古暮兄妹の遠出 ポートタワー編 パート3
俺たちはポートタワーの建物から出て、屋内緑地公園 エアリオンリスタの前までやってきた。
事前のリサーチでわかっていた通り、リスタは鉄骨造り。外装はガラス構造になっていて、外からでも中の様子が窺える。
今日は日曜だから混んでいるかと思ったが、意外とそうでもなみたいだ。
「とりあえず入ってみるか」
「はい」
大きな自動ドアをくぐり抜けて、リスタ内に入ると、広場スペースが広がっていた。何も障害物はなく、ただただ広い空間だ。
床はこげ茶色で、柔らかい材質でできている。ダンサーなら思わずステップを踏みたくなるだろう。
「ちょっと熱いですね」
「だな」
明里に同調する。ガラス張りで日光がもろに入ってくるのもあるし、単純にここの気温が高いというのもある。天気が良くてお出かけ日和だなと思っていたが、少し複雑な気分だ。
「水分補給を怠らないようにしよう」
「ですね。気をつけます」
明里がしっかり返事をしてくれる。よし、今のところ“頼れる兄貴”は維持できてるな。この調子だ。
それから数十歩進んだところに、大きな鉄柱が建てられていた。その柱の周りを植木が主を守るようにして囲っている。
それらを避けて進み、均等な間隔で置かれたたくさんの鉢植えに沿うように進んでいくと、その先には二人用のベンチが二つ直列に並んでいる。
「小休憩所だな。少し休むか?」
「いえ大丈夫です。全然疲れてないです」
若干座って休みたい気分ではあったが、頼れる兄は先陣を切らなければならないので、ここはぐっと我慢だ。
熱中症を避けるためも、少し前に自動販売機で買ったお茶を一口。はぁ、生き返った。
「じゃあ先に進もう」
「はい」
そこからさらに奥へ進むと、今度は公園にあるような遊具や砂場が現れた。
「よっしゃーいくぜーーふうーーー!」
「あー、わたしもやるー! わーーー!」
砂場には誰もいなく、遊具の周りに男女の子どもがいて、わいわいはしゃいで遊んでいる。どうやら滑り台がお気に入りらしく、滑っては上りを何度も繰り返している。
「へー、屋内に遊具があるなんてすごいな」
明里はというと、「これは驚きました」と同じく感心していた。この暑さの中でよくそんなにもはしゃげるものだ、とは口にしなかった。
遊び場を離れてさらに進んでいくと、今度はバンドのライブ用らしき半円のステージがでかでかと現れた。壁や床は真っ白で汚れ一つ無く、手入れが行き届いている。
「これ、新設のステージか? ずいぶん綺麗にしてあるな」
「ほんとですね。壁に傷一つないです」
ステージの側まで近づいてみる。新設したばかりのような綺麗さだ。
「ここでなんかイベントとかやってるのかな?」
「うーん、どうでしょう」
新設であれ改装であれ、綺麗にしてあるということは、近々イベントが行われるという証拠だ。
「ちょっと調べてみる」
「お願いします」
俺はポケットからスマホを取り出して、『緑地公園リスタ イベント』と検索する。
すると、道の駅A港のホームページが検索結果の一番上に出たのでそれをタップすると、今月のイベントスケジュール一覧表が表示された。
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9月某日 カップルNo.1決定戦
場所 エアリオンリスタ ステージ
日時 15:30〜17:00
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「9月某日って今日だよな?」
「はい」
「なんかイベントあるっぽいぞ。えっと……カップルNo.1決定戦だと」
「詳細は書いていますか?」
スマホの画面をスクロールし内容を確認する。
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イベント内容 クイズ、ゲーム
参加条件 2人
参加制限 参加者両名ともに12歳以上であること
先着5組で締め切り
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クイズ、ゲーム……。なんだ、イベントの詳しい内容は記載されてないじゃないか。
