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散々クリフォードに対する苦情を並べたてた二人は、喉が渇いたらしくお茶をメイドに頼んだ。
「……クリフォードでんかってなんで『あんな』なのかしら」
ぽつりとニナは呟く。
側妃の子とは言え、彼に与えられている予算は姉王女たちと同等だし、王の子としての教育は最高水準の教師が行なっていたし、側近も彼より年上の優秀な者たちで固めていた。
なにより王妃も義兄姉たちも、最初から彼に敵意を持っていたわけではない。
クリフォードが顔が良いことを鼻にかけて、人を侮辱したり乱暴な行動をとったりするようになっても、根気強く末弟を更生させようとしていたのは、一周目のニナでも知ってることだ。
しかしクリフォードは彼等の善意の諫言を全て歪曲し、父に『虐められてる』と報告した。
遅くに出来た(とは言っても第二王女と二歳しか変わらない)末息子を溺愛していた王は、クリフォードの言葉だけを鵜呑みにし、王妃たちを叱り飛ばした。
それも一度だけでなく、何度も何度も。
善意からの行動を曲解され悪意ある態度をとられては、誰だって怒りもするし敵意を抱く。
クリフォードの母である側妃も、ただ愛されるだけの存在として王から部屋と予算を与えられ、王族としての責務を一切放棄し遊び暮らすだけ。
息子の教育は教師に丸投げし、月に一回程度クリフォードの成長を見『あなたは本当に可愛い顔をしてる』だの『将来はとても美しい男になるわね』だの『貴方ぐらい美しかったら大国の王配にもなれるわ』だの、子の歪んだ自意識を肥大化させることしかしなかった。
王妃や皇太子や姉王女たちが、『あのままでは良くない』と助言しても、『王から愛されてないから僻んでるのね』と取り合わず。
国の最上位に位置する王妃や王女、次期国王である皇太子の言うことを聞かないクリフォードが、教師や側近(こればかりは王が優秀な者を集めた)の言うことなど聞くはずもなく。
結果、クリフォードは『ああ』仕上がった。
外見だけは最上級、中身はどうしようもないワガママ放題のお子様なまま成長した。
「なのに女性にはモテるんだよね」
不思議そうにリオンも呟く。
同性で年も近い彼からしてみれば、嫌われる要素だらけのクリフォードが、なぜ持て囃されているのか本気で理解出来ないのだろう。
リオンの疑問に、ニナは心の中で叫ぶ。
『ぼんくらは女にモテる為の努力はする色ボケ野郎だから!』と。
「ただいま」
「お父さま!」
「エルおじさん!」
ダイニングに入ってきたエルンストの髪は少し乱れている。
「おかえりなさいませ、旦那様。お食事は?」
「食事は皇太子宮頂いた。コーヒーを貰えるか」
「承知致しました」
執事にコーヒーを頼んだエルンストは、クラバットを緩めながらニナとリオンに笑いかけた。
「婚約解消、皇太子様は賛成して下さったよ」
わっ!とニナとリオンは顔を見合わせ喜び、エルンストに駆け寄った。
「お父さまほんと!?」
「すごいやエルおじさん!」
二人からの賞賛の声に、髭を撫でつつエルンストは問う。
「アニスとサーシャは?」
「よるごはんの前にはかえってくるって」
「ふむ。……リオン」
「朝マイルズ伯爵家に届けさせたから、彼が在宅でこっち側なら夜には返信が届くと思う」
二人の話を聞いてエルンストは、届けられたコーヒーを一口飲むと考えながら言った。
「では、答え合わせは夕食のあとだな……ニナ」
「……はぁい」
ニナはまた仲間外れか、と腹の中で落ち込み引き攣った笑顔を浮かべる。
「多分話が長くなるだろうから、今日は長めに昼寝をしなさい」
「─っお父さま!!」
ぱっと顔を輝かせたニナの頭をエルンストは撫でる。
「クリフォード殿下とサーシャの婚姻を一番嫌がっていたのはおまえだからな。仲間外れにはせんよ」
「お父さまだいすき!」
ニナはぎゅうっとエルンストの足に抱きつく。
仲睦まじいフォワード父娘の様子を見て、リオンは小さく『いいなあ』と呟いた。
次回少し長めです、一回目の山場?
明日も20:00〜に投稿します。




