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文学少年の恋物語 〜令和版源氏物語〜  作者: AYASAM
1年生2学期
PR
75/117

Mio卒業ライブ その2

 十分間の休憩が終わる。


場内アナウンスが流れ、ざわめきが波のように引いていく。さっきまでの熱気とは違う。再開を待つ空気は、どこか静かで、重い。


時間的に考えて、ここから先はおそらく休憩なしで進むだろう。


隣を見る。


ナノハは背筋を伸ばし、両手をきゅっと膝の上で握っていた。視線はステージに固定されたまま、ほとんど瞬きをしない。


「大丈夫か?」


小さく聞くと、彼女はうなずく。


「うん……」


声は、少しだけ硬い。


Sugar Prismetteとのコラボで、ナノハは何かを受け取った顔をしていた。

きっと何かが胸の奥でくすぶっているのだろう。


客電が落ちる。


闇の中で、わずかにナノハの呼吸が浅くなるのが分かった。


そして、ステージに一筋の光。


ピアノの単音が、夜の水面みたいに広がる。


Mioが現れた瞬間、客席の空気が変わった。


衣装はトワイライト・サンセットのグラデーションドレスだ。

上半身は澄んだアクアで、裾に向かってコーラルからラベンダーへと移ろう色彩をしている。

夕焼けみたいに、次へ移っていく色だ。

長いロング丈が、歩くたびにゆっくり揺れる。


装飾はほとんどない。

裸足風ヒールが、どこか危うい。


「……きれい」


ナノハが、息を漏らす。


それが衣装のことなのか、それとも今立っている彼女のことなのか、俺には分からない。



 曲が始まる。イントロがゆるやかに広がる。


静かなストリングスと、柔らかなビート。

始まりの音というより、“振り返り”の音だった。


Mioが、そっと歌い出す。


<まだ暗い朝の空に

ひとつだけ残る星>


声は安定している。

揺れも張り上げることもない。


まるで、語りかけるみたいに静かだ。


<小さな一歩が 今になる>


サビ前、ほんの少しだけ溜める。


客席が息を呑む。


そして――


<迷いながら進んできた

光の証を抱いて>


ペンライトの色が、ゆっくり揺れる。

ただ、静かに聞いている。


ナノハの指先は少し緩んでいるようだ。

その横顔は、真剣というより、確かめるような表情をしている。


<終わりじゃない

移り変わるだけ>


そのフレーズが、やけに胸に残る。


曲が終わるが、すぐには歓声が起きない。

一拍遅れて、大きな拍手が広がった。


ステージでは、Mioが深く一礼している。

遠い存在じゃないくて、ひとりの少女。

その姿は、以前よりも少しだけ等身大に見えた。




 拍手の波が収まったところで、次のイントロが流れた。

軽やかなギターカッティング。会場の空気が一瞬で変わる。

イントロですぐわかった。彼女の定番曲の『ついてきて!』だ。


Mioは一歩前に出る。さっきよりも、ほんの少し呼吸が浅いように見える。


それでも、歌い出しは崩れない。


<放課後のチャイム 少し伸びた影>


声は明るいけれど、奥にある何かが滲んでいる。

ナノハの唇が、小さく動く。フレーズを追っている。

古参ファンの彼女は、歌詞の意味をどう捉えるのだろうか。


<ねえ、覚えてる? 最初は不安で

震えて動けずにいたこと>


ステージ上のMioは薄い笑みを見せている。