「あんまり詳しくは書いてないな」
「ちょっと見せてください」
明里が近くまで寄ってきたので、スマホの画面を見せた。
「うーん、本当ですね」
「イベントの名前から察するに、『カップル』とか『恋愛』とかそういうジャンルで、クイズなりゲームなりをやるんじゃないかな」
そう推測しながら、昔クイズ大会を見に行ったことを思い出した。
あれは確か中学生のときだ。同級生の知り合いが大会に出るから来いと言われたので、冷やかし程度に見に行ったのだが、その実はお遊びではなく、真剣そのものだった。
会場の張り詰めた雰囲気は印象的だったし、大抵問題文が数文字読まれただけで誰かしら正解するので、異次元だと痛感した。
しかし今回は、今思い出したような真剣なクイズ大会をやるというわけではないだろう。
文化祭のミスコンのようなノリで、緩い感じで行われる。そんな気がする。
偶然にも今から一時間後にイベントが開催されるとなると、どうしたものか。
俺は『限定イベント』と聞くと目がない生粋のゲーマーであるが、このイベントはソロプレイではないし、しかもカップルという条件付きだ。
もし参加するとなると明里を説得しなければならないわけだが、交渉材料がない。
参加条件が単純に二人であれば明里は快諾してくれるだろうが、カップルとなると話は別だ。いくら明里と良好な関係とはいえ、断られる可能性が高いだろう。
とりあえず見物かと思いかけたところで、
「おやおやっ!」
と、奇妙な声を上げながらこちらに近づいてくる存在に気が付き、後ろを振り返った。
「君たちはもしかして、イベントの参加希望者かい?」
スーツとサングラスを身に纏った全身真っ黒の男が、調子の良さげな声を上げながらこちらに微笑みかけてきた。
「えっと……?」
その勢いに気圧されながらも、俺は彼に問いかける。
「おっと、これは失礼。私はここでまもなく開催されるイベント『カップルNo.1決定戦!!!』の司会進行役を務めるハセガワです。プリーズ・コール・ミー、Mr.ハセガワ!」
なんだイベントの関係者か。反応が独特というか、ちょっと変わった雰囲気の人だな。
「君たちは見たところ、今日のイベントに参加しに来たカップルとお見受けするが、間違いないかい?」
「いや、俺たちは」
俺はそこで言い止めつつ、明里の様子を伺う。どうやら明里も変人の登場に驚いていたようだが、今はどこか期待するような目をこちらに向けている。
その反応はどういう意味だ。首を横に振らないところ、参加してもいいという意思表示な気がするんだが。
「ふっふっふっ……優勝ペアには、なんと豪華賞品が贈られます!」
Mr.ハセガワがセールスマン口調で餌をちらつかせてくる。豪華報酬ねぇ。
「それは何でしょう?」
俺はまんまとその発言に食いつく。
例えば何々一年分とか、どこどこ行きのチケットとか、賞金何万円とかかね。大会の規模からしてそんなに豪華ではないかもしれない。
「ふっふーん。それはですねーー」
Mr.ハセガワは溜めを作っている。
「それは?」
俺はゴクリと唾を呑みこむ。もしや何か大層なものが出てくるのでは。
「シロクマのペアキーホルダーです!」
どこかで聞いた商品名だと少し考える。そうだ思い出した。
二週間前の朝のニュースで『恋人へのプレゼントTOP5』という企画が放送されていた。
そこで堂々の売れ筋No.1と紹介されたペアキーホルダーだ。
ラインスタンプで女性に人気なキャラクター『シロクマ』と大手のキーホルダーメーカーとのコラボ商品だ。
前々からネットで話題になりつつあったものの、テレビで紹介されたことにより人気沸騰。ネットや販売店に客が殺到して翌日に売り切れとなった伝説のキーホルダーだ。
生産量が少量であるため現在も在庫切れが続き、入手はほぼ不可能になっている。
ネット通販ではオークションで数万~十万円ほどの値段がつくらしい。
「えっすごい!」
明里は手を合わせて、目を輝かせた。
「おっ、彼女さんはご存じですか。そうです! ついこの前、テレビで取り上げられ、翌日に売り切れとなった大人気キャラ『シロクマ』のペアキーホルダーです!」
