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『ゴールまで、あと一歩。』  作者: S.S


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3/10

第3話「ひとりだけの朝練」

試合で決定機を外してから三日が過ぎた。


表面上、翔太はいつも通りだった。


学校へ行き。


授業を受け。


放課後は部活をする。


だが心の中では、あのシュートが何度も再生されていた。


ゴールキーパーと一対一。


決めれば勝利。


そして――大きく外れたシュート。


夜ベッドに入っても思い出す。


授業中も思い出す。


部活中も思い出す。


忘れようとしても忘れられなかった。


そんなある朝。


翔太はいつもより早く目を覚ました。


時計を見る。


午前五時。


蓮との約束は六時だった。


だが、なぜか眠れなかった。


しばらく天井を見つめる。


そして起き上がった。


「行こう」


誰に言うでもなく呟く。


グラウンドに着いた時、まだ誰もいなかった。


朝霧が薄く漂っている。


静かだった。


校舎も眠っているように見える。


翔太はボールを置いた。


そしてシュートを打つ。


一本。


二本。


三本。


何十本。


何百本。


ただひたすら繰り返した。


気付けば汗だくだった。


その時。


「何してんだよ」


声がした。


振り返る。


蓮だった。


「早すぎるだろ」


「目が覚めた」


「嘘つけ」


蓮は苦笑する。


「気にしてるんだな」


図星だった。


翔太は何も言えなかった。


その日から。


翔太はさらに早く学校へ来るようになった。


五時。


誰もいないグラウンド。


ひとりでボールを蹴る。


パス練習。


トラップ。


ドリブル。


シュート。


毎日。


毎日。


毎日。


だが。


努力したからといって急に上手くなるわけではない。


一週間後。


練習試合。


翔太はまたミスを連発した。


ボールを奪われる。


パスがずれる。


判断が遅い。


終わった後。


蓮が言った。


「前より良くなってるぞ」


だが翔太は首を振った。


「なってない」


「なってる」


「なってない」


言い合いになった。


珍しかった。


二人がこんな風になるのは。


その時だった。


「お前らうるさい」


突然声が飛んできた。


振り向く。


二年生だった。


背が高い。


短髪。


鋭い目。


サッカー部の主力選手。


高瀬悠斗。


チームでも有名な存在だった。


「神谷だっけ」


高瀬は翔太を見る。


「はい」


「お前最近朝練してるやつだろ」


「はい」


「だったら落ち込む暇あるなら練習しろ」


あまりにも真っ直ぐだった。


翔太は固まる。


高瀬は続けた。


「努力して結果出ないやつなんか山ほどいる」


厳しい言葉だった。


だが。


なぜか嫌な感じはしなかった。


「それでも続けるやつだけが上手くなる」


そう言って去っていく。


帰り道。


翔太はその言葉を何度も思い出していた。


努力しても結果が出ない。


確かにそうだ。


でも。


だから何だ。


辞める理由にはならない。


翌朝。


翔太はまたグラウンドへ向かった。


誰もいない朝。


ボールを置く。


深呼吸。


そして走り出す。


以前よりも少しだけ前向きな気持ちで。


その頃。


遠くからそれを見ていた人物がいた。


高瀬だった。


彼は小さく笑う。


「少しは根性あるじゃねえか」


そう呟きながら。



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