街は大騒ぎ?
「いったいなにがあったのかしらねぇ」
ヒノエ達今、目的地である街が見える丘の上で待機していた。
すぐに向かわないのは、城を守る兵士や街の人々が武器を片手に殺気立っている為だ。
こちらにはシェミ達人族の家族を連れているので、あんなに殺気立っている状態の街にはおいそれと連れていけない。
少し落ち着くまで待つべきだろう。
でなければいらぬ火の粉がシェミ達に飛んでくるからだ。
「人食い共が襲ってきたわけでも帝国人が荒らしに来た感じでもなさそうね」
「母さま! きっとお祭りなのじゃよ! 妾べっこう飴が食べたいのじゃ!」
「ノアねぇ様。流石にお祭りじゃないと思うよ?」
「シェミは何が食べたい? 流石にゴーフル(ワッフルのこと)はなさそうだけど・・・」
「ないなら後でパパが作ってやるさ」
「もぉ! ママもパパも! アレはお祭りじゃないってばっ!」
ただシェミ達家族はそこまで危機感を覚えていないようだ。
と言うか、人族のシェミ達の視力では今街がどうなっているのか全く分からないからだ。
なんか街の人がいる。程度の距離である。
やはり基本的な身体能力は獣人の方が優れているようだ。
「ヒノエ様。お待たせしました」
そうしていると街へ偵察に赴いていた者達が戻ってきた。
「ご苦労様。それであの騒ぎはいったいなにがあったのかしら?」
「はい、どうやら聖教国に攫われていたトーエイ家のご子息が無事助け出されたようです」
「いえ違います。攫われたトーエイ家のご子息は無事に帰還しましたが、再度聖教国の人食い共が現れ囚われたとのことです」
「え? どっちも違いますよ。なんか変な人族が、攫われていたトーエイ家のご子息を見せびらかしに来たって聞いてます」
「はぁ? お前等全然違うから。攫われたトーエイ家のご子息は自力で戻ってきて、今もお城の中を駆け回っておられると聞いたぞ」
「「「いやいや、そんなウチのお転婆姫じゃないんだから」」」
「・・・・・のぉ、母さまや。こやつら妾の事をバカにしとりゃせんか?」
「彼等は事実しか言っていないからバカになんてしてないわよ。気のせいですから安心しなさい」
「そうかの?」
「ママ・・・ヒノエ様が・・・」
「言いたいことはわかるけどし~よ。し~」
「口は禍の元って言うから黙っておくんだぞシェミ」
どうやらシェミ達一家の間でもノアはお転婆姫として認識されているようだ。
まぁ日頃の天真爛漫な姿を見ればそう認識されるのも納得と言うものだね。
「それで、結局はどの情報が正しいのかしらね」
「「「「自分のです!!」」」」
全員が全員自信満々に言い放つ。
それだけ情報収集に自信ありなのかもしれないが・・・残念なことにここにいる誰も正確な情報を手に入れることはできていなかった。
「のじゃ? のぉ母さま。お城の上に丸い手鞠のようなモノができ・・なんじゃあれは? 橋? 道ができたのじゃ!?」
「何かしらね? あら、中で何かが滑って・・・」
突然お城の屋根にできあがった大きな水の塊。
その大きな水の塊はクルクルと地上に向かって螺旋を描いていた。
まるでプールで遊ぶウォータースライダーの様に。
『柔らかハンドでこんなこともできたんだね』
『まぁ強化されてるからこれくらいはね』
只今シオウと兎人族の男の子は、お城の天辺に登ったあと、柔らかハンドでウォータースライダーを作って遊んでいる。
まぁウォータースライダーと言っても水は流れてないので滑り台の方が適切だろう。
「うおんうわんおわんうおんっ!?」
「お前うるさいぞ。少しは黙ってなよ」
「だ、だって・・・グルグルしててこわいおん!?」
なっさけないのぉ~、と思いながら、シオウはお城の外壁に足をかけ駆けあがる。
どうやらもう一回先程と同じ様に滑って遊びたいと思ったのだろう。
兎人族の男の子は嫌がりそうだが、シオウがやりたいので聞き入れることはないだろう。
「貴様! 若様をがぼがぼがぼがぼ!?」
勿論シオウが抱える兎人族の男の子を取り返そうと何人もの獣人達が襲いかかってくるが、そこはクーお姉さんが柔らかハンドで撃退しているので問題ない。
魔装を使えず、不用意に近づいてくるだけの相手ならば、今のクーお姉さんでも軽くあしらことができるようだ。