どうやら俺の記憶にあるキーホルダーで間違いないようだ。若者なら誰もが欲しがるお宝と言ってもいい。賞品が欲しいという目的があれば、明里が一緒にイベントに参加してくれる可能性が高いだろう。
ここは念のため、本当に品物がもらえるのか確認しなくては。
「それ俺も知ってます。友達がそのキーホルダーが欲しくて頑張って探してたんですど、やはり入手するのは困難だと言ってました」
友達がーーというのは嘘だが、本当に入手できるかを遠回しに聞いてみる。
「ふむ。彼氏さんの言う通り今は入手困難な代物。ですが、ご心配なく! 製造メーカーの知り合いから直接入手することができたのです」
ツテでキーホルダーを調達したというわけだな。
「とはいえ口先だけというのは信憑性が低いでしょう。なので、イベントに参加者には事前にキーホルダーを確認していただきます。透明なガラス越しにですけどね」
ほう。事前に品物を見せていただけるとは。もう一声、保証書があれば満点だ。
「そのー、入れ物とか保証書とかってもらえるのでしょうか?」
「もちろん。完品ですよ」
Mr.ハセガワは胸を張って応える。ここまで言うのだから、パチモンをつかまされる可能性は低いだろう。信用しようじゃないか。
「参加するか?」と明里に目線で訴えると、明里は頷いた。
「あの、俺たちイベントに参加したいんですけど、できますか?」
「もちろん。待機場所がすぐそこにあるから、そこで時間まで待っていてください」
Mr.ハセガワが指し示す方向に向かうと『待機スペース』と書かれた簡易テントがあったので、俺たちはそこへ入ってしばしの間休憩することにした。
開催までまだ時間があるため他の場所を見て回ろうかと思ったが、長時間会場から離れる場合は再エントリーが必要とのことらしい。
参加できなくなる可能性があるならおとなしく待つ方がいいと判断し、約30分の間テントにとどまることにした。
明里と会話しながら待っていると、徐々にカップルたちがテント内に集まってきて、五組入ったところで締め切りとなった。
Mr.ハセガワから挨拶がなされ、賞品であるシロクマのキーホルダーの品物を確認する。ガラス越しに傷一つない状態であることを確認できた。
そして、イベントの諸注意がなされる。スマホ等で不正ができないよう、通信機器をリスタ内のロッカーに預けるよう言われる。言われた通り預けて戻ってくると、金属探知機で身体検査された。さすがに高価な景品を渡すだけあって、勝負条件は厳正に揃えるようだ。
そして間もなくイベント開始時刻となった。
「レディース・アンド・ジェントルメン! これよりカップルNo.1決定戦を開催します!」
ステージの前中央に立ったMr.ハセガワが、マイクを片手に言い放つ。
ステージの両脇に設置されたスピーカーから発せられる声は、リスタ内全体に響いていることだろう。
近くにいた数人が、驚いてステージ付近に集まる。
「なんかイベントやってんぞ!」「カップルNo.1決定戦だってよ!」
「なんだなんだー?」「ヒューヒュー!」
その後も、子どもからお年寄りまで幅広い年層の人たちがぞくぞくと集まってきた。
正直に言えば目立ちたくないのだが、観客が二十人以上いるとなると、もはや目立つことは不可避である。こうなったら開き直って、観客を楽しませよう。エンターテイナーになるのだ。
「イベント参加者はこの五組。まずは一組目、かずと・あかりペア!」
俺たちの名前が大々的に呼ばれる。
舞台の上で名前を呼ばれるというと、中学まで習っていたピアノの発表会を思い出す。
慣れているとはいえ、少なからず緊張はする。まして今日はカップルという括りで注目されるため、えもいわれぬ感覚が身を包む。
「続いて二組目、たいし&かんなペア! 三組目、ゆうせい&まいペア! 四組目、りふう&さなペア! 五組目、ゆうじ&るかペア!」
続けて、イベントの他の参加者たちの名前が次々に呼ばれる。
どのペアも仲良さげな雰囲気で、れっきとしたカップルといった印象だ。
本物のカップルに、偽物の俺たちがどこまで通用するか。勝負と行こうじゃないか。
「ルール説明です! ステージは全部で3つ。
1st、2ndステージは知識が試される『頭脳ステージ』。
3rdステージは体力と運が試される『探索ステージ』です!