しかし、振り付けは小さじになっている気がする。


<それでも一歩踏み出せたのは

君が引っ張ってくれたから>


ナノハの指が、ぎゅっと組み直される。

曲のタイトルだけ見れば、おそらく全員が『引っ張っていく側』の歌だと予想するだろう。

ーーでも、この曲の本題はそうじゃない。


サビに入る。


<ついてきて! なんて強がりも

本当は! 背中押してほしかった>


音程は外さない。リズムも崩れない。

でも、声がわずかに揺れている。


観客席は静まっている。コールはないので、ただ聞いているだけだ。

ナノハの目元が光る。


<最高の気分でいたい 私泣かないよ>


「泣かないよ」の部分で、明確に声が震えた。


ああ、と思う。


完璧じゃない。

でも、涙を流してはいない。彼女はとても強いと感じる。


<だってこれは 終わりじゃなくて

はじまりのシグナル>


そのフレーズで、ナノハが息を吸い込んだ。

二番に入る。


<ねえ 気づいてる? いつからか

少しだけ大人になってること>


ナノハの肩が、小さく震えた。

その様子を見て、俺もだんだん目頭が熱くなってくる。


プリコーラスを過ぎ、サビに入る。


<ついてきて! そう叫びながら

不安定な…… 気持ち抱きかかえ>


「不安定な」の後のわずかな沈黙は、感情を飲み込むすきまだろう。


<それでも それぞれの道へ

ちゃんと笑って進んでいかなきゃ>


涙がナノハの頬を伝う。

彼女は声を出さずに、ただ真っ直ぐMioの方を見つめている。

最後のサビに入った。


<ついてきて! ってもう言えないから>


その一行で、会場の空気が止まったような気がする。



<笑顔で手を振るよ>


笑っている。本当に笑っている。

でも、その表情は我慢しているように見える。


<信じてる! ハッピーな未来へ向けて

ありがとう! 最後に言えてよかった>


ナノハが、唇を噛む。


<これからは

ついてきて! じゃなくて

自分を信じて!>


最後の一音が、静かに溶ける。すぐには歓声が起きない。

数秒の静寂。

それから、爆発するような拍手。


ナノハは涙を拭った。

それでも目はステージから離れない。

小さく息を吸って、言う。


「……わかった」


誰に向けた言葉なのか、分からない。

でも、確かに決意の色があった。


ステージ中央で、Mioがマイクを握り直す。


「ちょっとだけ歌が揺れちゃったけど、泣いてはないからね」


少し掠れた声に、客席から笑いが起きる。


「私、今後について考えてることがあって」


照れくさそうに笑う。


「いつか、何かを作る人になれたらいいなって思ってるんだ」


ざわめきが起きる。


「歌ももちろんだけど……他にも作りたいものがあって。あまーい果物なんだけど」


会場がふっと和む。


「具体的に何を作るかはひ・み・つだよ」


軽くウインクして、マイクを握り直す。

終わりじゃない。移り変わり。

その言葉が、頭の中で何度も反響していた。



***

 Mioは、マイクを握ったまま少しだけ視線を泳がせた。


「次の曲は……君に向けて歌います」


ざわめきが、すっと静まる。


イントロはアコースティックギター。

やわらかい音が、さっきまでの余韻を撫でるように広がっていく。

この曲は『君の中の太陽』というタイトルだ。何度か聞いたことがある。


隣で、ナノハの背筋がさらに伸びた。


