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文学少年の恋物語 〜令和版源氏物語〜  作者: AYASAM
1年生2学期
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80/117

古暮兄妹の遠出 ポートタワー編 パート4

「それでは次のステージに参りましょう! 『桜の花びら集めましょう お花見探索!』」


 Mr.ハセガワがそう宣言すると、スタッフがステージに上がって仕切りの壁を取っ払った。

明里と目が合うのも束の間、解答用のアイパッドが回収され、ルール説明がなされる。


「道の駅の敷地内にQRコードを設置しました。

コードを読み取ってクイズに正解すると、桜の花びらを1枚ゲットできます。花びらを五枚集めた時点でクリアとなります。制限時間は30分です。


クイズを間違えるとペナルティで制限時間が1分減り、別の問題が自動的に表示されます。また、クイズを表示している状態で10メートル離れると、ペナルティで制限時間が1分減ります。30秒経過するごとにペナルティで1分短縮されますので、要注意です!


ステージをクリアすると30ポイントゲットできます。それに加えて、クリアした順位に応じ、1位:20P、2位:15P:3位:10P、4位:5Pをゲットできます」


なるほど。バラエティのクイズ番組なんかでよくある企画だ。

クイズ面で貢献できなさそうなら体力面で貢献すれば良い。分業というチーム戦ならではの戦略が取れる。

俺はというとクイズにも体力にもそれなりに自信があるため、活躍できる場面は多そうだ。


「今からペア一組につき一台アイパッドを配ります。アプリのログイン画面が表示されていますので、二人の名前、○○&XXと入力してログインしてください」


俺はスタッフからアイパッドを受け取る。どうやらペアごとに一台らしい。

明里と一緒に画面を見る。アプリの中央に名前の入力欄があるので、かずと&あかりと入力し決定を押す。

すると画面が切り替わり、道の駅内のマップが表示される。

画面の下の方にソシャゲーお決まりの操作バーがあり、左から順に[チャット][メモ][カメラ][ルール]とタブが並んでいた。


「アプリの下にバーがあります。

チャットは連絡用です。通知やトラブルの際に使用します。

QRコードはカメラのボタンを押して読み取ってください。

また、残り時間はマップの右上の方に表示されます」


画面右上を見ると、『残り30:00』とタイマーが表示されている。おそらくスタート時に起動するのだろう。


「それでは初めに例題です。こちらのQRコードを読み取ってください」


Mr.ハセガワが大きなホワイトボードを掲げ、俺たち参加者に見せる。

俺はカメラのタブをタップしてカメラを起動し、QRコードを読み取る。

すると、クイズが表示された。


Q.ここの住所は何市何町? (番地以下は問わない)


「皆さんクイズが表示されましたか?」


Mr.ハセガワが参加者全員を見回す。皆頷いているので問題はないようだ。


「それではひらがなでクイズにお答えください」


合図を受け、愛野市(あいのし)美海栄町(びみさかえちょう)と答える。すると画面に〇が表示されピンポンと効果音が鳴った。


「皆さん正解できましたかね? 注意ですが、クイズは基本的にひらがなか半角数字でお答えください。それ以外で解答した場合、文字が認識されず不正解となります」


なるほど。おそらくアプリを設計した際、正否の判断を容易にするため、文字の種類を限定したということだろう。


「これは例題ですので間違えたとしても何も起きませんが、次からはペナルティが発生します。残り時間が無くなった場合は失格になりますのでご注意を」


各ペアが頷くなり返事するなりして理解の意を示す。


「皆さんの現在地とクイズの進捗状況はモニターしています。アイパッドが故障したなど連絡が取れなくなった場合は、会場に戻ってきてください。予備のアイパッドをお渡しします」


Mr.ハセガワがそう言って微笑みかける。アイパッドの予備があるとは用意周到だ。

思い返してみると、2ndステージまでは一人一台に配られたわけだから、少なくとも10台は用意しているということになる。結構お金がかかっているだろう。


「それともう一つ。皆さんにはイベント参加者である印として、この帽子をかぶってもらいます」


スタッフが参加者全員にキャップを配る。つば付きの橙色で、道の駅のロゴが生地の前側についている。


「これがあれば道の駅内の従業員は皆親切にしてくれるでしょう。ただし、関係者以外立ち入り禁止の場所に入らないことと、他のお客様の迷惑にならないよう行動することを守っていただくようお願いします」


