表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
文学少年の恋物語 〜令和版源氏物語〜  作者: AYASAM
1年生2学期
PR
76/117

Mio卒業ライブ ナノハの回想

 今日のライブは、ただの「引退」なんかじゃなかった。


Mioは最後まで完璧に歌ったわけじゃない。

声は何度か揺れていたし、表情も崩れる場面があった。


それでも彼女は、最後まで前を向いていた。

ステージの真ん中でライトを浴びながら、いつもの調子で笑っていた。


<ついてきて!>


その一言が、胸の奥に深く刺さった。

終わることが決まっていても、歌う理由を手放さない。だからあの声は、あんなにもまっすぐ届くんだと思った。


最後の音が消えて、会場のライトがゆっくり落ちる。拍手はなかなか止まらなかった。


きっとみんな分かっていたんだと思う。

これは「終わり」だけど、それだけじゃない。

ここまで続けてきた時間が、確かにそこに残っているってことを。


私の胸の奥が、静かに熱くなっていた。


7月のライブに向けた、Rosetteのスタジオ練習では、ミスを減らすこと、精度を上げること、完成度の話ばかりしていた。


ライブ本番では、自分が作詞した「North or South?」で小さなミスをし、そこからどこか気の抜けた歌になってしまった。


そして夏休みにふらりと立ち寄ったGreen Box。

名前も知らないバンドが、Kiraraの曲を楽しそうに演奏していた。

上手とは言えなかったけど、あの音には確かに「届けたい」という意思があった。


全部が、一本の線になってつながっていく。


私は最近、上手く歌うことばかり考えていた。

ミスをしないこと、完成度を上げること。

それは音楽をやっていくスタンスとして、間違っているわけじゃない。

でも、私のやる気の源は違うところにある。


――歌いたかったんだ。想いを声に乗せて。


やっとわかった。


Mioは最後まで、それを手放さなかった。だから、あのステージはあんなにも強かったんだと思う。


卒業ライブからの帰り道、喪失感が心の中にじわりと湧いた。

和人は一度も泣いていなかった。

でも、私と同じように黙って歩いていた。


会場から離れていくにつれて、Mioから離れていくような錯覚を覚える。

けれど、私は歩みを止めなかった。

逃げたくないーーそう強く実感したから。


違和感を拭えないまま、続けるのはもうやめだ。


Rosetteは私が立ち上げた大事な場所だ。だからこそ、このまま曖昧な気持ちでいたくない。


ちゃんと話そう。


私はどう歌いたいのか。

みんなは何を目指しているのか。


同じ場所を見ているのか、それとも違うのか。


それを、ちゃんと確かめたい。


Mioからもらった勇気がある。

だから、もう怖くない。


胸の奥で、静かに覚悟が固まっていく。


――どんな答えになったとしても。


それでもきっと、前に進んでいくための一歩になるはずだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