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几帳面vsズボラ

それから1週間ほど。

日中は学校へ、放課後にエンジュが校門まで迎えに来て『放課後デート』へ。帰って夕飯を食べ、少しゆっくりして各自の部屋で寝る。そんな暮らしにも慣れてきた。

監視役といってもトウカがやることはほとんどなく、四六時中エンジュに張り付く必要もない。トウカがこの1週間でしていることといえば、深く考えず、自然体でこの家で暮らすくらいだ。

もうトウカの中ではただのルームシェアという感覚になっている。表向きの言い訳の通り、親戚の少し離れた年上の従兄弟の家に居候させてもらっているような気分でいる。

エンジュもその感覚を矯正することはなく、好きにさせている。好きにさせてはいるのだが。


「トウカ。ゴミ箱が溢れそうなら無理に押し込んだり脇に置いたりせず捨ててください。それと、冷蔵庫の茶を飲み切るなら新しく作り置いてください」


好きにさせてはいるのだが、一緒に暮らしているとやはり言いたいことは出てくる。

もっぱらエンジュが口にするのはトウカのずぼらさだ。その怠惰で粗雑な面に口を出すようになった。まるで母親のように。


「はいはい、わかりましたよーっと。まったく、母親みたいなこと言うんだから……」

「私だって貴女のような粗雑な娘は要りませんよ」

「あぁ言えばこう言う……」

「言われたくなかったら、言われないような言動を心がけてください」


おのれ。正論だから言い返せない。トウカはぐぬぬと歯噛みした。

指摘される内容はどれも真っ当で、トウカが面倒臭がりなのが悪いのだが、しかし言い返させてほしい。エンジュが几帳面すぎるのでは。

悪あがきのように文句を言うが、エンジュは譲らない。ゴミなんて積み上げずさっさと捨ててしまえばいいし、茶の作り置きもやればいい。そうだろう。

最終的に、気をつけます、とトウカが折れて終わる。なお改善されたためしはない。積まれたゴミはエンジュが捨てるし、茶の作り置きはエンジュが作る。

今回もまたそんなやりとりをして終わる。正論で言い負かされたトウカはエンに泣きついた。


「ねぇ~~、エン~~!! あんたの飼い主真面目すぎない~?」


もふもふ。ふかふかの毛皮に抱きつきつつ文句を言う。なんだかんだやってくれるのはありがたいが、小言が多い。小言を言われるようなことをしている自分が悪いと言われればそれまでだが、それにしたって。

まるで母親のように口うるさい。いや、トウカの母親より口うるさい。なんでこうも口うるさいのだ。お互い生活様式が違うのだから、衝突するのは必然とはいえ。


「細かいし口うるさいし……ねぇ、そう思わない?」


切々と訴えてくるトウカに抱き締められ、わぅ、と困ったようにエンが尻尾を揺らした。それ、あなたがちゃんとすればいいだけじゃないですか。そう言いたげだった。


「その通りなんだけどさぁ……エンジュったら細かすぎるのよぅ……」

「聞こえてますよ」

「ぅ……」


しかも本人にも聞かれていた。おのれ、説教をして立ち去ったと思ったのに。

正面のエンと背後のエンジュ。両方から溜息を吐かれてしまった。

これは状況不利。よし逃げよう。三十六計なんとやら。ぱっと踵を返して部屋に撤退することにした。リビングを出て廊下へ。部屋は2階にあるので階段に向かう。その背中にエンジュの追撃が投げかけられた。


「あともう一言言っておきますが、靴下はちゃんと表に返してください。裏返しのままにしないように」


直接肌に触れているのは内側なのだから裏返しにしたほうがいいというポリシーならそれで結構だが、それなら裏返しで統一してほしい。

表向きも裏返しも混ざっているのは明らかにポリシー無しの粗忽者だ。いちいちひっくり返すこちらの身にもなってくれ。

この状態が続くなら、下着同様靴下も各自で洗うルールに変えねばならない。

いいですか、と念押しすると、階段の上から返事が返ってきた。


「はーい! 気をつけまーす!」

「それ、もう24回目です。今日だけで3回目」

「こまかーい!」


エンジュめ。本当に母親みたいに口うるさい。同居しているのは親戚の従兄弟だったか婚約者だったか母親だったか大量殺人犯だったかわからなくなる。

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