が無限の力を持っているわけではない」

ルシアは黙った。

レオンは続けた。

「十二枚の翼は魔力の放出装置だ。だが、その供給源は中央記録庫の地下にある」

未来のレオンは目を細めた。

「なるほど」

「つまり、供給を断てばいい」

ルシアは微笑みを消した。

「解析能力を失っても、そこまで理解するのですね」

レオンは剣を構え直した。

「軍師に必要なのは、能力ではない」

彼は静かに言った。

「観察と判断だ」

ルシアの表情が冷たくなった。

「危険性評価を更新します」

空中に文字が浮かんだ。

《対象:レオン・グレイヴ》

《危険度:最高》

《優先排除》

十二枚の翼が一斉に広がった。

中央記録庫全体が白い光に包まれる。

未来のレオンが叫んだ。

「まずい!」

彼は両手を広げた。

《時間停止領域・最大起動》

光の剣が空中で停止した。

しかし、ルシアだけは動いていた。

「時間管理権限も、私の監督下にあります」

彼女は指を鳴らした。

時間停止が解除された。

未来のレオンが膝をついた。

「ぐっ……」

ルシアは彼を見下ろした。

「七度も時間を戻したのですね」

男は顔を上げた。

「そうだ」

「なぜ、そこまで抵抗するのですか」

「世界を救うためだ」

ルシアは首を傾げた。

「あなたは理解しているはずです」

「何を」

「人間が存在する限り、世界は安定しないということを」

未来のレオンは黙った。

ルシアは続けた。

「あなたは七度の失敗を経験した。だからこそ、人間の自由意思を制限しようとした」

男の表情が歪んだ。

「……」

「あなたの結論は、私たちと同じだったのです」

その言葉に、未来のレオンは何も答えられなかった。

ルシアは微笑んだ。

「協力しましょう」

「何?」

「第二補正機能の管理権限を返還してください。そうすれば、あなたの望む世界を実現できます」

男は顔を上げた。

「エリシアも救えるのか」

「もちろんです」

ルシアは優しく答えた。

「彼女が死ぬ未来を、すべて消去できます」

未来のレオンの手が震えた。

七度失った女性。

七度守れなかった命。

そのすべてを取り戻せるという。

「本当に……」

男は呟いた。

ルシアは手を差し伸べた。

「ええ」

その瞬間、若いレオンが言った。

「嘘だ」

ルシアが振り返った。

「何ですか」

「エリシアが死なない未来をつくることはできるかもしれない」

レオンは続けた。

「だが、その未来で彼女が自由に生きられる保証はない」

ルシアは黙った。

「お前がつくるのは、誰も選択できない世界だ」

レオンは未来の自分を見た。

「そんな世界で、エリシアは幸福なのか」

未来のレオンは息を呑んだ。

若いレオンは続けた。

「彼女は、自分の意思で私についてきた」

男は黙った。

「私が危険だからといって、命令だけで従う女性ではない」

未来のレオンは目を閉じた。

記憶が蘇った。

かつてエリシアは言った。

『私は、あなたの命令に従うためだけに生きているわけではありません』

彼女は笑っていた。

『自分で選んだのです。あなたと一緒に戦うことを』

未来のレオンの目から涙が落ちた。

「そうだったな……」

彼は呟いた。

「私は、あの言葉まで忘れていた」

ルシアの表情が変わった。

「交渉は失敗ですか」

未来のレオンは立ち上がった。

「ああ」

彼は静かに答えた。

「私は、もう一度人間を信じる」

ルシアはため息をついた。

「残念です」

その瞬間、十二枚の翼が巨大な刃へ変形した。

「全員、排除します」

光の刃が一斉に放たれた。

レオンは叫んだ。

「全員、中央の石碑へ!」

セレナが驚いた。

「何をするつもりだ!」

「記録庫の制御装置を使う!」

五人は石碑へ向かって走った。

しかし、光の刃が進路を塞ぐ。

アシュレイが剣を構えた。

「ここは私が!」

彼は魔力を失った剣で光の刃を受け止めた。

激しい衝撃が走る。

鎧が砕け、血が飛び散った。

「兄さん!」

セレナが叫んだ。

アシュレイは歯を食いしばった。

「行け!」

レオンたちは石碑へ到達した。

そこには古代文字が刻まれていた。

《中央記録庫・管理権限》

《緊急停止装置》

《認証条件:人類管理者》

レオンは石碑へ手をかざした。

しかし、何も起きなかった。

《第七補正機能、使用不能》

《認証失敗》

「くそっ……」

未来のレオンが手を伸ばした。

《第二補正機能》

《認証開始》

しかし、同じ結果だった。

《管理者権限、制限中》

《認証失敗》

ルシアがゆっくりと近づいてきた。

「無駄です」

彼女は微笑んだ。

「すべての管理権限は、すでに私が掌握しています」

レオンは石碑を見つめた。

緊急停止装置。

人類管理者。

その二つの言葉が気になった。

古代文明は、神々を管理するために世界管理機構をつくった。

