5
今回も少し短いです。
「おはようございましゅ……」
寝ぼけまなこをこすりながら、ニナはダイニングテーブルに着いた。
「おはようニナちゃん、眠そうだね」
「うん……ねむい……」
「ご飯食べたらお昼寝する?」
「する……リオンもいっしょに……」
「──え」
リオンの『──え』に、ニナの意識が一気に覚醒する。
「ち、ちがう!わたしそんなはしたないこじゃない!」
「あ、ああ……うん?」
「ニナは今からあさごはんをたべます!リオンもたべますね!」
「あ、はい」
「きょうのごはんはなんですか!」
照れ隠しにまくし立てるニナに、笑いをこらえながらメイドは二人に給仕する。
「軽焼パンと卵料理とソーセージですよ、卵と飲み物はどれになさいます?」
少し考えてから、ニナはオムレツと牛乳を頼む。
「僕は目玉焼きと紅茶。軽焼パンは三個、ソーセージも三本お願いするよ」
「リオンはたくさん食べられていいなあ」
「ニナ様も大きくなれば沢山食べれますよ」
メイドとリオンに慰められるがニナは知ってる。
大人になればなるほど、貴族女子は沢山食べれなくなることを。……コルセットが憎い。
焼きたてふわふわオムレツとバターをたっぷり塗った軽焼パンを交互に口に運びながら、ニナは向かいのリオンを見た。
器用に目玉焼きの黄身を軽焼パンに載せている。
─あの食べ方このくらいの年から好んでいたのね。
『ちょっと行儀が悪いけど』と断りを入れた後、『潰した卵の黄身にソーセージや焼いたポテトをつけて食べてみて?』と、一回目のある朝リオンが勧めてくれたことを思い出す。
少しだけ躊躇したあと思い切って、リオンの真似をしてみたら確かに美味しかった。
その時のニナの顔を見て嬉しそうに笑ったリオンのことも連鎖して思い出し、涙がでそうになるのを堪える。
だってまたリオンに会えた。
あの時自分の身体から熱いものが失われて、どんどん寒くなっていく中、ニナはリオンを探してた。
邸の中から誰かが怒鳴る声が聞こえてきて、ニナは『うるさいなあ』とか『さむい』とか、そんなことを考えながらも、意識が途切れる最後の瞬間までリオンを探したのだけど、彼はいなくて。
「ニナちゃん?どうしたの?」
優しいリオンの声にニナは微笑む。
「ううん、ごはん美味しいね」
朝食を食べ終え一息ついたところで、ニナは側に控える執事に問い掛けた。
「お父さまは?」
「昨夜から帰宅されておりません」
「お母さまとお姉さま」
「慈善バザーの話し合いに王妃さまの元へ」
むう。とニナは頬を膨らませ呟く。
「わたしのでばんがない……」
「旦那様も奥様もサーシャ様もやると決めたら即行動!な方々ですからね」
ニナは苦笑する乳母に振り向き「しってるもん」と、更に頬を膨らませた。
「わたしだっていっしょに色々したかったの!」
「僕たち子どもだからねえ」
向かいに座るリオンもつまらなさそうに言う。
「ね!
わたしぼんくらの悪いとこなら、一日中ずーっと言えるわ!」
「僕も僕も」
「じゃあ、私からね!お父さまの書斎に勝手に入ろうとした!はい、次リオンの番ね」
「いいよ。父上から送られて来た誕生日の贈り物を壊されたこと。はいニナ」
「あ、わたしのたんじょうびのおくりものもお茶かけられた!」
「ニナも?」
和気あいあいな二人は見ていて大変愛らしいものだが、話してる内容は『姉(親戚)の婚約者からの被害』だ。
内容が内容なので小声で話せなどと注意されそうなものではあるが、フォワード邸には、クリフォードへの批判を止める者は一人たりともいない。
みな大なり小なり、彼から迷惑をかけられているからだ。
例えば老齢の執事は、管理しているワインセラーの年代物のワインを割られたり。
例えばニナの乳母は『太ってるんだから大丈夫だろ!』と、背後から強く腰を蹴られたり。
アニス付きの侍女は『少しくらいいいだろう?』と、肩を抱かれそうになったり。
それ以外にも色々色々。
とにかくフォワード邸に暮らす者にとって、クリフォードは『害獣』みたいな存在だった。
次期当主であるサーシャがクリフォードを『いらない』と言った時、皆どれほど嬉しかったか。
だからこそ、この婚約を絶対に解消させねばとフォワード一家だけでなく、フォワード邸使用人一同も団結しているのだ。
ぼんくらはもっと色々色々やらかしてますが割愛(笑)
明日も20:00〜に投稿します。