何度も開催されているイベントなのだろう。参加者の行動も、ある程度予測済みというわけだ.。あらかじめ釘を刺すことで、手荒なことはしないよう防止できるわけだ。


「最後に重要なことを一つ。QRコードの場所ですが、このエアリオンリスタと隣のエアリオンプラザの中には設置していません」


重要な情報だな。探索エリアが二か所減ったことで、探索がやりやすくなった。


「説明は以上です。それでは皆さん、準備はいいですか?」


Mr.ハセガワが参加者全員に呼びかける。皆、やる気に満ちた表情をしている。


「ラストステージ『お花見探索』スタートです!」


開始宣言により、俺たち参加者はステージから飛び出した。

リスタ内にはQRコードはないため、一目散に出口へ急ぐ。


俺たちはポートタワーの中に入り、アプリを開く。

マップの上に重なったタイマーが動作しているのを一瞥し、マップに視線を戻す。


道の駅エアリオンの敷地は、横に広い長方形だ。

ちょうど中心の位置にエアリオンリスタがあり、他の施設がそれを取り囲んでいる。

主要の施設・建物は四か所。北西、北東、南西、南東の斜め四方に配置されている。


北西は広場、北東にはエアリオンプラザがある。

南西にはポートタワー、南東は駐車場・埠頭(釣り場)がある。


エアリオンプラザにQRコードはないとMr.ハセガワは言っていたので、他の三か所を回る必要があるわけだが、どこへいこうか。とりあえずありそうな場所にアテを付けてみるか。


「明里がイベント主催側ならどこに隠す?」


マップを見ながら聞くと、明里は少しの間を置いて応える。


「展望台と結び岩のそばには隠します」

「同感だな。じゃあひとまずは展望台に向かうか」


明里が頷いたので、エレベーターへと向かう。

わき目も降らずエレベーターの前に着くと、ちょうどドアが開いて中から人が出てきた。俺たちは邪魔にならないよう壁際で待機し、出る人がいなくなったところですかさず乗り込む。

後ろから人が乗り込んできたので奥に進む。今度は貸し切りではなく、沢山の人が乗り込んでいる。


俺は明里と肩が触れるほどの距離で思考を巡らせる。


展望台に隠すならどこが良いか。望遠鏡、望遠マップ。あるいはカップルベンチの近くだろうか。

イベント開催で客の出入りが制限されないということは、客がQRコードを損壊しないような工夫がされているはずだ。例えば何かで頑丈に固定してある、または誰かが監視している。まさかとは思うがQRコードを誰かが持って移動しているなんてことはないだろうな。


