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『私は美しいのだから仕方ないじゃないか』とかっこつけるぼんくら王子と姉をこんやくはきさせたいわたし。  作者: 六


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3/4

3

3話目。


しん、と室内が静まった。


「き、機密文書?」

 エルンストがどもりながらサーシャを見ると、彼女はころころと笑いながら言う。

「ああ、クリフォード殿下が取巻きたちと立ててる計画書のことを、そう呼んでらしたの」


「……いやな予感する」

「リオンもそうおもう?」

 リオンの声にニナも呆れながら問い返すと、いやそうな顔でリオンは答えた。

「僕の国で半年くらいだけ流行したんだよ」


 海を隔てた国の上流貴族の三男であるリオンは、自国で数カ月間だけ流行した婚約破棄劇を思い浮かべた。


 始めは落ちぶれた男爵家と平民の富豪との婚約破棄だった。

 歴史と伝統しかない貴族と金しかない富豪が利害が一致したと、子どもたちの気持ちを考えず婚姻を結び、それに反発した子どもたちが婚約式でこの婚約の無効を求めた、そんな話だったと。


 これだけであれば、まだわからない話でもない。

 互いの家を繋ぐ為の生贄に有無を言わさず選ばれた者の反発なのだから、まだ同情と同意の声もあった。

 

 だが一ヶ月もしないうちに、自分が気に食わない婚約相手に冤罪をなすりつけ、相手有責の婚約破棄を行った者が出てから潮目が変わった。

 家格差や経済力の差で、それが認められてしまったのがいけなかったのだろう。


 いつの間にか、貴族間で『気にくわない相手に恥をかかせて婚約破棄をすること』が悪趣味な流行になり、ついには王家主催の宴でそれを行おうとした痴れ者がいるとの密告が王の側近の耳に入り。


 くだらない流行だと静観していた王家も、そんな不敬を働こうと画策されては、流石に黙っていることはなく『気にくわない相手に恥をかかせて婚約破棄』をした者、計画した者にはキツい罰を与えることを宣言し(実際罰を与えられた者も十数名いた)事態は終息した。



「……まさか」

 自国の恥とも言える流行を思い出して顔色を変えたリオンにサーシャは言った。

「クリフォード殿下はね、二ヶ月後の園遊会で、私と婚約破棄宣言をする計画を、立てていらっしゃったわ。

 穴だらけのだけど」 


「サーシャ貴女、どうやってそれを知ったの?」

 アニスに問われたサーシャは肩をすくめて答える。

「だって解読してほしいと殿下付きの書記官から渡された書類が、私との婚約破棄の計画書だったのですもの」


「ば」

 エルンストが音を立てて椅子から立ち上がり、

「ば」

 アニスは摘んでいたマドレーヌを指で潰し、

「ば」

 リオンは頭を抱え、

「ば」

 ニナは椅子に立ち上がり、


「「「「バカだー!!!!」」」」


 四人は異口同音に叫んだ。




 額に手を当てたサーシャも

「ちょっと、だいぶ、周りもおバカだらけになってるのよね」

 呆れ果てたようにこぼした。

「だめポイントが二千くらいにふえた……」

 続くニナの声にも呆れが滲みでている。

「いや待てサーシャ、いくらぼんくらバカタレ王子とは言え側近にはまともな人間が居ただろう?」

 動揺のあまりかぼんくらにバカタレが足されているが、エルンストはそれに気づいてない(気づいた執事は壁を向き笑いを咳払いで、ごまかした)。

「そうだよサーシャ。それなりなのはいたはずだよセンとか」

「セン……マイルズ伯爵家の優秀な三男だったな?リオン」

「はい、センは嫌々ではあっても与えられている仕事はきちんとこなすヤツだよ」

「あら貴方、彼と親しいの?」

「親しいってほどじゃないけど」

 アニスとエルンストに質問され、困ったように応えるリオン。

 それを見てニナは頭の中だけでニマニマ笑う。

『セン・マイルズとは愛読書が一緒で親しくなったのよね、冒険小説の』 


 現在十二歳であるリオンは、少々大人ぶりたいお年頃でもある。

 子どもが熱中する冒険小説を愛読しているとは、気恥ずかしくて大人には言い出しにくいのだろうと、中身十八歳のニナは微笑ましく思った。


「セン・マイルズは側近から外れたわ。

 アイル・オルブライトとダン・ワークスも」

「その二人まで!?」

 アニスの悲鳴のような声に、サーシャも不可解そうに呟いた。

「クリフォード殿下が曲りなりにも、王家の一員だと取り繕えていたのは彼等三人が補佐していたからなのに、三人揃って同時期に側近から外れた。

 お父様、これをどう見ます?」

 サーシャの言葉に、エルンストは溜息と共に言う。

「切り捨て……だな」

「ですわね」

 

 二人の会話に、リオンは顔色を変え椅子から立ち上がる。

「僕、センに手紙を書くよ」

「頼む、リオン」

 足早にティールームから出ようとするリオンを眺めながら、エルンストもアニスとサーシャに向き直り言った。

「私は、皇太子殿下に会いにゆく」

「まあ、通して頂けるかしら」

 首を傾げるサーシャに、エルンストは返す。

「目に分かるような切り捨てだ。

 早いうちに皇太子殿下と『次』について話さねばならん」

「そうね。いってらっしゃい。あなた」

「帰りは遅くなるはずだ。アニス留守を頼む」


 エルンストとリオンがいなくなり、少し静かになったティールームに残った三人は顔を見合わせた。

「どとうのてんかいだった……」

 ニナの四歳児らしからぬ呟きに苦笑しながら、アニスはサーシャに問いかけた。

「私明日慈善バザーの目録のことで王妃様にお会いする予定なのだけど、サーシャ貴女も来る?」

「ええ、是非」

 頷く母と姉を見てニナも手を挙げた。

「はい!わたしも!」

「ニナはおうちで待っていてね」


 中身十八とは言え今の自分の外見は紛れもない幼女なのだ、とニナは苦虫を噛み潰したような気分で

「はぁい」といい子のお返事をした。

明日も20:00〜に投稿します

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