さっきまで涙を浮かべていたのに、今はもう泣いていない。


歌い出しは、驚くほど静かだった。


〈うつむいたままじゃ

気づけない光がある〉


Mioは、客席をまっすぐ見ている。

遠くを見ているようで、ちゃんと近い。

誰か一人を選ぶんじゃなく、ひとりひとりを探しているみたいな目だ。


〈君の中の太陽は

まだ沈んでないよ〉


ナノハの喉が、小さく鳴るのが聞こえた。


さっきまで、彼女は受け取る側の顔をしていた。

引っ張られて、背中を押されて、泣いて。


でも今は少し違う。


確かめているのか、飲み込んだのか。

自分の中にある何かを。


〈泣いた夜も 迷った朝も

全部 無駄じゃない〉


そのフレーズで、ナノハの指がゆるむ。

ぎゅっと組んでいた手が、自然にほどけたように見える。


Mioから伝わってくるメッセージは、慰めじゃない。

ただ、『立て』と伝えてきている。

サビに入る。


〈信じてみて 君の中にある

さんさんと輝く太陽を〉


ペンライトがゆっくり揺れる。

さっきの静寂とは違う。小さなうねりのように共鳴している。


〈自分の力で 未来へと

手を伸ばして 前へ踏み出せ〉


ナノハが、ほんのわずかにうなずいた。

自分に言われていると思ったのか。何かを受け取ったのか。

わからないけれど、彼女の目はもう潤んではいないようだ。

二番に入る。


〈誰かの後ろを 歩く日々も

悪くないけど〉


俺は息を飲んだ。

誰かの後ろで満足することに対し、それで良いのかというささやかな疑問。

平凡な自分には刺さるものがあった。


〈いつかは君も

誰かの光になるんだ〉


その言葉を聞き、隣のナノハの呼吸が変わった。

ゆっくりと、深く。

彼女も何かを感じ取っている。間違いなく。


最後のフレーズ。


〈沈まないよ

君の中の太陽は〉


曲が終わる。

拍手は、どこか背中を押す音に聞こえた。



***

 Mioがマイクを持ち直す。


「みんなありがとう。ここまで一緒に来てくれて」


声は落ち着いていて、揺れることはない。


「次が、最後の曲です」


会場がざわめく。俺も無意識に息を止めた。

隣でナノハも、瞬きを忘れている。


静かな電子音が流れる。

鼓動みたいな低音が、ゆっくり重なる。


照明が白に近づき、グラデーションドレスの色がくっきり浮かび上がる。


アクア。

コーラル。

ラベンダー。


どれか一色じゃない。


全部を抱えたまま、そこに立っている。


〈止まったままの時計 チックタック

動かすのは誰? ねぇ、who’s that?〉


問いかけ。


でも答えは、もう決まっている。


〈誰でもない それは私!

弱さごと抱えて 立つステージ〉


その瞬間、空気が変わった。


強い。

さっき泣きそうだった人と、同じ人とは思えない。


〈怖くてもいい

震えてもいい

それでも もう一回

始めたい〉


ビートが強くなり、ペンライトが一斉に振られる。

『Re:Start』ーーこれは別れの歌じゃなくて、始まりの歌だ。


〈Re:Start

何度でもやり直せる〉


その言葉に、ナノハの肩が小さく震える。

彼女は後悔していることがあるだろうか。


〈終わりじゃない

まだまだここから〉


Mioが一歩ずつ前に出る。

堂々と胸を張って。誰の後ろでもない場所へ。


最後のサビに差し掛かる。


〈Re:Start さあ行こう ride on beat!