そういえばMr.ハセガワは、帽子をかぶっていれば従業員が親切にしてくれると言っていた。もしかしたらQRコードの場所、もしくは場所のヒントをくれるかもしれない。

それらしき人を見かけたら、積極的に話しかけてみることにしよう。


立ち回りについても考えておこう。考えられるのは二つのパターンだ。


パターンA:二人一緒に行動する

パターンB:会う時間を決めてばらばらに行動する


それぞれにメリット、デメリットがあるだろう。

パターンAは見落とす可能性が低いが、複数の場所を回れない。探索速度は遅いが着実に進んでいく慎重派スタイルだ。

パターンBは沢山の場所を回れるが、時間を決めるのが難しい。探索速度は速いが不確実性のある積極派スタイルだ。


俺たちが最終的にトップになるためには、着実にステージをクリアする必要がある。

1位タイであるたいし&かんなペアは強敵であるため、おそらくクリアしてくるだろう。

大事なのは彼らよりも早くクリアしなければならないということだ。各ペアの達成率やクリア時間などが通知されればよいのだが、それについては説明がなかった。


チャットで各ペアの進捗が通知されるのかを聞いてみる。

するとすぐに返事が返ってきた。

通知はなく、「終わってからのお楽しみ」とのことらしい。


そうなると周りの状況を見て戦略を変えるという手は使えなくなった。

となれば最初から積極的に探索していく戦略を取るしかない。目指すのはトップのみだからだ。

パターンBの積極派スタイルで攻めることにする。


二人ばらばらに行動するとなると、体力的に考えて俺が沢山の場所を回る方が良い。

明里には一つの場所を任せるのが良いだろう。


一番探索に時間がかかるのはポートタワーだ。二階まであり、多種多少な店が混在しているからだ。ここは確実に探す必要があり、長い時間をかけなければならない。

明里にはポートタワーを担当してもらうのが良い。

そして残りの二か所、広場と駐車場・埠頭は俺が回る。これで行くか。


集合場所をポートタワーとするなら、アイパッドは俺が持つのが良いだろう。

もし明里に持たせる場合、俺がQRコードを他の場所で見つけてもすぐに読み取れず、アイパッドを借りに戻らなくてはならない。これでは効率が悪いだろう。

そして待ち合わせの時間も正確に測る必要がある。俺がアイパッドを持っていれば残り時間でカウントできる。建物内には大きな掛け時計があるため、明里はアイパッドがなくても時間を測ることができる。


あとは時間配分だ。制限時間は30分と思いのほか短い。

明里と情報共有する回数はできるだけ少ない方がよいだろう。

展望台の探索に6分使うと考え、残りの24分を三分割して、各スポットにつき8分の探索時間を充てるというのはどうか。

明里と合流するのは、残り8分になったとき。待ち合わせ場所は東出入口。そこで進捗とQRコードの場所を共有するのが良いだろう。


そこまで考えたことを今一度整理する。もうすぐ展望台に着くので、明里へ説明するのは帰りのエレベーターで良いだろう。ひとまず戦略の要点と、展望台での探索時間を6分程度で済ませなければいけない旨を伝えるにとどめる。


そして展望台に到着した。

俺たちは吐き出されるようにエレベーターを降り、フロアへと散らばる。

明里との距離をあまり離さずに、四方八方に視線を巡らせながら探索していく。

望遠鏡や展望マップの付近を注意深く探し、通り過ぎる。


カップルベンチのそばに近づくと、撮影用のスマホホルダーの近くで、QRコードのボードを掲げた女性が立っていた。

午前来たときにこんな人はいなかったことを考えると、イベント用に配置されたスタッフだと思い至る。


「QRコードを読み取ってもいいですか?」

「どうぞどうぞ」


声を掛けると快諾しながらボードを向けてくれたので、カメラを起動して読み取った。

すると画面が切り替わり、クイズが表示される。


『Q.愛野市内で一番敷地面積が大きい結婚式場はどこか?』


一番広い結婚式場か。これは普通に考えれば難問だが、カップル向けのクイズと考えれば全く応えられないということもないだろう。

幸いなことに結婚式場には心当たりがある。休日に町を開拓していたときに見つけたのだが、敷地が相当広く、四辺の一辺を歩くのに時間がかかった記憶がある。


「アートガーデン愛野町かな?」


そう聞くと、明里は頷いて応えた。


「そうですね。美海栄町のグレイスウェディングホテルもかなり広いですが、僅差でアートガーデンが勝っていたと思います」

「ほう、やっぱりな。じゃあ解答するぞ」


俺はクイズの解答欄にひらがなで答えを打ち込む。ひらがなにすると結構長い名称だ。

決定を押すと、ピンポンと効果音が鳴り〇が表示された。これで花びらを一枚ゲットだ。


「よっしゃ! それにしても明里、よく隣町の結婚式場の名前を知っていたな」

「たまたま少し前にニュースで知りました」


明里が微笑んで応える。運を味方につけるとは、さすが我が妹だ。

一問目は明里に助けられてしまったわけだが、次は良いところを見せないと。


「さて、次行くか!」


俺たちはカップルベンチを離れ、探索を続ける。

フロアを一周して何も見つからなかったので、見切りをつけることにした。

エレベーター内で以降の立ち回りについての詳細を話し合う。

明里から同意を得ることができたので、そのまま計画通りの戦略で進めることにした。


「じゃあ16分後に東出入口で会おう」

「はい!」


エレベーターを降りて、二手に分かれる。

明里はお店が並ぶ方へ、俺はポートタワーを出て南東方向、駐車場・埠頭へ向かった。



駐車場には車がずらりと並んでいた。たびたび駐車スペースが空くが、すぐに次の車が来て埋まってしまう。

歩道に沿って歩き、ざっと駐車場を眺める。

入口が混んでいるかと思ったが、特にそんなことはなかった。

駐車用のゲートは設置されていないようだ。無料駐車場ならばこれだけ混むのもうなずける。けれど一方で、混雑緩和のためにも、有料ゲートにしたほうが良いのではと思わなくもない。