これらすべてのステージを終了し、トップになったペアに豪華優勝賞品を進呈します! それでは各ペアの皆さん、席についてください」
Mr.ハセガワの指示を受け、イベント参加者が移動する。
指定の場所には、椅子と解答用デスクが2セット並んで置いてある。
そこに座ると、スタッフがセットの間に仕切りを立てたので、明里の姿が見えなくなった。
Mr.ハセガワはステージの前方からこちらを見回す。視線が移ったので頷いて準備ができたことを伝える。
「全員準備が整ったようです。それでは参りましょう! 1stステージは、『ふたりの思考がぴったり一致! 以心伝心クイズ』!!」
Mr.ハセガワが大声を張り上げる。観客から拍手と野次が飛んでくる。
「このステージでは全員が解答者です。提示された選択肢の中から指定された数だけ答えを選び、ペアの相手と解答が一致した場合に正解となります。
問題は全部で5問、最初に例題が一問あります。
一問正解するごとにポイントが手に入ります。問題文の最後に獲得できるポイントを教えます」
解答が一致したら正解で、ポイントゲットか。ポイントは問題につき異なるのだろうか。
「まず例題です。例題! 家で二人仲良く夕食を取った。デザートに何を食べる? 解答は1個選択で、獲得ポイント0だ!」
Mr.ハセガワが問題を読み上げると、解答用デスクに設置されているアイパッドに解答用アイパッドに問題文と選択肢、制限時間が表示される。
================================================================
選択肢:
①菓子パン ②せんべい ③ようかん ④もなか ⑤アメ
⑥スナック ⑦チョコレート ⑧果物 ⑨ナッツ ⑩アイスクリーム
================================================================
選択肢の一つを適当にタップすると、選択解除ボタンが押せるようになる。
選択解除して、解答を考える。
選択肢は10個表示されている。どれもメジャーなお菓子だ。
特別な日でもないので、食べるならいつも食べているお菓子だろう。
選択肢にあるものは大抵リビングに置いてあるが、王道なのはせんべいだ。
そして、我が家の特徴として、アイスクリームを切らさないようにしているというものがある。俺も明里もアイスクリームをよく食べるので、備蓄を心掛けている。
ということで、選択肢は②せんべいと⑩アイスクリームに決定する。
「解答オープン!」
Mr.ハセガワが合図を出すと、ステージの後ろの壁に全員の解答が表示される。
おそらくスクリーナーで映しているのだろうが、自分の解答がばれるというのは恥ずかしいものがある。
「二組正解です! すばらしい」
Mr.ハセガワは俺たちに拍手を送る。観客から反応はなく、ひそひそ話をしているようだ。
「要領はつかめましたかね。それでは本番いきましょう。第一問!」
司会進行が早くて、戦略を練る暇もない。
「問題 二人でフルーツドリンク専門店にやってきた。飲み比べをするため2種類選ぶことにした。どれを買う? 解答は2個選択、獲得ポイント10だ」
==========================================
選択肢:
①りんご ②ぶどう ③マスカット ④いちご ⑤ブルーベリー
⑥オレンジ ⑦グレープフルーツ ⑧マンゴー ⑨キウイ ⑩バナナ
==========================================
選択肢は10個で、その中から2個選択しないといけない。獲得ポイントは10。
この問題はいわば、二人の好きなフルーツを合わせて答えろということだ。
もし二人で好きなフルーツが違えば確実に正解することができるだろうが、同じフルーツが好きな場合は不利となる問題だ。
俺たちは後者で、どちらも①りんごが好き。一つは絶対に合わせることができるが、残り一つは考える必要が出てくる。
選択肢にある中で俺の好きなフルーツはマスカット、いちご、グレープフルーツ、バナナだ。
明里の好きなフルーツは、いちご、ぶどう、オレンジあたりだろうか。
自分の好みを優先するか、相手に合わせるかは考えている暇はない。
