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文学少年の恋物語 〜令和版源氏物語〜  作者: AYASAM
1年生2学期
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文化祭準備 その2

 9月下旬。教室にて。今日も今日とて文化祭の話し合いが始まった。


「それでは、クラスの出し物について、まずは近くの人と話し合ってください」


委員長の望月さんの指示を受け、隣の方を向くと東條さんと目が合った。


「出し物、何がいいかな?」 

「喫茶店とかどうかな?」


俺は問いかけるように答えた。


「無難だね。まあ文化祭って言ったらやっぱり喫茶店が一番イメージしやすいよね」


東條さんは納得している様子だ。文化祭の出し物といえば喫茶店という偏見は、テンプレートといっても齟齬はないみたいだ。


「東条さんは何かやりたいものはある?」

「うーん……お化け屋敷かな」


出ましたお化け屋敷。文化祭定番の出し物だ。


「いいね。メイクして人を驚かすのは面白そう」

「そうそう、本格的なメイクして驚かすの!」

「うん」


本格お化けメイクか。少し手間がかかりそうではあるが、やってみるのもいいかもしれない。

それにしても女子ってホラー好きの人が一定数いるよな。

東条さんは十中八九好きな部類だろうな。すごいはりきってるし。


「時間です。それでは意見のある人は挙手をお願いします」


 ざわざわと話が盛り上がっているところ、委員長が声を大にして言った。

委員長の声はよく通るので、すぐに騒ぎが止む。そして、その代わりにちらほらと手が上がっていく。


「はい」


廊下側の後ろの席の彼が返事をした。


「喫茶店がいいと思います」


委員長が目配せすると、書記の人が『喫茶店』と丁寧な文字で板書した。周りの反応はそれなりにあるようだ。


「それじゃあ他に案のある人……」


喫茶店を始めとして様々な案が上がった。

縁日、カジノ、脱出ゲーム、占い、お化け屋敷、クイズ大会、ダンス、演劇……。


「それでは出し物を絞るために、多数決を取ります。希望するものに一人一回挙手してください」


望月さんはちゃんと指示が通ったか、周りを見渡す。


「それでは喫茶店をやりたい人、挙手をお願いします」


俺は最初に案の出た喫茶店に手を上げた。文化祭は喫茶店が安定だ。周りを見ると、三分の一くらいが手を挙げていた。

書記が黒板に、挙手した人の数を『喫茶店』の文字の下に書いた。


「では次に、縁日をやりたい人」


喫茶店の次に出た縁日は喫茶店と同様、三分の一ほどが挙手していた。おそらく縁日との再戦になりそうだ。


***


 カジノ、脱出ゲーム……そして最後に演劇の票を取った。


「喫茶店と縁日の票が同数なので、もう一度多数決を取ります」


周りがざわついている。皆もどちらにするか迷っているようだ。


「それでは喫茶店をやりたい人、挙手をしてください」


見た感じ、半数が手を上げているようだ。委員長が票を数えると、過半数が手を挙げていることが分かった。


「ということで、出し物は喫茶店に決まりました」


委員長がそう言うと、「盛り上がっていこー!」「楽しもうぜ!」などという歓喜とともに拍手が沸き起こった。

そこまで決まったところで、先生が前日同様、教卓の前に戻った。


「望月さん、上原さんありがとう。席に戻って」


先生は二人が席に戻るのを見届けて、俺たちクラス全体に向かった。


「出し物は喫茶店に決まったけど、具体的な内容についてはまた次の時間に決めましょう。それじゃあ、今日の話し合いはここまで」


そう言ったタイミングで、ちょうどよく授業終了のチャイムが鳴った。


***


 放課後、俺は琴吹さんとともに部室に向かった。


「こんにちは」

「あ、こんにちは」


栄子と霞先輩は既に部室に来ていた。


「先輩、何読んでるんですか?」


机に置かれている冊子に目が留まったので、俺はそれを聞いた。


「去年発行した部誌よ」


そう言って、俺に表紙を見せる。


『花鳥風月 ーー第九十九代文芸部ーー』


右上に縦書きで大きく『花鳥風月』とあり、その左隣に小さく『ーー第九十九代文芸部ーー』という文字が添えてある。

真ん中に着物の女の人がいて、お椀の形に広げた手の中に、桜の花びらが一枚落ちていく。

その女の人の左側には大きな桜の木が立っていて、今まさに満開といった感じ。風が吹いていて、花びらが舞い上がる様子が豪華絢爛に描かれている。


