表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
文学少年の恋物語 〜令和版源氏物語〜  作者: AYASAM
1年生2学期
PR
97/117

自分磨きその3 小さな変化

 9月22日の木曜日。放課後。

部活を終え、帰宅した俺は、自室の机に鞄を置いて軽く息を吐いた。

今週は試験返却が続いていたこともあり、妙に疲労感がある。


スマホを机に置いたところで、通知音が鳴った。画面を見る。


「古暮くん!」


勢いのあるLINEだった。

送り主は中虫壁さん。


俺は少しだけ口元を緩める。


「どうしたの?」


返信すると、すぐにメッセージが返ってきた。


「テスト全部返ってきたよ」


その一文のあと、点数表の画像が送られてくる。

俺は画面を開いて確認した。

前期中間ではすべて平均点付近だったが、今回は全教科が平均点より少し上に来ていた。

英語は一番伸びている。そして、難点だった数学も点数が引き上げられてていた。

客観的に見れば、まだ普通のレベルといえるが、アドバイスの効果が出ていると感じる。


「結構上がってるね」


そう送ると、


「うん」


と即答で返ってきた。


「自分でもびっくりしてる」


その文面から、素直な喜びが伝わってくる。

俺はスマホを見ながら、小さく息を吐いた。


「特に英語が伸びたね」

「単語をちゃんと繰り返したのが良かったかも」


やはりそこか。

以前の彼女は、なんとなく眺めるだけで終わっている部分が多かった。

今回は、短い時間でも反復する形に変えた。

それが結果に繋がったのだろう。


「数学も前よりできた気がする」

「基礎を優先したのが良かったんじゃない?」

「かも」


数秒後。


「なんかさ」


少し間を空けて、新しいメッセージが送られてくる。


「ちょっと前まで、自分は要領が悪いんだって思ってけど」


俺は無言で画面を見る。


「それは間違ってて」


その言葉は、以前の彼女からはあまり出てこなかった種類のものだった。


出会った頃の中虫壁さんは、どこか諦めが強かった。

自分を変えたいとは言っていたが、その一方で、「どうせ自分なんて」という空気も纏っていた気がする。

けれど今は違う。

結果はまだ途中段階だ。

それでも、自分次第で変われる部分があると、少しずつ実感し始めている。


「自分じゃなくて道具の問題だったんだね」


その一文を見て、俺は少しだけ目を細めた。


自由研究を始めてから、俺たちは色々な方法を試してきた。

少なくとも、やり方次第で結果が変わることは間違いないらしい。


「まだまだ改善できるところはあると思うよ」


俺がそう返すと、「うん」と返ってくる。

もちろん、今回だけで全部が決まるわけじゃない。

勉強法にも相性があるし、これからも調整は必要だと思う。


「これからはもっと頑張る!」


その言葉に、俺は安心と期待を覚える。

点数以上に、その意欲の方が大事なのかもしれない。


「その意気だ」


短く返す。すると、中虫壁さんからさらにメッセージが届いた。


「次はもっと上の順位を狙いたい」


俺は思わず苦笑した。

少し前まで「どうせ無理」が口癖だった人とは思えない。


「君ならできるよ」

「うん」


その返答は妙に素直だった。


俺はスマホを置き、椅子にもたれかかる。

誰かが前向きになっていくのを見るのは、悪くない。

少なくとも、中虫壁さんは一歩前へ進み始めている。

それだけでも、今回の試行錯誤には意味があったのかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