歩道には木が植えられていたり、花壇が置かれていたりと、景色を華やがせる工夫がされている。家族連れや子どもたちが楽しそうに笑って歩いているのをみると、なんだか心が和んだ。


駐車場を囲む歩道をぐるりと一周し終え、今度は埠頭に出る。潮の香りが強くなった。

ここの埠頭は、道の駅の敷地の長方形の下半分をまるまる囲っている。非常に距離が長いため、まるでどこまでも伸びていくような錯覚を覚える。

どうやら多くの釣り人たちが等間隔で腰を下ろして、釣りを楽しんでいるようだ。

魚が釣れるのか様子を観察すると、一人の釣り人がよいっと竿を引っ張り上げる。

釣り糸の先端には、小さな魚が引っかかっていた。お見事!


名も無き吊り名人に称賛を送るのもつかの間、さらに奥へと進んでいく。

ちょうど辺の真ん中に来たところで、赤色の半袖シャツを着た男性が目に入った。

近づくと、なんと背中にQRコードがでかでかと載っているではないか。

俺は立ち止まり声をかける。


「こんにちは。QRコードをスキャンしたいんですけど、いいですか?」

「うん? おー、はいはい。どうぞ」


そう言って男性は背筋を伸ばし後ろを向く。俺は礼を言ってカメラを起動しQRコードを読み取った。


「Q.金婚式は結婚何年目にやる行事?」


これは常識クイズだ。少し考える。

確か25年目……いや、25年目は銀婚式だな。

50年目が金婚式か。


数字で50と解答すると、〇が表示される。これで花びら2枚目を獲得。まだまだこれから。

残り時間を手早く確認し、埠頭を西方向に進んでいく。

同じような服装の人はいないかと注意しながら進み、角を曲がり北へ向かう。

もう一人くらいいてもおかしくはないと思いながら、早歩きでどんどん進む。


本来ならもっとのんびり海の景色を楽しみたいところだが、今はイベントの最中であるため我慢する。豪華賞品を必ずゲットしてやると気合いを入れる。


周囲を観察しながら進み、北の端までたどり着いた。

信号のある横断歩道を渡り、東に進む。


階段を上りきると、ベンチが複数個設置されていて、近くに結び岩があった。

ベンチの一つに帽子をかぶった男性が一人座っていたので、よく観察してみると、帽子のつばにQRコードが載っていた。


「こんにちは。帽子を見せてもらってもいいですか?」

「いいですよ。どうぞ」

「ありがとうございます」


男性から受け取った帽子を空いているベンチの上において、カメラでQRコードを読み取る。


「Q.令和19年の日本人男性の平均寿命は何歳か?(小数点以下は問わず)」


ふむ。これも常識クイズだな。恋愛にまつわるクイズではない気がする。

イベントの詳細情報からして、特にジャンル縛りはなかったと思うので、別に問題はないのか。

とりあえずクイズに答えよう。少し前に少子高齢化社会の問題を取り上げたニュースを見たため知っている。男性は81.5歳で女性は87.6歳だったはず。


今回は男性なので81歳と入力して解答する。ピンポンの音が潮風に紛れて消えていく。

これで花びらは3枚。いい調子だ。


俺は結び岩を後にし、広場に入る。

広場にはたくさんの木が並んで植えられており、地面は整地されていた。

木や茂みの裏、花壇を一通り観察し終える。


そこから少し南下すると地面がレンガ敷きになり、見通しがよくなった。

さっきは自然が豊かだったが、今度は人工物ばかりで雰囲気が正反対だ。

レトロでモダンな茶色の空間は、馴染みはないがなんだか落ち着く。


周囲を見るとベンチやゴミ箱などが設置されている。

他に物は置かれておらず、広場内にいる人が目に付いた。

楽しそうにおしゃべりしている若い女子グループ。子どもがはしゃぐのを見守る家族連れ。静かに本を読んでいる中年の男性。他にも何人かいるが、従業員と思しき人はいなさそうだ。


