表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】夜会で「婚約破棄しよう」という常套句に呆れて振り返ったら、双子の愚兄だった件。  作者: 織子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
52/63

Episode.52


別室へ移動すると、アガサが深く頭を下げた。

「申し訳ありません……!私どもの力不足でご迷惑をおかけしてしまいました」


「い、いえ。お店のせいではありません」

店員が制止していたにも関わらず、勝手に入って来たのは第二皇子達だ。


「いいえ。第二皇子に限らず、常識外れの真似をする方が高位貴族にも数人おります。こういう場合の備えが足りませんでした」


ギリ……とアガサが奥歯を噛む音が聞こえた。皇都の人気店ともなれば、苦労が絶えないのだろう。



ガチャッ。

唐突に開いた扉に、ミネルバはびくりと身体を揺らす。また第二皇子が入って来たのかと思ったが、入って来たのはシリルだった。アガサが咎めるように言う。


「オーナー!ノックをしてください。驚くでしょう」

「あ、すまない……!」


シリルは慌てて入って来たようだ。ミネルバを見留めると、心配そうに尋ねた。


「大丈夫でしたか?何もされませんでしたか?」


焦るシリルを見て、ミネルバの強張っていた身体がほぐれた。力が抜けて自然と顔が緩む。


「…大丈夫です。駆け付けてくれてありがとうございます」


安心して、微笑む余裕すらある自分に驚く。


(また守られてしまった)


シリルの背中で守られるのは夜会の時以来だ。微笑むミネルバに、シリルもまた安堵したように見えた。短く息を吐き、シリルが口を開く。


「無事なら良かった。馬車を呼んだので行きましょう」





店の前に、ラウザー公爵家の紋章の馬車が止まっている。

アウグスタの馬車は多くない。先ほど乗って来た馬車は子爵のところへ向かったのだろう。それにしても、わざわざ公爵家の馬車を呼んだのだろうか?近くの貸し馬車と公爵家の馬車とでは安全面に雲泥の差があるが、すぐに用意できるとは思えない。



「……シリル様、皇城で馬車がないと言ったのは嘘だったのでは?」

「……」

ミネルバの問いに、シリルは無言の笑顔で返事をした。



シリルが御者の隣に座るライナスに声をかけた。

「ライナス。ミネルバ嬢を子爵邸まで頼むぞ」

「はい」

ライナスが頷く。一緒に乗ると思っていたミネルバは少しがっかりした。



「シリル様は乗らないのですか?」


「はい。俺は愚かな従兄弟が、無理難題を言わないように見張っていないといけません」

ため息交じりにシリルはそう言い、冷ややかに微笑った。


エスコートをうけて馬車に手をかけ、少し思案してミネルバは振り返った。今日のお礼が言い足りない気がする。


「あの、シリル様。本日は本当にありがとうございました。ドレスも贈っていただいて……」


「お気になさらず。先ほどのドレスもお似合いでしたが、こちらのドレスもとても似合っています」

 

シリルはそう言ったものの、どこかぎこちなさの残る笑顔を作っている。


「「……」」


しばし無言で見つめ合う。


(どうしてそんなにぎこちない笑顔なのかしら…)


シリルが気まずそうに目線を外したので、ミネルバはつい言ってしまった。


「シリル様、無理に褒めていただかなくても……」

「えっ」


ミネルバの言葉にシリルは狼狽えた。


「いえ、そうではなく……!綺麗で、直視出来なくて。…馬車でも視線を逸らしてばかりで感じが悪かったですよね」

そう言ってシリルは項垂れた。


――たしかに、馬車の中でシリルは窓の外ばかり見ていた気がする。途端に頬に熱が籠る。


「そ、そうだったのですね」


ここでもまた気の利いた返事が出来ない。社交術は何の為に習ったのか。


ミネルバはぎこちない足取りで馬車に乗り、「ではまたアカデミーで」とシリルと別れた。馬車の中で一人になったミネルバは、恥ずかしさに頭を抱えて悶絶した。









シリルは馬車が見えなくなるまで見送ると、唐突に背後に立ったヴェラに言った。


「連絡は取れたか?」

「はい。本日、酒場ミレーヌに戻られました」

「よし、行こう」







【酒場ミレーヌ】


『準備中』の看板が掛かった扉を開いて店内へ入ると、薄暗い店内の中に数人の人影が見えた。その中の長身で赤い髪の男、レオンハルトがシリルを出迎えた。


「やぁ、旦那。いらっしゃい」


シリルがレオンハルトの元へ向かうと、レオンハルトの前に居た黒服の男達は軽くシリルに頭を下げて気配を消して行った。【聖女の烙印】の精鋭達だろうか。


「ハルト。戻ってすぐにすまない」

「いいよ。ヴェラに聞いている。俺に頼みがあるそうだね?」

シリルは頷いた。

「ああ。人探しをお願いしたい」


シリルは封書をレオンハルトに手渡した。

「居場所は絞れている。魔術アカデミーか、魔塔のどちらかにいるはずなんだが……その方と連絡を取ってほしい。そして出来れば、帝国へお連れしてほしい」






読んでいただきありがとうございます!


久しぶりにレオンハルト登場。主要キャラではありませんが、思い入れのあるキャラクターです。彼もまたカッコいい。


本日も見に来てくださり感謝致します。いいね、ブクマ、コメント等、頂けると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