エスコート中の告白
やや甘めの話となります。ご注意ください。
二時間ほど経つとお開きになり、各々が帰路に就き始めた。帰り際になって、小林を駅まで送っていくことになった。繁華街を抜けて大通りに出ると、車道にはまだ車が流れていたため、自然と車道側についた。それが男としてのマナーだと考えたからだ。その行動を見た彼女は冗談まじりにこうからかった。「あらー笑、急に彼氏ヅラしてどうしちゃったのよー」「そんなつもりは毛頭もありません。強いて言うなら感情を吐き出させてくれたお礼です。」チェイサーを飲んでいたおかげで酔いが覚めていた俺は周囲を警戒しつつ、そう答えた。大きな交差点に差し掛かった時、青信号が点滅し始めたため、車椅子を緩やかに減速させて立ち止まった。無言で待っていると車道側にじんわりと力がかかっているのを感じた。その方向に目をやると、桃香さんが車椅子の取っ手を掴んでやや体重をかけるように寄りかかっていた。その目はこちらを見つめていた。それは俺にとって肩を寄せられていることと同義だったが、不思議と嫌な気はせずに見つめ合ったままの状態が数秒ほど続いた。彼女は口を開いた。「ねぇ、食事介助を始める前、私の事女として意識したでしょう?私、そういう目で見られるのは久しぶりだったから今もすごくドキドキしているんだ。私、浩也くんの事が好きかも」「げっ。バレてましたかー。見惚れてしまったのは事実ですし、俺も桃香さんのことが気になっていました。しかし桃香さんまでドキドキしているなんて意外です!」やや動揺しつつも相手の気持ちを受け止めた。彼女はさらに続けた。「今までは仕事ばかりでしばらく恋人とかいなかったから。こう見えて、恋愛に関しては一途なのよ」
そんなふうに互いの気持ちを確かめ合うような話をしていた時、背後でシャッター音が聞こえた。振り返るとそこには大学生くらいの女子三人がスマホの画面を見つつ、こちらをチラチラ見ながら談笑していた。その会話内容は俺たちを馬鹿にする内容だった。
「あの二人って恋人同士なのかな、一人は車椅子だよ。マジエグすぎ笑、夜の営みとかどうするんだろうねー」「まじそれな笑私だったら無理」「そんな人と恋愛するとか、私は信じられない。稼ぎが殆どない男とか社会のお荷物じゃん!」「ほんとそれ。税金で生活している身分なのにね。」それを聞いた俺たちは思考がフリーズしてしまった。普段の俺なら耐え忍ぶところだったが、今回はツレがいた。彼女を守るためにあえてどすの利いた声を発した。「おい、今なんて言った。面と向かってもう一回言ってみろ!」そう声を荒げると彼女らは不貞腐れて押し黙った。その豹変ぶりに桃香は驚いていたが、宥めるように声をかけてくれた。「もういいよ、別に彼女たちは物事を深く考えているわけじゃないんだから。」信号は青に変わっていた。車椅子を反転させると怒りに身を任せていつもより操作レバーを強く押して操縦していた。「ねぇ、ちょっと待って!」そう桃香から声を掛けられるまで、ペースを上げていたことには気づかなかった。速度を彼女の歩く速さに合わせると、「置いていってごめん」そう謝った。「ほんとだよー。次からは気をつけてね。」怒っていることをジェスチャーで示しつつも口調自体は茶化しているような言い方だった。それからは二人とも無言で駅まで歩いた。改札を通ると乗り場が別だったので、そこで別れた。
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次回の投稿予定は7月5日です。