どちらにも共通する④いちごを無難に選択しよう。
Mr.ハセガワにより解答がオープンされる。同時にポイントがチャリーンと効果音とともに追加される。
正解したペアは4組。俺たちもそのグループに入っていた。
最初から難易度が高かったが、同じ答えにたどり着いたようで一安心だ。
「続いて第二問! 問題 スーパーで夕食の買い物。漬物は何の野菜を買う?(2個選択、獲得ポイント8)」
==========================================
選択肢:
①はくさい ②だいこん ③きゅうり ④うり ⑤らっきょう
⑥かぶ ⑦にんじん ⑧なす
==========================================
選択肢が10から8に減った。獲得ポイントも少し減るようだ。よいバランス調整と言える。
それにしても、まさか漬け物がクイズに出てくるとは思わなかった。まったく笑わせてくれる。
他のペアは頭を悩ませているかもしれないが、俺たちにとってはご褒美問題だ。
いつも買っているのは、①はくさいと③きゅうりの漬け物を選択し、決定する。
「解答オープン! かずと&あかりペアのみ正解だ。グッジョブ!」
Mr.ハセガワが手をたたきながら笑顔を見せる。ポイントは合計18で一位。
正解が俺たちだけというのは意外だ。これで少し優勢になったな。
「次は第三問だ! 問題 友人から、カップルにおすすめの観光スポットはないかと聞かれた。どこを薦める? 解答は2個選択、獲得ポイント10だ」
==========================================
選択肢:
①遊園地 ②テーマパーク ③図書館 ④美術館 ⑤博物館
⑥水族館 ⑦動物園 ⑧植物園 ⑨温泉 ⑩プール
==========================================
観光スポットか。これは相当難しいぞ。
まずは行ったことのない選択肢を排除しよう。④、⑤、⑥、⑦は候補から外れる。
次に思い出が漠然としているものを削除だ。②、⑩を外す。
次に、一般的にデートとしてマイナーである③を外す。
残ったのは①遊園地、⑧植物園、⑨温泉の3つだ。
植物園はデートに向いている。明里も選びそうなので、選択する。
遊園地は万人受けするが、温泉は付き合いはじめのカップルがためらう可能性がある。
ここは遊園地を選択してみるか。
①遊園地、⑧植物園を選択し、確定ボタンを押す。頼むぞ明里。
「解答オープン! 正解は2組!」
明里の解答は①と⑧で見事に一致。よっしゃ。
「かずと&あかりペアは三連続正解! この調子で最後まで行けるか!」
ハイテンションな司会の声が響く。ポイントは合計28。
会場もそこそこ盛り上がっているようだ。
「次は第四問! 問題 結婚式場に花を飾りたい。おすすめの花は何? 解答は2個選択、獲得ポイント8だ」
==========================================
選択肢:
①アジサイ ②カーネーション ③スイートピー ④ダリア ⑤バラ
⑥ホワイトスター ⑦マーガレット ⑧ユリ ⑨ラン ⑩ローズマリー
==========================================
四問目は花か。俺の不得意なジャンルが来てしまった。
クイズゲームをやっている身として、いつかは攻略しようと思っているわけだが、なかなか手を出さず放置している。一般常識がちょっと怪しいレベルだ。
ゴールデンウィークに明里と植物園に行ったので、そこで多少の知識は増えたと思うが、それでも知識が全然足りていない。非常に不利な戦いである。
嘆いても仕方がないので、とりあえず選択肢を絞るか。
⑥ホワイトスターは全く知らない花だ。名前も聞いたことがない。
選択肢にあるということは結婚式で使われるのだろう。
他の候補に比べると認知度は低そうなので、明里が知っている可能性も低いはず。候補から外す。
他の花はどれも名前は知っている。しかし、イメージが湧かない花が⑦、⑨。
もしかすると使用頻度の高い花かもしれないが、絵が思い浮かばないためどうしようもない。候補から外す。
まずいな、時間が無くなってきた。