昨日の自分を jump over it〉


声が伸びる。


今度は、揺れない。


〈信じよう 未来は何度でも

書き換えられる I'm confident〉


力強いロングトーンが、会場いっぱいに広がる。


光がステージを包む。音が止まる。

一瞬の無音。そして、爆発する歓声。


俺の隣で、ナノハも立ち上がっている。

涙のない、まっすぐな目を向けてくる。


「……和人」

「うん?」

「私、やっぱり」


彼女は、はっきりと言った。


「後ろじゃなくて、前に立ちたい」


迷いのない声だった。

ステージの上では、Mioが深く頭を下げている。

完璧じゃなくていい。


やりたい気持ちで、立つ。

その背中を見ながら、俺は思う。


ライブは終わる。でも、人生は終わりじゃない。


Mioの後ろを歩く物語は終わり、それぞれが自分の道を進んでいく瞬間だ。

俺も、そしてきっとナノハも。

前に立つ太陽の存在を、力に変えて。


ステージの照明がゆっくり落ちていく。

拍手はまだ続いている。

でも、さっきまでの爆発みたいな歓声とは少し違う。


どこか――名残惜しい音だ。


Mioは深く頭を下げたあと、もう一度顔を上げる。

マイクを持ち直し、少しだけ息を整えた。


「みんな、ありがとう」


会場が静かになる。


「ここまで一緒に来れて、すごく嬉しかった」


言葉はシンプルだ。

だけど、さっきまで歌っていた人の声だからだろうか。

その一言一言が、やけに重く聞こえる。


Mioはステージの左右を見渡す。

二階席、三階席まで、ゆっくりと視線を巡らせた。


「最初の方は、こんな大きい場所で歌えるなんて夢にも思ってなかった」


少し笑う。


「怖かったし、逃げ出したくなったこともあった」


客席のどこかから「頑張った!」という声が飛ぶ。

それに、Mioはくすっと笑った。


「うん、頑張ったよ。本当にね」


また小さな笑いが起きる。

そこで、少しだけ言葉を探すように間が空く。


「続けてきてよかったって、今は思う」


静かだった会場の空気が、わずかに揺れた。


「だって、こうしてみんなに会えたから」


その言葉に、拍手が起きる。

今度は大きく、長く。


Mioはそれを聞きながら、少し照れくさそうに頭をかいた。


「今日のライブは、私にとって終わりじゃないんだ」


ドレスの裾が、照明の中でゆっくり揺れる。


「これからやりたいことがいっぱいあるから。歌も、他のことも」


少しだけ間を置く。


「だから」


マイクを握る手に、少しだけ力が入る。


「今日ここに来たこと、忘れない」


客席をまっすぐ見つめる。


「もし、迷うことがあっても」


その声は、さっき歌っていた時よりも、ずっと静かだった。


「今日のことを思い出して」


照明が、少しだけ暗くなる。


「それで、また前に進んでいくね」


ゆっくり息を吸う。


「今まで……本当にありがとう」


深い一礼。


ステージのライトが落ちる。


そして――


Mioが、静かに袖へと歩いていく。


歓声が大きくなる。

拍手も止まらない。


けれど、ステージにはもう誰もいない。


「……終わりか」


思わずつぶやいた。


隣でナノハが、首を横に振る。


「いや」


彼女はステージを見つめたまま言う。


「まだ」


その瞬間、客席のどこかで声が上がる。


「アンコール!」


一人、また一人。


「アンコール! アンコール!」


徐々に周りに広がり、大きなリズムを作り出す。

波のように広がっていき、全体揺らす。

隣でナノハも立ち上がっていた。

さっきまで泣いていた顔なのに、今はもう迷いがない。


「アンコール!」


小さく声を出して、手を叩いている。


数分続いたコールのあと――


ステージの照明が、ふっと点いた。


歓声が爆発する。


Mioが、ステージ袖から戻ってきた。


さっきまでと同じサンセット・グラデーションドレスのまま、少し照れくさそうに笑っている。


「ちょっと待って」


マイクを口元に寄せながら笑う。


「こんなに呼んでもらえると思ってなかった」


会場から「もう一曲!」の声が飛ぶ。


「うん、もちろん歌うよ」


軽く息を吸って、客席を見渡す。


「最後に、みんなに向けて歌いたい曲があります」


会場が静まる。


「これは、応援してくれるみんなに、私からエールを送るために作った曲です」


ギターが、静かに鳴る。


「聴いてください」


Mioが息を吸う。


「『エール』」


イントロが流れる。

派手すぎない、でも前を向かせるリズム。

ライブ終盤らしい、少しだけあたたかい空気。


Mioがマイクを握る。


〈最初から強かったわけじゃない〉


会場が静かになる。

まるで、ひとつの告白を聞くみたいに。


〈転んだ数も少なくはない〉


誰もが少しだけうなずく。

それはきっと、誰にでも覚えがある言葉だから。


