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文学少年の恋物語 〜令和版源氏物語〜  作者: AYASAM
1年生2学期
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自分磨きその4 変化の入り口

 9月25日の日曜日。昼。

スマホが短く震え、画面を見ると栄子からの通知だった。


「昨日、綾子連れてLUCUA回ってきた」


早速、中虫壁さんの外見改善に動いてくれたようだ。


「お疲れ。どうだった?」


そう送ると、すぐ既読がつく。


「素材は悪くない。骨格もスタイルも平均以上。伸びしろある」

「ざっくりでいいけど、変える余地がありそうなポイントはどこ?」

「姿勢、服選び、髪。それからーー」


矢継ぎ早に飛んでくる項目に、思わず苦笑する。


「多いな」


「基本だから」


どうやら中虫壁さんはみっちり教えられたようだ。

栄子には負担をかけたかもしれない。


「かなり疲れた」

「それは悪かったな」

「報酬の件、忘れてないでしょうね」


来たか。俺は確認のために長文を送る。


「負けヒロインを救いたい 6巻

ワープゲート部、今日も異星で活動中! 1〜3巻

ネオン都市の亡霊 上下」


前回の中虫壁さんを紹介した後で、本の欲しいものリストを送られてきていた。


「よろしい」


シロクマが腕を組んで頷くスタンプが返ってきた。


「要求が多い気もするが……」

「4時間半」

「えっと?」


急に送られてきたメッセージに困惑する。


「昨日のコンサル時間」

「結構かかったな」


仮に時給1000円としたら4500円。本の代金は妥当な範囲かもしれない。


「素人をプロデュースするのは楽じゃないの」


妙に説得力がある。

栄子は基本あっさりしているが、興味のあることには本気になるタイプだ。

今回はどうやら本気でやってくれたらしい。


「中虫壁さん、変わりそう?」

「変わると思う。本人がその気だから」


その一文を見て、胸の奥が少し軽くなる。

中虫壁さんは、出会った当初は不器用そうに見えたが、実際はそうじゃない。

導く人がいれば確実に伸びるだろう。


そんなことを考えていると、さらに通知が来た。


「それで和人」

「ん?」


少し間が空いてから、短いメッセージ。


「あんたはどうなの?」

「……俺?」

「人には外見改善進めるのに自分はやらないの?」


そう言われて考える。

俺は別に、不潔ではないと思う。

毎日風呂に入るし、朝は走っている。体型管理もしている。

寝癖も直すし、制服もちゃんと着ている。髪だって最低限整えているつもりだ。


けれどふと、二人の顔が浮かぶ。


ライトと奏。


彼らは北高校にとどまらず、全国で通用するイケメンだ。

ライトは陽キャ寄りの華やかさで、奏はクール系。

タイプは反対だが、どちらも圧倒的に見られる側の人間だ。

並んで歩いているとき、女子のざわつきが結構気になる。

服装も自然に整っていて、雰囲気そのものに清潔感がある。


……それに比べて自分はどうだ。


不快ではないと思いたい。

魅力的かと言われれば十中八九違うだろう。


俺はスマホを見下ろしたまま、小さく息を吐いた。


「何からやればいいのか」


すぐ既読がつく。


「まずは基本から。このチャンネルとか多分参考になる」

「Kenji@垢抜け教室」

「美容系YouTuber?」

「そう。初心者向けで、一通り解説してる」


続けて、容赦ない追撃。


「和人、たまに寝癖ついてるときあるし。あとヒゲの剃り残し」


気をつけてはいるが、見落とすこともときどきある。


「眉も整えてないでしょ」


眉か。それはあまり意識したことないな。


「スマホ、筆記用具、カバン。持ち物もダメ」

「え……」


そんなところまで見られていたとは。一応ファッションだから外見には含まれるのか。


「基礎くらい自分で勉強してから来て」


俺は決意して、送られてきたチャンネルを開いた。


「高校生がやりがちなダサ服5選」

「清潔感がない男子の特徴」

「そのパーカー、実は危険です」


サムネイルが刺さる。


「……なんか怖くなってきた」

「これが現実」

「マジかよ……」


動画を再生すると、知らない単語が次々飛び込んでくる。


サイズ感。

シルエット。

レイヤード。

骨格。

清潔感。


……思ったより、世界が広い。


気づけば俺は、完全に動画へ見入っていた。


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