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【連載版】夜会で「婚約破棄しよう」という常套句に呆れて振り返ったら、双子の愚兄だった件。  作者: 織子


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45/60

Episode.45

皇妃からの書状だ。皇命ではないので、絶対に従わなければならない訳ではないが、アウグスタが上流貴族の意向に反するのは難しい。


ミネルバは父に言おうとした言葉を飲み込んだ。


(まさか第二皇子から縁談が来るなんて……!)


ミネルバは短く息を吐いて父を見た。険しい表情をしている。険しいというか……かなり腹が立っているようだ。


「お父様…」

ミネルバが声をかけると、子爵はわずかに表情を緩めた。


「ああ。すまないなミネルバ。もう戻って休むと良い。理由は何にせよ、断る方向で進めるから心配するな」


父の言葉を疑う訳ではないが、簡単な事ではないだろう。

「はい。お父様、おやすみなさい」

ミネルバは一礼して部屋を出た。






アウグスタ子爵が、こめかみに青筋が浮くほど怒りを露わにするのには理由がある。

もちろん、アレックスとの婚約解消から間を空かずに、婚約の打診をしてきた皇妃にも腹が立ったのだろうが、問題は婚約相手の第二皇子フレデリック・グランヴァルドの人格である。


女グセの悪さに関しては、ことアレックスより悪いかもしれない。


皇族にはそれぞれ自分の宮がある。第二皇子の宮には、毎日のように違う令嬢が訪れ、明け方に帰って行く。ひどい時には数人の令嬢が一度に訪れるそうだ。


皇族と言えど、そのように艶聞の絶えない者との婚約を喜ぶ父親は少ないだろう。


ミネルバは自室に戻ると、書類に目を通すのは諦めてベッドに身を投げ出した。


先ほど認めた恋心はすでに消すことは出来ず。かと言って新たに舞い込んできたこの厄介な縁談が、簡単になくなるとも思えない。


ミネルバは考えることを放棄して目を閉じた。










シリルは白銀宮の前で頭を抱えていた。


皇妃からの招待状が届いたのは二日前の事だ。皇帝が不在になってからすぐ、皇妃の動きが活発になったのは知っていたが、シリルは自分が呼び出されるとは思っていなかった。



(俺に何の用だ?)


関わりがない訳ではない。思い当たる節も一つある。最近のタナトス伯爵家のラウザーに対する、横柄ともとれる振る舞い。裏には皇妃がいることは分かっていた。

皇妃の生家であるクロイツ公爵家とラウザーは折り合いが悪い。帝国に二つしかない公爵家同士なので、牽制し合っているのだ。その為かと思っていたがどうやら違うのかもしれない。


数日前、アカデミーの騒ぎのすぐあとに、シリルがお灸を据えたリリーアの友人(と言うのかも知らないが)アザリー・ノエル侯爵令嬢を白銀宮へ呼んだ事は知っている。ミネルバに報復など企んで

いないか数日見張りを付けていたからだ。



「お待たせいたしました。シリル・ラウザー公爵令息。皇妃様がお待ちです。どうぞお入りください」


侍女がそう言うと、シリルを先導するように歩き出す。白銀宮に入るのは、前世を思い出す前を合わせても初めてだ。アランドラ・クロイツ。ラウザー公爵が言うには、厄介な人物だと言う。


(前世の俺より若いとはいえ、一国の皇妃様と何を話せばいいんだ)


シリルは無性にミネルバの顔が見たくなった。今日はようやく公爵と皇帝に催促されていた仕事を終わらせた日だった。白銀宮に来る前に、アカデミーに顔を出そうかと目論んでいたら、朝から皇妃の送った馬車が来たのだ。シリルは泣く泣く馬車に乗り込んだ。


(終わったらアカデミーに寄ろう。顔だけでも見たい)


それはそうと、やはり皇妃の宮だからか男の従者がいない。自分がこの宮に居ていいのか心配になってくる。侍女が大きな扉の前で止まった。


「皇妃様、ラウザー公爵令息をお連れしました」

「どうぞ」


扉が内側から開き、部屋の中を見てシリルは驚いた。部屋の中に居たのは皇妃だけではなく、食堂で窘めた三人の令嬢と、他にも若い令嬢達十人ほどでお茶会を開いていたようだ。皇妃と二人だと思っていたし、中から声もしなかったのでシリルは内心驚いた。が、おくびにも出さないように頭を下げて挨拶をした。


「白銀宮の月である皇妃様に、謹んでご挨拶申し上げます」


シリルが頭を下げている間も令嬢たちは動かない。緊張しているようにも見えるが、恐れているようにも見える。

(数日でずいぶん従順になったな)

他の令嬢はともかく、問題の三人組はここまで大人しい令嬢達ではなかったはずだ。



「よく来てくれましたね。ラウザー公子。こうしてお話をするのは初めてね。畏まらなくていいのよ」


シリルは顔を上げた。

「滅相もありません」


皇妃は目を細めて微笑を浮かべている。


「どうぞ座って?」

皇妃が言うと、侍女が皇妃の向かいの席の椅子を引いた。シリルは仕方なく座ったが、違和感を感じた。座らされた席の隣と、あと一つ空いている席がある。


(まだ誰か来るのか?)

これ以上女性たちに囲まれるのは肩身が狭い。シリルの視線を追った皇妃が言った。


「今、席を外しているご令嬢がいるの。戻ったら紹介するわね。今日公子を呼んだのは、ほら…アカデミーで起こった件を、彼女たちが謝罪したいと言うものだから」


皇妃の言葉に、三人の令嬢を見ると、蒼白な顔をして立ち上がった。







読んでいただきありがとうございます!


いつもいいね、ブクマ、コメント等、嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
それありそう
あー⋯ 敵に回しちゃいけない人物を敵に回したか。
あー(・o・)???
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