〈But I never gave up〉


そのフレーズで、空気が少し変わる。

弱さの話だったはずなのに、

いつの間にか前を向く歌になっている。


〈In the back of the crowd

ずっと手を振ってくれた〉


客席の奥の方まで、Mioがゆっくり見る。

あの日も、きっとこんな景色だったのだろう。


〈君を覚えてる〉


その言葉に、

何人かが小さく笑った。


プレコーラス。


〈くじけそうな日もあったけど〉


ほんの一瞬、間がある。


〈I won’t give up 立ち上がれた〉


その一言が、会場のどこかに届く。

自分のことのように。


〈This is my heart

まっすぐに届けるよ〉


そしてサビ。


〈君がくれた声で

ここまで走ってこれた〉


ペンライトが揺れ始める。

誰かがリズムを取って、

その波が少しずつ広がっていく。


〈だから今度は私が

追い風になるね〉


応援されていた人が、

今度は応援する側になる。


この歌のいちばん大事な場所。


〈隣で笑って

We’ll be alright〉


大丈夫、とは言い切らない。

それでも、隣にいると言う。


その距離感が、

この歌らしい。


〈遠回りでもいい

Still on my way〉


まっすぐじゃなくていい。

でも、歩き続ける。


それが今のMioの答え。


二番に入る。


〈Sometimes I feel low〉


英語が混ざると、

少しだけ素直な弱さになる。


〈でも思い出せるよ

君のその笑顔〉


客席のあちこちで

口ずさむ声が増えている。


ブリッジ。

音が少しだけ静かになる。


〈It won’t be easy〉


未来は簡単じゃない。

それでも。


〈迷ったら叫んで

泣いて笑って〉


誰かがペンライトを高く上げた。


〈I’m here with you

ずっとそばにいる〉


それはアイドルの言葉というより、

同じ道を歩く人の言葉に聞こえた。


そして、最後のサビ。


〈君がくれた言葉で

ここまで来れたよ〉


もう会場の半分くらいが歌っている。


〈だから今度は私が

届けに行くよ〉


声が重なる。


〈We can go now〉


前に進む合図みたいに。


〈I’ll stand by you〉


その一行で、

会場の空気がやわらぐ。


ひとりじゃない。


〈On my way〉


完成じゃない。

まだ途中。


だからこそ、続いていく。


最後のフレーズ。


〈これが私なりのエール〉


曲が終わり、客席から大きな拍手が広がった。


拍手は、しばらく止まらなかった。


三千人分の手の音が、ゆっくり波みたいに広がって、また重なっていく。

さっきまでの爆発みたいな歓声とは違う。


どこか、噛みしめるような拍手だった。


ステージの中央で、Mioは深く頭を下げている。

長いグラデーションドレスの裾が、照明の残り火みたいな光を受けて揺れていた。


アクア。

コーラル。

ラベンダー。


さっきまで鮮やかだった色が、少しずつ暗闇に溶けていく。


ゆっくり顔を上げて、客席を見渡す。

それからもう一度、深く一礼した。


袖へ向かう背中は、どこか軽く見えた。


ライトが落ちる。


拍手はまだ続いている。

でもステージはもう静かだった。


***

 ライブが閉幕となり夜の会場を出る。

駅に向かって歩いていくと、雑踏は徐々に離れていく。

さっきまでの歓声が遠くに沈んで、街は静かだ。

ナノハはコートのポケットに手を入れたまま、少し前を歩いている。


ライブの余韻を感じるためなのか、歩く速さがいつもよりゆっくりだ。

靴音がアスファルトに柔らかく返ってくる。


しばらく会話もせず進んでいたが、彼女がふと速度を緩めた。

振り向きはしないが、会場の方に一度だけ視線を送る。


「終わっちゃった」


声は淡々としている。

でも、そのあとに続く言葉は出てこなかった。


ナノハはまた歩くペースを速める。

さっきより体がこちらに寄ってきている気がする。


街灯の光を横切るとき、彼女がちらりと横目でこちらを見る。

確かめるみたいに一瞬だけ。


「でも、来れてよかった」


少し間を置いて、彼女は続けた。


「私も……続ける」


そう言ってから、ナノハは小さく息を吐いた。

胸の奥に残っていた熱を、夜の空気に逃がすみたいに。


俺は「おう」と返事をして、彼女の後に続く。

その背中は少しだけ大きく見えた。


***

────────────────


Mio Graduation Live


ついてきて!は今日で終わり


Lyrics Booklet

(16 Songs)


────────────────


M07:

Triple(トリプル) Prism(プリズム) Dream(ドリーム)