「この表紙の絵は誰が描いたんですかね。まさか先輩が?」

「いいえ。漫画研究会の人に頼んで描いてもらったのよ」

「はー、そうなんですか。物凄く上手いですね」

「そうね。かなり好評だったわ」


この表紙の絵は本当に精巧だ。着物の女は勿論のこと、桜の木の花びら一枚一枚が鮮明だ。こんな風光明媚な絵が表紙を飾っていたら、購入したくなるのもうなずける。


「今年もその漫画研究会に頼むんですか?」

「そうなるわね」

「ちなみにこの絵って有志ですか? それとも依頼料払ってますか?」

「ありがたいことに有志で毎年やってくれてるわね」

「なんと。すごいですね」


普通に金を出して依頼したくなるレベルなのだが、無料だなんて、いかにコネが重要であるかがわかるな。間接的に文芸部の先輩たちが優秀だったことの表れではないか。部誌販売が楽しみになってきた。


全部見終わったらしく、先輩は部誌を閉じた。


「じゃあ、部活を始めましょう」

「今日は先生来ないんですかね?」

「忙しいみたいよ」


生徒は勿論だが、先生達も結構忙しいのだろう。俺は頷いた。


「学校と地域に関するレポートについてなのだけれど、先生の言っていた通り、学校担当班と地域担当班で分かれる必要があるわ」


メンバーは四人いるからちょうどニ人ずつに分かれることになる。どのようにして振り分けるのだろうか。


「どちらをやりたいか、希望があれば言って頂戴」


先輩はそう言って、俺たちの要望を受け付けた。

立候補。特にどちらか一方をやりたいわけでもないので、俺は黙っていた。


「じゃあ私、地域について調べます」


琴吹さんが言った。彼女の意欲的な姿勢は誰しも学ぶべきところである。

栄子はどうなのだろうと顔を向けるが、特に要望が無い様子だ。俺たちは先輩の方を見た。


「わかったわ。ほかの二人は特に希望はない? ……なら、琴吹さんは地域班として、二人は適当に指定してもいいかしら?」


特に異論はないので、すぐさま首肯した。栄子も同意見のようで、首肯した。


「じゃあ、篠原さんには地域担当班をお願いするわ。古暮くんは私と同じ学校担当班でいいわね?」

「「はい」」


ふと返事をして思ったが、俺と先輩、琴吹さんと栄子をくっつけたのは、しっかり者(先輩と琴吹さん)と凡人(俺や栄子)をペアにすることで、慌てふためくのを避ける意図があったのではなかろうか。うまいやり方だと感心した。


「じゃあ、学校・地域ごとのおおまかな調査内容の役割分担も決めてしまいましょうか。地域班は歴史および産業についてだったわね。二人で話し合って、どちらが何を調査するか決めてください」


先輩は琴吹さんらにそう言って、俺の方を向いた。


「学校班は大別して、歴史、それから伝統・文化の二つがあるけど、あなたはどっちを調べたい?」

「とくに希望はないですけど、先輩はどっちがいいとかあります?」


すると先輩は「私はどちらでもいいから、好きな方を譲るわ」と言った。

あくまで俺の要望を聞き入れようとしてくれているようだ。なので俺はしばしの間、どちらが調査の難易度が低いのか考えることにした。


歴史は八十年以上と長いし、伝統・文化も独特なものが多くあるし……。


少しの間考えていたが、どちらが大変なのか全然わからない。結局、どちらでもいいという結論に至る。そして、


「じゃあ俺は伝統・文化の方をやります」


何となく伝統・文化の方を選んだ。すると先輩は頷いて、「なら私は歴史ね」と応えた。


「そちらは決まったかしら?」


先輩が二人の方を向いて聞くと、彼女らは「はい」と返事をした。俺たちより早く決まっていたみたいだ。


「私は地域の歴史について、篠原さんは地域の産業について調べます」

「そう。詳しい調査内容は、特に縛りはないから、自由に決めてもらって構わないわ」

「はい」

「次回の部活から、調査の進捗具合を毎回報告してもらいます。わからないことや困ったことがあったら、いつでも相談してください」

「わかりました」

「それじゃあ、今日はここまでにしましょう」


先輩がそう言うなり、解散となった。

学校の文化について調べることになった。この学校、結構変わった伝統や文化があるみたいから、まとめるのが大変そうだ。これからますます忙しくなるな。

それにしても、霞先輩はなんだか手慣れている様子だった。おそらく去年も、内容は違うかもしれないけれど似たようなことをやったのだろう。先輩の足を引っ張らないように頑張らなくては。


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