とりあえず有名どころである②カーネーションは選択しておくか。多分一致するだろ。
そしてもう一つだが、①アジサイと⑤バラと⑧ユリは色が沢山あり複雑だ。候補から外す。
残るは③スイートピー、④ダリア、⑩ローズマリーの三つ。
三つの中ならスイートピーがメジャーなのではないか。
花言葉的にもスイートピーは『門出』なので一番妥当だろう。
ということで②カーネーション、③スイートピーに決定する。時間ギリギリだ。
「解答オープン! 正解はたいし&かんなペアの一組だ!」
明里の解答は②と⑦。
②カーネーションは一致したが、⑦マーガレットは一致せず。
マーガレットは早い段階で弾いてしまった候補だ。
花言葉も花の形もわからなかったので、これは俺のミスである。
三連続正解が途切れてしまった。本当に申し訳ない。
「接戦ですねー。盛り上がってきました!」
Mr.ハセガワはハイテンションで司会する。ポイントは変動せず合計28。たいし&かんなペアと同率一位だ。どうやら彼らが一番強敵のようだ。
「最後の第五問! 問題 宝くじで30万円当たった。使い道は?(2個選択、獲得ポイント15)」
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選択肢:
①生活費(税金・固定費含む) ②教育費 ③医療・健康 ④衣服 ⑤美容
⑥食事 ⑦投資 ⑧娯楽 ⑨贈り物 ⑩仕送り ⑪貯金 ⑫旅行
==========================================
最後は超絶難問だ。選択肢が12個で、3個選択とは、正解させる気があるのか。
こんなもの示し合わせない限り、一致などしないだろうに。
不満を言っていては時間がなくなる。少しでも正解の確率を上げる努力をしよう。
前提として30万円は個人ではなくカップルで使うためのお金とする。
まずは、確実に選ばない選択肢を消す。⑦、⑨、⑩は消える。
次に、明里が選ぶ確率が低いものを消す。③、④、⑤が消える。
続いて、親が払ってくれるため無効になる選択肢を外す。①、②が外れた。
残るのは⑥、⑧、⑪、⑫の4つ。
ここで⑪貯金だが、そもそも俺たちはカップルではない。カップルとして貯金することはないため、選択肢から外す。
最後に三つを吟味する。
まずは⑪娯楽に関して。アウトドアやスポーツ、ゲーム、書籍、映画など様々ある。⑧食事や⑫旅行も⑪の範囲に入れようと思えば入るわけだ。
よって、定義範囲の広いオールマイティ選択肢の⑪は確定で選択することになる。
次に⑧食事や⑫旅行。ここは二者択一なので、選びたい方を選ぶ。
普段食べないものを食べるよりも、普段行かないところに二人で行く方に価値を感じる。
明里も食べ歩きより観光の方がきっと好きなので、⑫旅行を選ぶこと決める。
⑪娯楽と⑫旅行で決定ボタンを押す。
「解答オープン! かずと&あかりペアのみが正解だ! エレガント!」
奇跡的に正解することができた。素晴らしいとしか言いようがない。
明里はもしかすると俺に合わせて⑫旅行に入れてくれたのかもしれない。そうであれば本当にグッジョブだ。
「1stステージはこれにて終了だ。現在のトップは43ポイントでかずと&あかりペアだ。続いて、28ポイントでたいし&かんなペア」
二位との差は15ポイント。最終問題が15ポイントだったので、結構差をつけることができた。この調子で次のステージも頑張っていこう。
「会場も随分温まってきました! それでは次行きましょう! 2ndステージは『あなたのことなら何でもわかる! ピンポイントクイズ』!」
Mr.ハセガワの大声に、会場が拍手なり声援を飛ばすなりして反応する。
「このステージは記述式です。ペアの一方は解答する側、もう一方は答えを用意する側に分かれます。
問題文の始めに『彼氏』または『彼女』と付けますので、言われた方が答えを用意する側、言われなかった方は解答する側となります」
記述式か。1stステージとは違う形式で、難易度が上がった。しっかり問題文を聞かなければならない。
「問題は全部で5問。最初は例題があります。1stステージと同じポイント制で、解答時間も同じく30秒です。