- Sugar(シュガー) Prismette(プリズメット) -


【Verse 1】

まっすぐな光だけじゃ

照らせない場所がある

白と黒のその隙間で

揺れていた本音


笑顔の裏に隠した

小さな負けず嫌いも

全部ここに持ち寄れば

色になると知った


【Pre-Chorus】

ぶつかっても すれ違っても

同じ強い想いがあるから

ひとつの勇気 掛け合わせて

三つで未来へ行けばいい


【Chorus】

違う色のままで 眩しい光を放て

重なった瞬間 広がるハーモニー

誰かを追いかけるんじゃなくて

想いを持ち寄って 照らしにいこう


きらめく想い バラバラな光

この場所でひとつに重ねて

手を伸ばして ぎゅっと掴みにいこう

私たちの Triple Prism Dream


【Verse 2】

甘く弾けるときめきも

溢れ出しそうな衝動も

透き通る空の向こう

静かに灯した決意


同じ色にならなくていい

違うリズム刻んでいても

同じ夢を見ているから

強くなれる 信じてる


【Pre-Chorus 2】

迷っても 立ち止まっても

消えない熱を抱いている

生まれた場所は違っても

目指す未来は同じ


【Chorus 2】

違う色のままで 小さな光を束ね

集まって生まれた このシンフォニー

誰かの影に隠れないで

想いを解き放て 照らしにいこう


高鳴るハートビート きらめく光

この空へと溶け合って

歌に乗せて 届けにいこう

私たちの Triple Prism Dream


【Bridge】

始まりも終わりも分からない

それでも続いてくストーリー

あの日もらった勇気が

胸の奥で響いてる


ほどけない絆じゃなくていい

離れても消えない光

それぞれの明日を抱いて

またここで会おう


【Final Chorus】

違う色のままで 眩しい光を放て

重なった瞬間 広がるハーモニー

誰かを追いかけるんじゃなくて

想いを持ち寄って 輝きにいこう


信じて歩いてきたその軌跡

間違いなんてひとつもない

並んで描く未来図は

もっと強く輝く


きらめく想い バラバラな光

この場所でひとつに重ねて

手を伸ばして ぎゅっと掴みにいこう

私たちの Triple Prism Dream


光は続いていく

それぞれの色のまま


重なり合うその先に

待っているのは


私たちの Triple Prism Dream

────────────────


M13:

ついてきて!

- Mio -


【Verse 1】

放課後のチャイム 少し伸びた影

いつもの帰り道 今日は遠く見える

笑い合った日々も ぶつかった夜も

胸の奥で全部 光ってるよ


【Pre-Chorus】

ねえ、覚えてる? 最初は不安で

震えて動けずにいたこと

それでも一歩踏み出せたのは

君が引っ張ってくれたから


【Chorus】

ついてきて! なんて強がりも

本当は! 背中押してほしかった

それでも前を向けたのは

隣で君が笑ってくれたから


ついてきて! 今日だけは言わせて

最後まで! 最高の気分でいたい 私泣かないよ

だってこれは終わりじゃなくて

はじまりのシグナル


【Verse 2】

ステージのライト まぶしい景色

一人じゃ見れなかった未来

歓声の波に包まれながら

胸の奥へ焼きつける


【Pre-Chorus 2】

ねえ 気づいてる? いつからか

少しだけ大人になってること

手を引かれてばかりじゃダメ

今度は私は引く番だから


【Chorus 2】

ついてきて! そう叫びながら

不安定な気持ち抱きかかえ

それでも それぞれの道へ

ちゃんと笑って進んでいかなきゃ


ついてきて! 声を重ねてさ

どんな未来?が待っているのか わからない

でも諦めないで応援してるよ

同じ空の下で


【Bridge】

うまく言えないけど

さよならじゃない


この場所で育てた

夢は消えない


もしも迷ったら

思い出して


あの日の私たちを


【Final Chorus】

ついてきて! ってもう言えないから

大丈夫! きっと歩いていける だから今は

涙は見せないで胸を張って

笑顔で手を振るよ


信じてる! ハッピーな未来へ向けて

ありがとう! 最後に言えてよかった


君と重ねた思い出は全部 私の宝物だよ


これからは

ついてきて! じゃなくて

自分を信じて!

────────────────


M16:

エール

- Mio -


【Verse 1】

最初から強かったわけじゃない

転んだ数も少なくはない

But I never gave up 涙は

明日のためにしまってきた


駆け出しの頃から

In the back of the crowd

ずっと手を振ってくれた

君を覚えてる


不器用な私に

君は “It’s alright”

その一言で

また歩きだす力をくれた


【Pre-Chorus】

くじけそうな日もあったけど

I won’t give up 立ち上がれた


うまく言えないけど

ちゃんと伝えたいの

This is my heart

まっすぐに届けるよ


【Chorus】

君がくれた声で

ここまで走ってこれた

だから今度は私が

追い風になるね


絶対大丈夫なんて

言えないけど

隣で笑って

We’ll be alright


遠回りでもいい

Still on my way

一緒に進みたい


これが私なりのエール


【Verse2】

うまくいかない日も

Sometimes I feel low

でも思い出せるよ

君のその笑顔


完璧じゃなくていいと

言ってくれたね

だから胸を張って

また歌えるよ


【Bridge】

ねえ この先はきっと

It won’t be easy

それでも歌い続けるよ


迷ったら叫んで

泣いて笑って

I’m here with you

ずっとそばにいる


【Final Chorus】

君がくれた言葉で

ここまで来れたよ

だから今度は私が

届けに行くよ


大きな夢に向かって

We can go now

まぶしい景色を

見に行こう


I’ll stand by you

ひとりじゃないよ

この先もずっと

On my way


これが私なりのエール

────────────────

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