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絶対やだ!

冗談じゃない。4課なんて。

杜守庁の部署からひとつ選んで所属しろと言われたら4課は絶対に選ばない。それくらい嫌だ。


杜守庁の部署は8課まである。総合統括の1課、熊守管理の2課、安全保持の3課、人材狩猟の4課、資源監視の5課、施設保守の6課、育児教育の7課、禁制懲罰の8課だ。1課を頂点にして、治安維持から司法まですべてを統括する。

繰り返すが、エンジュ含む4課の仕事は人材狩猟。ヘッドハンティングという言葉の通りに見込みある者を『狩猟(勧誘)』することもあれば、又木を『狩猟(処刑)』することもある。捕縛して3課に引き渡した後は8課が法に則って裁くことも、7課が思想の矯正や再教育を試みたりすることもあるが、それらの手に負えないと判断された時は4課が処刑する。場合によっては3課に引き渡さずその場で殺すことだって。

要するに、人を殺さねばならないのだ。誰かがやらなくてはいけないことだし、それをやる職員たちには一定の敬意を持つ。だとはいえ、それを自分が担うとなると話は別。救いようのない罪人だとしても人の命を奪うなど願い下げだ。絶対に4課の職員などなりたくない。


「そうですか? 貴女ならいい守り人になれますよ。4課なら私やアンラさんが推薦しますし」

「やだぁ……」


冗談じゃない。低く唸るようにして呟いたトウカの言葉にエンジュが苦笑した。


惜しいものだ。本人にやる気がないなんて。又木だ、やっちまえ、と思考がスライドするのは4課の職員としてかなり適正があるのに。まず捕まえようとか思想を矯正しようとか、そういうことを考えずに即座にその場で処刑することが一番に思いつく発想は4課職員には必要なもの。実行する手があればなおよし。その点は、トウカが真面目に知識と技術と経験を積み上げていけば問題なし。つまりトウカは4課に所属すればものすごく出世できる。

いや、4課だけじゃない。どの課に所属してもやれるだろう。かなり上の地位にまでいけるはずだ。エリート中のエリートが集う1課だって踏み込んでいけるとさえ思う。それはすなわち、熊神が目覚めた時に喰われる優先順位が上がるということだ。だからトウカはそれを避けるため手を抜く。まったく、本当に惜しいものだ。こんなに、こんなに美味しいのに。その味を見抜いていて誰にも何も言わず隠しておく自分も相当だが。


そんなエンジュの心中を知らず、トウカは難しい顔をしていた。せっかくのパフェにスプーンを突き立てたまま、それきり食べ進んでいないほど。

ぐったりするような重い表情で、だって、とトウカが口を開く。


「殺すってことは殺されることもある……ってことでしょ?」

「そうですね」

「だからだよ。……そんなの、やだなぁ…………」


重々しくトウカが首を振る。溶ける前に食べないと、と義務感で動かした手でクリームを一口食べ、その甘ったるさに沈み込むようにして。


殺す。殺される。その命のやり取り。それは仕方ない。又木だって、喰われたくないという信念のために熊神に歯向かっている。それを摘み取るのだから、必然的にそういう決着の付け方になってしまう。共存できないのだから淘汰するしかないし、淘汰するということは殺すことだ。

必要なことだし、仕方のないことだし、そういうものだと理性では割り切れる。だが心の部分では割り切れない。


だって、『そういうもの』の中にユキシロとエンジュまで巻き込まれているのだ。漠然とした、どこか遠い話なら理性の割り切りもできる。だけどユキシロとエンジュという知り合いがいることで話の焦点はぐっと身近になる。ふーん、まぁそういうもんだよね、と他人事ではいられない。

又木と4課職員という立場である以上、ユキシロとエンジュは殺し殺される間柄なのだ。エンジュはユキシロを殺すだろう。殺さねばならない。

そこまで考えて、あぁ、とトウカはやっと気がついた。エンジュが任務によって殺したという14人の又木。そこにユキシロを含めたら15人。きりのいい数字だ。


「うーわぁー……」

「そんな顔をしないでください。せっかくの甘味が無駄になりますよ」

「ぅー……」


くそ。なんでこんな深刻な雰囲気に。もっとこう、のんびりとした空気を楽しむつもりだったのに。

がっくりと項垂れながら、溶けかけたバニラアイスにスプーンを突き立てた。


「おのれ……あの募金め……」


あれを見つけなければこんな空気にはならなかったろう。おのれ又木め。

トウカの呟きにエンジュは相好を崩した。あいつのせいだと又木に責任を持っていくあたり、やはり4課向きの思考だな、と。

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