情報戦の失敗
「それにしても相手方はどうやって俺たちの居場所を突き止めたんだ?」俺はつい疑問に思ったことを口に出してしまった。「きっと俺たちと同じやり方だと思うぞ。」そう言って安藤は持っていたスマホを片手で振りつつ、空を指差した。それを見て、俺はかなり納得してしまった。「スマホを使った衛星通信だな!」つい、大声を出して答えを口走った。安藤はそれを頷きで肯定した上でさらに続けた。「あぁ、その通りだ。俺はさっきの植物園に敵対勢力の意見に賛同する人物がいたのではないかと考えている。実際に不審そうな人物は何人かいたしな。そいつが衛星コンステレーションを使い、そこからネットに接続することで俺たちがここにいるということをSNSにアップしたか、ネット掲示板の住人にDMで情報を送って、その内容がすぐに投稿されたと推測している。」俺は安藤の答えを聞いてとても納得してしまった。「まるで敵さんはヒューミントをやっているみたいだ」彼の推測から、俺はそのような意見を漏らしてしまった。
彼は続けて言った。「まぁ、こんな場所だと情報担当との間に命令伝達のタイムラグが発生するのは致し方ないことだ。しかし一方で、敵さんは送られてきた内容をコピペするだけだから、その影響が少なかったんだろう。」
「つまり、組織としての意思決定にかかる時間において、遅れをとってしまったんだな?」俺は話の流れを安藤に確認した。「その通りだ。」そう言って彼は頷いた。
そうこうして過ごしていると、鈴木からテキストで追加の情報が送られてきた。それは投稿者達が動画投稿サイトの排他的な主張をするチャンネルにたびたび肯定的なコメントを残しているというものだった。それを見た俺はそれらの投稿からは自分で考えることを放棄しているという面で、全体主義や国粋主義を連想してしまった。
コンボイは駐車場を出発すると郊外の幹線道路を進んだ。そこまでくると携帯のネット回線は復旧していた。隣にいた安藤がそのことに気づき、ウエストポーチから8インチのタブレットを取り出して、SNSの確認をした。「おい、これはヤバイぞ!」そうやって見せてくれた画面ではネット掲示板での投稿は急速に拡散されていた。その中には、実際に現在地付近で行動に移そうとするアカウントもいくつか散見された。それを見て、俺は彼と同じようにヤバイと感じ、鈴木にも情報を流したほうがいいと考えた。すでに情報および偵察の面での優位性は崩れ去っているように俺の目には写った。何も事件を起こさせたくなかった俺は一筋の望みを託すために安藤に対してこう伝えた。
「うちの情報分析員に共有したい。今からいう連絡先にも送って欲しい。」そう言って彼の電話番号を伝えた。「ああ、分かった。」そういうと、彼は指先を滑らせて俺が伝えた連絡先に転送を行なった。しばらくして鈴木から電話連絡があった。「何かわかったことはあるか?」俺は電話が繋がるとそう開口一番に問いただした。「正規のルートでIPアドレスを管理者に開示させる時間はない。だから過去の投稿をしらみつぶしに調べて特定した。そしたら過激な投稿をしているうちの二つのアカウントは君たちが移動している場所の付近から発信している。さらに四つのアカウントがそっちに向かうことを宣言している!入念に警戒しろ!」その瞬間に俺の希望は打ち砕かれてしまった。襲撃を受けるのはほぼ確実になっていたからだ。やや絶望を感じたが、心の中で自分自身を奮い立たせた。
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次回の投稿予定は9月12日です。