単語で解答する場合は固有名や正式名称を使ってください。文章で答える問題はできるだけ具体的に書いてください。あまりに抽象的すぎる場合は不正解になります。
文字の表記は漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字いずれでも結構です。
ただし、解答がピッタリ一致した場合のみ正解となります!」
ルール説明が結構長いが、正解かどうかを判断するためには仕方がないか。
何というかこのクイズ形式、バラエティ番組とかでよく見る構想に近い気がする。
何かしらの番組を参考にしてイベントを企画しているのだろう。
「それでは参りましょう! 例題 彼氏の好きな数字は何?」
Mr.ハセガワが問題文を読み終わると、解答用アイパッドに問題文と記述欄、制限時間が表示される。
今回は冒頭が彼氏なので、俺が答えを用意する側となる。
好きな数字か。これは難しい問題だ。
そもそも好きな数字など考えたこともなかったな。
普通なら記念日とか誕生日とか、運動しているなら背番号とかだろうけど、どうしたものか。
明里と話していないことなどないと思っていたが、意外にあるものだな。
これは後で共有しておく必要があるだろう。
おっと、思考がそれた。好きな数字だったな。
とりあえず誕生日が3月14日だから、314で行こうか。
「時間です。それでは解答オープン!」
ステージの後ろの壁に全員の解答が表示される。
「正解はニ組! グレイト!」
二組のペアがそれぞれ1と7で正解していた。なかなかやるな。
明里はというと10と解答していた。おそらく俺の中学時代の背番号だろう。
仕切りがあるため、彼女の反応を確認することはできないが、俺と同じで口惜しい思いをしていることだろう。
ここは切り替えていこう。これが例題で良かった。
「それでは本番です! 第一問! 問題 彼氏の好きな楽曲は何? 獲得ポイントは10」
冒頭は彼氏なので、俺が模範解答側。ポイントは10か。
これはそこそこ簡単な問題だ。
俺の好きな歌手はKiraraであり、当然そのことは明里も分かっている。
Kiraraの楽曲はどれも大好きだが、デビュー曲のAi☆Kira(アイ☆キラ)が一番だと伝えた記憶がある。
英語とカタカナどちら表記してもよいとのことなので、カタカナで解答を用意する。
「解答オープン!」
全員の解答が表示される。
明里はアイ☆キラと解答していた。ちゃんと☆も付けているのはさすがである。
「正解は……なんと全組だあああーーー! アンビリバボオゥゥー!」
Mr.ハセガワは大声ではしゃいでいる。どうやら奇跡的に全ペアが正解したようだ。
全ペアのポイントが10ポイント加算される。合計53ポイントで変わらず一位。
二位とは15点差なので、一問落としたとしても猶予があるだろう。
「この調子でGO TO THE END! 第二問! 問題 彼女の好きな恋愛映画は何? 獲得ポイントは8」
今度は彼女が模範解答側だ。俺は解答する側になる。
恋愛映画か。最近は映画は行っていないので、少し前の記憶を探る必要がある。
一概に恋愛映画と言うと様々だ。
スパイス的に恋愛要素がちりばめられているものから、恋愛が主題の話まで。
基本的に明里はジャンルを問わず好きだが、少し前は青春ラブコメにハマっていたはず。
中でも『青春バカ野郎』シリーズの第一作『青春バカ野郎はMs.ラビットの夢を見るか』がお気に入りだと言っていた。
他にも何個か心当たりはあるのだが、一番可能性が高いのはこれだと思うので、これを解答にする。
「解答オープン。正解は三組! グッド!」
明里の解答は予想通り『青春バカ野郎はMs.ラビットの夢を見るか』だったので、今回も正解することができた。ちゃんと覚えていてよかった。
ポイントが加算され63点になる。
「続いて第三問! 問題 彼氏の好きな芸能人または有名人は誰? 獲得ポイントは8」
今度は俺が模範解答側。これは楽勝問題だな。
有名人となれば俺は間違いなく歌手のKiraraと答える。
他にも好きな歌手や有名人は沢山いるが、一番推しているのはKiraraと明里に話しているので、これを外すことはないだろう。
「解答オープン! 四組正解だ!」
