あそこにいる
臭いお山を迂回してシオウは進む。
サヨコが教えてくれた方角にひたすら進み続けた。
「・・・すっげ」
そしてなんか凄いデカイ屋敷が建っている場所を見つけた。
『日本のお城を身体の大きな獣人や亜人達に合わせて巨大化させた感じね』
『にほんのお城?』
『日本という国にこんな感じのお城があるのよ。偉い人が住んでいそうなね』
『へぇ~そうなんだ・・・・ん? どうしたんだコイツ?』
楽しくクーお姉さんとお話していたら抱えていた兎人族の男の子の耳がせわしなく動き出した。
別に可笑しな音も危険な音も・・・・・・うん、聞こえないのだけど。
「・・あそこが目的地だと・・・思う」
「う? なにが?」
「だから・・・多分君が探している人達が向かっている場所」
「え~?? マジで~??」
「・・・マジで」
何の根拠があって断定するのかわからないが、凄く自信満々だ。
というか、その言葉が本当ならシェミちゃん達の事追い越してきちゃった?
「何でここだって思ったんだ?」
「だって・・・・あそこからパパとママの声が聞こえるもん」
「・・・お前のパパとママ?」
「うん」
「・・・・・・ふ~ん」
あそこと言った方角へ視線を向けるが、残念なことに指差している方角はデカイお城の中。
流石にどれだけ視線が良くなろうとも物を透視することなどできる訳もない。
そして人の声は聞こえるが、どの声がコイツのパパとママの声なのかわからなかった。
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・会いたいの?」
「・・・・・・・帰りたい」
無言で見つめてくる兎人族の子。
なので問いかけてみれば、返ってきた答えはお家に帰りたいと言う返答だった。
当然と言えば当然であるのだが、それをシオウは許すことはなく首を横に振った。
「お前はお土産なの。だから帰っちゃダメ」
「・・・・・・・けちんぼ」
「うるさい。お前は僕の道具で盾なんだ。ノアちゃんが来た時に生贄として存分に働くんだ」
「・・・そのノアちゃんって子に会わなければいいじゃん」
「うるさい。会っちゃう可能性が高いから仕方ないんだ」
「・・・・・・・・・」
それだけ身体能力が高ければ逃げることはそう難しい事じゃないじゃんと思いながら、これ以上文句を言っても仕方ないと思ったのか、兎人族の男の子は口を噤んだ。
ただとても不満そうに、そして寂しそうにしていた。
すぐそこに両親がいるというのに・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・むぅ・・・・・・ノアちゃんの生贄にさせるまで絶対帰さない・・・けど・・・・ちょこっとくらいなら会わせてやる。けど絶対生贄になるまで帰さないからな」
「!? うん!」
そして結局長い沈黙が耐えられなかったのか、兎人族の男の子を両親の元に帰さないが会いに行くことに決めたのだった。
両親に会いたい。
その気持ちだけは今のシオウにも十分理解できるのだろう。
そうしてシオウは兎人族の男の子を担ぎながらお城に突撃した。
ご丁寧に頭を下げ、入り口からお城に入らせてもらう・・・なんて、人族嫌いの獣人達が許すわけもないので仕方なく突撃したのだ。
家の屋根伝いを駆け、城壁を駆け、石垣を駆け、お城の門を無理やり開け侵入する。
そんなことをすれば周りの獣人や亜人達が襲い掛かってくることは重々承知しているが、そんなのはどうでもよかった。
だって、何をしても人族の僕は彼等に嫌われるだけなのだから。