広場をぐるり一周と探索し、ここにはもうないだろうと見切りをつける。

残り時間はあと8分。おおむね想定通りだ。

広場を後にし、ポートタワーに戻った。



ポートタワーの東出入口に行くと、明里が待っていた。

30秒ほど遅れてしまった。時間が惜しいので早速情報共有をする。


「2つ手に入った。そっちは?」

「1階で一つ、2階で一つ。計二つ見つけました」

「おお、やったぜ。じゃあ近い方から案内頼む」

「わかりました」


早足で進む明里の後をついていく。通路を右に曲がり少し進むと、階段が見えた。

どうやら2階から先に行くらしい。

壁にずらりと貼られたイベントや祭りの告知ポスターを流し見しながら、階段を駆け上がる。人とすれ違う際は邪魔にならないようペースを落とし端に寄って歩く。


階段を上りきり、広い通路に出る。

2階は1階と違ってごちゃごちゃしておらず、どこかの会社のようにきれいな空間だった。

通路は西方向と南方向に分かれており、南方向すなわち階段からまっすぐ進んでいくと展示兼休憩ペースにたどり着いた。

広い空間にはソファーや椅子がたくさん置かれていて、壁がガラス張りであるため海の景色が楽しめる。壁際には自販機が2台並んで置かれ、壁にはまたしてもイベントの告知ポスターがたくさん張られていた。


「あの人です」


明里が示す方に視線を向けると、初老の男性が新聞紙を広げて椅子に座っている。よく見ると、新聞の裏面の片方にQRコードが大きく貼られていた。


「オッケー。声を掛けよう」


俺は初老の男性に挨拶をし、QRコードを見せてほしいと頼む。


「どうぞ」


初老の男性は丁寧に応え、新聞を垂直に持つ。俺はカメラでQRコードをスキャンする。


「Q.日本人の新婚旅行で人気No1の外国はどこか? (国名)」


来ましたよ、定番のクイズが。海外旅行に憧れる身として、この問題は楽勝だ。


州で言えばアジア、ヨーロッパ、北アメリカはたいへん人気がある。

アジアの中でも、お隣の韓国や台湾は人気が高く、東南アジアのタイやシンガーポールなども同様だ。

ヨーロッパで言えばフランス、イタリア、イギリス。とりわけパリ、ローマ、ロンドンなどの首都・大都市などが候補としては上位に来るだろう。

北アメリカで言えば当然アメリカ。その中でもずば抜けてハワイは大人気だ。


人気ランキングトップ3はアメリカ、イタリア、フランスだろう。

明里に答えはアメリカだと伝えると、彼女は頷いてくれた。


それを確認し、ひらがなで『あめりか』と入力し決定を押す。ピンポーンと〇が表示される。

これで花びら4枚目を入手した。ついにリーチだ。


「よし、最後行こう」


俺が促すと、明里が早足で歩きだす。もと来た道を引き返さず進み、別の階段を使って下に降りる。

ポートタワーの展望台へ繋がるエレベーターの脇を通り、飲食店が並ぶ区画へとやってくる。どこの飯屋に入るのかと考えていると、昼に利用した食事処『漁夫の集い』に明里が入った。

俺はそれに続いて再度足を踏み入れる。

「いらっしゃい!」とすかさず飛んできた挨拶に会釈を返し、注文カウンターの前を通り過ぎる。

客の入りは昼よりは改善されたものの、席の2割くらいは埋まっている。彼らを傍目に進んでいき、明里が「着きました」と立ち止まった。

目の前にあるのは水槽。相変わらず魚が元気に泳ぎ回っている。


「この人です」


どうやら目的は水槽ではなく、その隣で休憩している店員のようだ。

見ると頭に太い鉢巻きを巻いており、ちょうど額の真ん中の位置にQRコードが書いてあった。

これまでQRコードは人が身に着けている、または所持しているアイテムについていたわけが、ちゃんと法則性があったということになる。イベントに関係ない客が触れられないよう工夫されていたということだ。