ならば、神々より上位の権限が存在するはずだった。

「セレナ」

レオンは尋ねた。

「千年前、古代文明の人間はどうやって神々を管理していた」

セレナは眉をひそめた。

「何?」

「神々に命令を与える方法だ」

セレナは考え込んだ。

「確か……血だった」

「血?」

「古代文明の管理者は、自分の血を認証に使っていた」

レオンの目が輝いた。

「なるほど」

彼は剣を抜いた。

そして、自分の左手を浅く切った。

血が石碑へ落ちる。

その瞬間、巨大な魔法陣が浮かび上がった。

《生体認証開始》

《人類遺伝情報を確認》

《古代管理者系統との一致率:九十九・八パーセント》

レオンは息を呑んだ。

「何……?」

未来のレオンも驚いていた。

「そんな馬鹿な……」

《認証完了》

《原初管理者の末裔を確認》

《管理者名:レオン・グレイヴ》

《最高権限を一時解放》

中央記録庫全体が青白く輝いた。

ルシアの表情が変わった。

「あり得ない……」

レオンは石碑を見つめた。

「原初管理者?」

未来のレオンが呟いた。

「我々の祖先が……」

セレナは目を細めた。

「そういうことか」

「何がだ」

レオンが尋ねた。

セレナは答えた。

「お前の一族は、古代文明の管理者の血を引いている」

ルシアが叫んだ。

「認証を停止しなさい!」

しかし、石碑は彼女の命令を受け付けなかった。

《第六補正機能への命令権限を確認》

《神格管理者ルシアを制限可能》

レオンは静かに言った。

「ルシア」

彼女は動きを止めた。

「何をするつもりですか」

「お前の権限を停止する」

ルシアの表情が歪んだ。

「許されません」

「誰が許さない」

「世界の秩序が!」

レオンは首を振った。

「世界の秩序は、お前一人が決めるものではない」

彼は石碑へ手を置いた。

《最高管理者命令》

《第六補正機能・停止》

その瞬間、ルシアの十二枚の翼が砕け散った。

光の剣が消滅する。

巨大な魔力障壁も消えた。

ルシアは床へ膝をついた。

「そんな……」

レオンは静かに見下ろした。

「これで終わりだ」

しかし、その瞬間、未来のレオンが叫んだ。

「待て!」

「何だ」

「第六補正機能を完全に停止してはいけない!」

レオンは眉をひそめた。

「なぜだ」

未来のレオンは石碑を指さした。

「神格管理は、世界の魔力循環も制御している!」

その言葉と同時に、中央記録庫へ警告が響いた。

《第六補正機能停止》

《世界魔力循環に異常》

《大陸全域で魔力暴走を検出》

《世界崩壊まで、残り七十二時間》

レオンは息を呑んだ。

「七十二時間?」

未来のレオンは青ざめた。

「まずい……」

セレナが叫んだ。

「どういうことだ!」

未来のレオンは答えた。

「神々は世界を支配している。しかし、同時に世界を維持する装置でもある」

レオンは石碑を見つめた。

「つまり、神々を倒すだけでは駄目なのか」

「そうだ」

未来のレオンは頷いた。

「代わりに世界を管理する仕組みが必要だ」

ルシアが笑い始めた。

「だから言ったでしょう」

彼女は床に膝をついたまま、静かに笑っていた。

「私たちを排除すれば、世界は滅びるのです」

レオンは黙った。

ルシアは続けた。

「人間は、自分たちが何をしているのか理解していない」

彼女の瞳には、初めて怒りが浮かんでいた。

「私たちは何千年も世界を維持してきました」

レオンは静かに答えた。

「ならば、維持する方法を教えろ」

ルシアは驚いた。

「何?」

「お前たちが管理してきた仕組みを、人間にも使えるようにする」

ルシアは首を振った。

「不可能です」

「なぜだ」

「人間には、その能力がありません」

レオンは石碑を見つめた。

そこには、新しい情報が浮かび上がっていた。

《世界魔力循環制御》

《代替管理方式:分散型管理》

《必要条件:七つの補正機能の再接続》

《必要管理者数:七》

レオンは目を細めた。

「分散型管理……」

未来のレオンが覗き込んだ。

「何が書いてある」

「七人の管理者が必要らしい」

「七人?」

「ああ」

レオンは頷いた。

「一人の神が世界を支配するのではなく、七人が役割を分担する」

未来のレオンは考え込んだ。

「理論上は可能だ」

「だが、問題がある」

レオンは続けた。

「七つの補正機能を再接続するには、それぞれの管理権限が必要だ」

未来のレオンが頷いた。

「第二と第七は、我々が持っている」

セレナが言った。

「第六は、ルシアから奪える」

「残り四つだ」

レオンは石碑を見つめた。

「第一、第三、第四、第五」

アシュレイが尋ねた。

「どこにある」

レオンは記録庫の地図を呼び出した。

大陸全体が映し出される。

四つの地点が赤く輝いていた。

第一補正機能は、世界樹の地下。

