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文学少年の恋物語 〜令和版源氏物語〜  作者: AYASAM
1年生2学期
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98/117

夏の自由研究その10 前期末考査結果確認

 9月23日の金曜日。

今日は祝日で学校はない。そのため俺は自由研究のメンバーを再び駅前のファミレスに呼び出した。

万和人も日代さんも部活は午前に終えてきたとのこと。ちなみに俺は完全オフである。


一週間にわたる試験も無事終わり、今週中にテスト返却も完了している。

店内は祝日ということもあり、以前よりも賑わっていた。


俺はドリンクバーを取り終え、席に戻る。自然と前回と同じ並びになった。


「なんか、やっと終わったって感じするわ」


万和人がストローをくわえながら言う。


「分かるよ」


俺も苦笑混じりに頷いた。

試験期間中は常に何かに追われていた感覚がある。


「じゃあ、結果確認からしようか」


日代さんがそう切り出した。

自由研究において、今回の期末考査で検証を行った。

改善した学習方法が、実際にどう結果へ影響したのか。


俺たちはそれぞれスマホを机に広げていく。


「じゃあ俺からいいか」


万和人が先に口を開いた。


「どうぞ」


俺が促すと、万和人は学校のアプリの『前期末考査結果一覧表』を見せてくる。


「数学は前回より22点上がった」

「おお」「すごい」


思わず声が漏れる。日代さんも目を丸くした。


「自分でもびっくりだ」


万和人は少し照れたように笑う。


「特に後半かな。動画見たあとにAIを使って問題解きまくったのがデカかった」


やっぱりそこか。存分に活用できたようで良かった。


「俺って結局、授業でも動画でもそうなんだけど、理解した気になって復習が疎かになってたんだよな」

「アウトプット不足だね?」


日代さんが整理するように言う。


「そそ。だから、今回はちゃんと復習したことでこれだけ点数が上がったんだと思う」


当たり前の話かもしれない。でも、その当たり前を継続するのは意外に難しいことでもある。


「おそらくだけど、参考書のみ使ってだとこの点数はいかなくて、AI使ったからこそ取れたんだと思うんだ。

間違いがすぐ分かるし、何回も数値変えてトライできるし」


万和人はスマホを操作し、例のアプリ画面を見せる。


「これの理解度表示、めっちゃ便利だった」


以前よりも、勉強に対して前向きな声色だった。


「環境を変えたことも点数に効いてそう?」


俺が聞くと、万和人は頷く。


「もちろんそれもある。家より外の方が断然集中できたからな」


夏休み前の頃と比べて、彼の積極性は確実に増えた。

俺だけじゃなくて、きっと日代さんも感じていることだろう。

その変化を思うと、感慨深いものがある。


「じゃあ次、私」

「うん」


彼女は答案を揃えながら口を開く。


「私は全体的に安定して上がった感じ」


スマホで点数の表を見せてもらうと、確かに点数のばらつきが小さい。

極端に低い科目がなく、全体的に優秀といった感じだ。


「時間管理は上手くいった?」

「うん」


日代さんは少し考えるように視線を落とした。


「区切りの合図を決めたの、かなり良かった」

「タイマーのやつ?」

「うん。鳴ったら一回立つって決めたら、ダラダラ続けにくくなった」


なるほど。やはり行動ベースの切り替えは有効らしい。


「あと、完璧にやろうとしすぎなくなったかも」


その言葉に、俺は少しだけ安心する。

以前の彼女は、細かい部分まで詰め込みすぎる傾向があった。

時には中途半端なところで止めて休憩することで、思考が整理されて、次の行動が洗練される。

急がば回れではないが、休んだ方が効率が上がることも少なからずあるだろう。


「手抜きのコツは掴めた?」


万和人が言うと、日代さんは苦笑した。


「うん。櫻井くんには負けるけどね」


でも、その表情は以前より柔らかかった。


「最後、俺か」


二人の視線がこちらへ向く。


「俺は……そこまで大きくは変わってない」


そう言いながら答案を見せる。文系は点数を維持することができた。

一方で理系はわずかに伸びはしたものの、目標には達しなかった。


「理系教科は微増かな」


俺の報告に、日代さんが「そっか」と頷いて続ける。


「優先順位を整理したんだよね?」

「うん。それにツールの使い分けもしっかり見直したよ」


ざっくりじゃなくて精密に。

効率を上げることをかなり意識した。


「よくやるよな」


万和人が感心したように頷く。

少し間を空け、俺は口を開く。


「結論としては」


 二人がこちらを見る。


「全員、異なるアプローチ方法で成績が上がった」


万和人はアウトプット。

日代さんは時間管理。

俺は最適化。


「人によって合うやり方が違うから、試行錯誤していくしかないって感じだね」


今回、一番実感したのはそこだった。


「確かに」


日代さんが静かに頷く。


「万人向けの正解は案外ないのかも」

「そうだね。傾向としてはあるかもしれないけど、個人に合うかは試さないとわからない」


万和人の言葉に、俺は大きく頷く。

前よりちゃんと研究っぽくなってきている気がする。

ドリンクの氷が小さく鳴った。


「そういや」


万和人が少し姿勢を起こす。


「そろそろ、まとめ始めないとだよな」

「うん」


俺は思わず天井を見た。今は9月下旬、提出締め切りまで余裕はない。


「10月入ったら、私は多分忙しくなる」


日代さんが言う。


「ああ、文化祭実行委員だよね?」

「そう」


万和人の問いに、日代さんが軽く首肯する。


「俺も文芸部があるから忙しいんだよな……」


正直なところ、研究に割ける時間は減ってしまう。

すると、万和人が微笑んで口を開く。


「なら、まとめ作業は俺がやろうか?」


一瞬、俺は言葉を失った。


「二人とも忙しくなるだろうし」


あまり気負った感じではない。でも、自然に出た言葉に聞こえた。

日代さんが一瞬目を丸くして応える。


「え、めっちゃ助かる!」

「まあ、俺暇だしさ」


万和人はふっと照れ隠しみたいに笑う。


「前半遅れた分、後半で取り返さないとな」


その言葉を聞きながら、俺は思考する。

夏休みの頃、一番乗り気じゃなさそうだったのは、間違いなく万和人だった。

けれど今は、自分から前へ出ようとしている。

きっかけはわからないけれど、彼が前向きになったことは良いことだ。


「じゃあ、10月からはまとめフェーズだね」


日代さんがそう言って、小さく笑った。

文化祭まで、あと少し。

俺たちはそれぞれのドリンクを飲み干して、店をあとにした。

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