さすがに好きな芸能人や有名人を共有していることが多いため、正答率は高い。
一組外したようだが、複数候補があるため厳選できなかったということだろう。
「次行きますよ! 第四問! 問題 彼女の好きな恋愛小説は何? 獲得ポイントは10」
今度は俺が解答する側だ。好きな恋愛小説か。
最近は小説や漫画が映画化されるパターンが主流になってきたので、非常に難しいな。
ラノベに関しては普段から面白かったものを明里と共有しているが、一般文芸は共有しないこともあるわけで。
『青春バカ野郎』シリーズはラノベ原作なのだが、さっきの問題で消費してしまったため使えない。他にラノベで気に入ったと言っていたやつは何作品かあったが、優先順位まではわからない。
ここは一般文芸で考えてみる。
かなり前の作品だが、『君の膵臓を食べたい』がお気に入りだと言っていた。
古本屋の恋愛ものの区画で発掘した作品だが、非常に良い作品だったため明里におすすめしたのを覚えている。もう一年くらい前のことなので、もしかしたらお気に入りランキングが変動しているかもしれないが、情報を更新できていないので仕方がない。
漢字が書けるか怪しいので全てひらがなで解答する。
「オープン! 二組正解だ! ブラボー!」
正解したのは俺たちとたいし&かんなペアだった。ポイントが加算され、73点になった。
一位と二位の点数がずっと離れないため気は抜けない。次がラストなので、何とかリードを保てればよいが。
「ラストの第五問ですが、文字数と文字の種類の制限があります! 条件を満たさない解答をした場合、解答無効で不正解になりますのでご注意ください!」
まさかのここでルール追加だと。制限とは厄介な。
これは嫌な予感がしてきたな。長文で答えろとかいくらなんでも無理だと思う。
「それでは第五問! 問題 彼女へのプロポーズの言葉は何? 句読点を含めず10文字以上、日本語でお答えください。獲得ポイントは15!」
ぎゃー! ラストで解答不可のやつが来てしまった。
冒頭で彼女とあるから、俺は解答する側になるわけだが、そもそもカップルじゃないから告白イベントなどないわけで、答えようがない。
文字制限があるのは「好きです」や「付き合ってください」といった告白テンプレ台詞を解答させないための措置だろうな。
日本語に縛られているので、ローマ字が使えない。『I love you so much』や『Will you be my girlfriend』など、英語なら簡単に長文を作れるから封じられたわけだ。
さて、どうしたものか。
一致する確率を上げるなら、明里がお気に入りの作品の告白セリフを書くのがよいのだろうが、いずれも読んだのが結構前のことなのでざっくりした内容しか覚えていない。
この問題は捨てると考えて、自分の思うままに書くことにする。
俺が明里に伝えたいことーーそれは、俺がいつでも明里の味方であるということだ。
端的に言い表すならこうだろう。解答欄に指を走らせる。
『お前が幸せになるためなら、俺は何だってする』
一応カップルという体で参加しているため、『味方』というのはふさわしくない。
「俺はお前の味方だから何でも協力する」を恋人っぽく変換した結果がこの解答だ。
なかなか良い感じに変換できたのではないか。時間ギリギリ間に合った。
「解答オープン!」
全員の回答が表示される。皆、しっかり10文字以上で書いているようで、空白はない。
明里の解答は『あなたを助けられるよう頑張ります』だった。
いつも十分助けられているのだが、それを自覚できていないのだろうか。
感謝の言葉は何かと掛けるようにしていたつもりだが、不足しているところがあったのだろうか。
これは後で話をする必要がありそうだ。
「正解は二組! アメージング!」
正解したペアのセリフは『俺の彼女になってください』『ずっと一緒にいてほしい』だった。ストレートに思いを伝える言葉であるため、正解するのはたやすいことだろう。
「これにて2ndステージ終了だ! 現在のトップは73ポイント、かずと&あかりペアとたいし&かんなペアが同率一位だ!」
最終問題の15ポイントで、差が完全に埋まってしまった。
少し焦る気持ちはあるが、明里となら大丈夫。次の探索ステージで決着をつけてやる。