「こんにちは。鉢巻きのQRコードをスキャンしてもいいですか?」

「おう。これでいいか?」


店員は快諾すると姿勢を伸ばして、こちらに額を突き出した。

俺はカメラを起動しそれを読み取る。


「Q.サクラの花言葉は何か?」


最終問題は花言葉か。苦手ジャンルがまた来てしまったが、幸運なことにサクラは調べたことがある。

花言葉は『精神の美』『優美な女性』だ。精神の美についてはイメージしづらいが、優雅な女性についてはイメージしやすいだろう。

俺が答えると明里に伝え、文字数の少ない『精神の美』の方をひらがなで入力し決定する。


ピンポンと〇が表示され、花びらが5枚集まる。

そして「Clear!」と文字が表示され、クリアタイムが28:10と表示された。


「やりましたね!」


明里が画面を見て顔を綻ばせる。


「あっ、何か通知が来てます」

「え? どれどれ」


マークの付いた通知のタブをタップする。すると、ステージクリアへの称賛と、リスタに戻ってこいという旨のメッセージが来ていた。


「リスタに戻ろう」


俺たちは喜びを胸に、『漁夫の集い』を出てリスタへ向かった。



リスタ戻ると、一組のペアがすでにステージにいた。

Mr.ハセガワはどこだと待機スペースのテントを開くと、2人のスタッフと複数台のモニターを監視していた。彼は俺たちに気づいて、「ステージで待機してて」と言う。

俺たちはステージに戻り、そのままになっていたセットに腰掛けた。



そこから約五分後。

他のペア3組がステージに戻り、席に着いている。観客は一人もいない。

Mr.ハセガワが休憩スペースから出てきて、お待たせしましたと声をかけ、ステージの前方に立った。


「皆さん、それでは結果発表です!」


さて、俺たちは何位だろうか。


「ラストステージをクリアしたのは3組ーー」


ステージの壁に1位から3位が空欄で表示される。なかなか凝った演出をするな。


「2位はかずと&あかりペア! 45ポイントゲットだ!」


まさかの真ん中、2位から発表される。トップを逃してしまった。

しかしまだ終わらない。たいし&かんなペアが3位であれば、俺たちの勝ちだ。


「1位はっーー!」


Mr.ハセガワが引っ張る。

俺はごくりと唾を飲、明里を見やる。やはり真剣な表情をしている。


「ゆうせい&まいペア! 50ポイントゲットおめでとう! そして、3位はたいし&かんなペア、30ポイントゲットだ!」


会場に声が響く。たいし&かんなペアということは、つまるところ、


「全ステージが終了し、トップになったのは……118ポイントで、かずと&あかりペアだああああーー!!!」


俺たちの優勝だ。素晴らしい! 最高だ!

共に勝利を手にした相棒に両方の手のひらを見せると、すぐに察してパシッとハイタッチした。


「やったな!」

「はい!」


俺たちは笑顔で健闘を称え合う。


「それでは賞品を進呈しますので、かずと&あかりペアは前に」


そう言われたので、俺たちはそろってステージの前方に移動する。

Mr.ハセガワがスタッフから小奇麗な白い包みを受け取る。

それを俺たちの目の前で丁寧に開き、中身を見せる。


透明なケースの中に光沢のある金属が姿を現す。

パステルカラーでポップな模様を背景に、シロクマがまるで俺たちを称賛するように笑っている。


「コングラチュレーション!」


明里がMr.ハセガワから賞品を受け取る。

続いて何枚か用紙の入ったクリアファイルを手渡される。俺がそれを受け取る。

中身を確認すると、『Guarantee』と書かれた保証書のカードと、折りたたまれた取扱説明書が添付されていた。


礼を言って、席へ戻る。明里は賞品を前に目を輝かせた。


「わぁ、すごい可愛い!」


明里はまるで小さな子どものように興奮して感想を述べる。

俺もじっと賞品を眺め、そうだなと相槌を打った。


そこからは2位以降のペアに賞品が渡されていく。

2位はそこそこ高そうなハンカチ、3位はスナック菓子、4・5位はポケットティッシュといった感じだ。ずいぶん格差があるがまあ妥当なところかと納得する。

そして表彰が終わり、


「これにてイベント『カップルNo.1決定戦!!!』を終了します! ベスト・ウィッシズ!」


Mr.ハセガワの宣言により、イベント終了となった。

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