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世界の変化

身支度をヘルパーと共に整えると家を出た。ヘルパーとはそこで別れると最寄りのバス停に向かった。バスが来ると中ドアからスロープを出してもらって乗車した。公共交通で出勤する途中、この2年間のことを思い返していた。すでに世界は様変わりした。生活に困っていた民衆たちを社会保障費の負担が減るなどと謳った聞こえのいい言葉で煽動した極右政党が国会の議席数を伸ばした。その影響からなのか、障害福祉施設への襲撃は日常化していた。彼らの手法は過激な発言をSNSに投稿することで市民の分断を図り、同一のアイデンティティーを持つ者同士を団結させ、違う価値観の人々に対して攻撃を仕掛けるよう仕向けるというものだった。それは散発的な暴力事件を引き起こした。初期の頃はニュース番組や新聞で大々的に取り上げられていたが、恒常化した現在では飲酒運転件数の前後でしか映らなくなっていた。ついこの間も死傷者が十人を超える事件が起きたが、世間の反応は冷ややかなものだった。俺は事件が起き出した初期の頃にロビイストとして左派系団体から依頼を受けて、広告を作成したり、国会議員に対しての説明会を行ったりしたが、どれも期待した成果を上げることはできなかった。唯一の成功事例は相次ぐ襲撃に対して恐怖と危機感を抱いた俺や一部の団体が最後の手段として共同で提出するのを手伝った、弱者の武器の所持の合法化を成立させた事のみだった。その時の状況のままでは襲撃に対しての対抗手段は皆無だったからだ。今ではSNSの検索で車いすと入力するとそこにほのぼのとした投稿は一切無く罵詈雑言で溢れかえっている有様だ。そういえば警察も日々発生する事件に対して、手が回っていないとの情報が一年前の週刊誌にリークされていた記憶がある。そこまで思い返したところで、バスは鉄道駅に到着した。ちょうど乗り換えのタイミングだったため、思考を一旦切り替えると再びスロープを出してもらって下車をした。運転手にICカードを渡して運賃を支払った後礼を告げ、改札に向かった。今日もバスの車内や入場するときに嫌な視線を何度も感じたが、それだけなら可愛いものだった。実際に危害が加えられたわけではないからだ。電車に乗ると再び思考を巡らせた。襲撃事件が頻発するようになったため、少数与党の内閣は銃刀法を改正して、社会的弱者やその支援者、さらに認可を受けた一部の警護会社が銃を持てるようにした。それから一年が経つものの、日々、街中を歩く障害当事者の中で自衛のために所持する割合は増加の一途を辿っていた。俺自身も身の危険を感じるようになっていたため、護身用に半年前に購入していた。その時に選んだのはルガーのLCPだった。それからも何度か暴漢に絡まれたが、銃の所持が分かると退散していった。昔は、日々襲われることに恐怖しながら外出するなどとは夢にも思わなかったが、それは現実になってしまっていた。そんなことを回想していると目的地に到着した。そこは遠くから見ると、駐車場が広いだけの一軒家だった。慣れ親しんだ見た目で俺は安心した。


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次回の投稿予定はp90の口径と同じ5月7日です。

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