第三補正機能は、東方の天空都市。

第四補正機能は、南方の時間断層。

第五補正機能は、王国北部の古代要塞。

「七十二時間で四か所か」

セレナが呟いた。

「普通なら不可能だな」

レオンは頷いた。

「普通ならな」

彼は地図を見つめた。

世界樹には、エルフ族の協力者がいる。

天空都市には、古代文明の転移装置が残されている可能性がある。

時間断層には、未来のレオンの能力が使える。

北部要塞には、王国軍の古い軍事施設がある。

すべてを一人で回る必要はない。

「部隊を分ける」

レオンは静かに言った。

「四つの補正機能を同時に確保する」

セレナが笑った。

「ようやく軍師らしくなってきたな」

レオンは頷いた。

「まず、世界樹にはリーナを向かわせる」

リーナは頷いた。

「任せて」

「天空都市にはセレナ」

「面白そうだ」

「時間断層には未来の私」

男は頷いた。

「わかった」

「北部要塞にはアシュレイ」

アシュレイが剣を構えた。

「承知した」

レオンは続けた。

「私は王都に残り、中央記録庫を維持する」

セレナが眉をひそめた。

「一人で?」

「ルシアがいる」

ルシアは顔を上げた。

「私に協力しろと?」

「ああ」

レオンは答えた。

「世界を守るのがお前の役目だったのだろう」

ルシアは黙った。

「ならば、今こそその役目を果たせ」

長い沈黙が流れた。

やがて、ルシアは静かに笑った。

「人間は、本当に理解できませんね」

レオンは答えた。

「理解する必要はない」

「何?」

「ただ、協力すればいい」

ルシアはしばらく考え込んだ。

そして、静かに頷いた。

「七十二時間だけ、協力しましょう」

こうして、世界を救うための作戦が始まった。

しかし、彼らはまだ知らなかった。

七つの補正機能を再接続するためには、単に権限を集めるだけでは足りないことを。

中央記録庫の最深部。

そこには、誰も見たことのない古代文字が刻まれていた。

《分散型世界管理計画》

《最終認証条件》

《原初管理者の生命情報を中枢へ統合》

《統合後、管理者の肉体は消滅》

つまり、世界を救うためには、レオン・グレイヴ自身が犠牲になる必要があった。

その事実を知っているのは、ルシアだけだった。

彼女は静かに目を閉じた。

「結局、人間は同じ選択をするのですね」

その声には、わずかな悲しみが混ざっていた。

一方、北西辺境領では、エリシアが執務室で報告書を読んでいた。

突然、窓の外が赤く染まった。

巨大な魔法陣が空を覆っている。

「何……?」

彼女は立ち上がった。

その瞬間、机の上に置かれた通信装置が輝いた。

《緊急警告》

《世界魔力循環に異常》

《世界崩壊まで、残り七十二時間》

エリシアは息を呑んだ。

「レオン様……」

彼女は窓の外を見つめた。

そして、静かに剣を取った。

「今度は、私が助ける番です」

彼女はガルドを呼んだ。

「全軍に通達してください」

「何を?」

「王都へ向かいます」

ガルドは驚いた。

「しかし、領地の防衛は……」

「必要な兵力だけ残します」

エリシアは地図を広げた。

「レオン様は、私たちを守るために戦ってきました」

彼女は静かに続けた。

「今度は、私たちがレオン様を守ります」

ガルドは頷いた。

「わかりました」

エリシアは窓の外を見た。

赤い空。

不気味に輝く魔法陣。

世界の終わりが近づいていた。

しかし、彼女の瞳に恐怖はなかった。

「必ず、間に合わせます」

そのころ、王都の地下では、レオンが中央記録庫の制御盤を操作していた。

ルシアが静かに見つめている。

「一つ、聞いてもいいですか」

「何だ」

「あなたは、世界を救うためなら命を捨てられますか」

レオンは手を止めた。

「なぜ、そんなことを聞く」

ルシアは答えなかった。

レオンは少し考えた。

そして静かに言った。

「命を捨てることを目的にはしない」

ルシアは目を細めた。

「では、必要になったら?」

レオンは彼女を見た。

「最後まで、生き残る方法を探す」

ルシアは黙った。

「私には、帰る場所がある」

レオンは続けた。

「待っている人間もいる」

ルシアは目を伏せた。

「そうですか」

彼女は静かに呟いた。

「それでも、運命は変わらないでしょう」

レオンは聞き返した。

「何か言ったか」

「いいえ」

ルシアは微笑んだ。

「何でもありません」

しかし、その瞳には、これまでとは違う光が宿っていた。

七度の時間軸で失敗した人間。

八度目の世界を救おうとする軍師。

そして、神々を管理するはずだった女神。

三者の運命が、静かに交差し始めていた。

世界崩壊まで、残り七十一時間。

戦いは、まだ始まったばかりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。