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文学少年の恋物語 〜令和版源氏物語〜  作者: AYASAM
1年生1学期
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夏の自由研究その2 研究グループメンバー勧誘 パート1

 月曜日の授業で自由研究の話が出て、その夜に第一候補である日代さんを誘うが保留にされた。

それから一週間、学校の自由研究においては最適とも言えるが、なぜかマイナーで人気のないテーマを共同研究してくれるメンバーを探して奮闘した。


月曜夜の段階における俺の同級生の知り合いは以下の通り。

クラスメイトはライト、万和人(まなと)、東条さんの3人。水上や葉山は知り合いと呼べるか自信がないため除外だ。

他クラスは奏、春百(はるも)、栄子の3人。黒井と白鳥は一回しか合っていないため除外する。

つまるところ知り合いは合計で6人いる。

これらの面子に対して話しかけるなりメッセージを飛ばすなりして連絡を取ることにした。



 まずは火曜日。

日代さんから返事が来るかそわそわしながら登校し、彼女と顔を合わせたが、もうすこし待ってねと頭を下げられてしまった。さすがに一日では結論はでなかったようで、じっくり考えてとなだめるに留めた。


とある休憩時間では、クラス内の会話に耳を傾けてみる。教室の真ん中付近に注目してみる。


「なあ、水上」

「おう、どうした?」

「水上は自由研究何やるんだ?」

「俺はまだ決めてないな」

「なら、運動パフォーマンスの科学を一緒に調べないか?」

「ほう、面白そうだな」

「特定のスポーツにこだわらず、運動全般に通用する知識であれば、部活が違っても協力できると思うんだが、どうだろう?」

「ふむ、興味あるな。詳しく聞かせてもらおうか」


今度は教室の前の方に注目してみる。


「ねえ、葉山くん」


葉山の周りには取り巻きの女子が三人いる。確か彼、体育祭のときも確か女子に囲まれていた気がする。


「葉山くんはやっぱり、もっと速く走れる方法を研究するの?」

「ああ、そうだね。まだメンバーは決めてないけど」

「そっか。なら、私とーー」

「ちょ、抜け駆けー!」

「ふふん、早いもの勝ちでしょ?」

「だったら私も。いいよね葉山くん?」

「あーえっーと……」


三人の女子に詰め寄られ、葉山は困惑しているようだ。足の速さでモテるのは小学校まででというのを聞いたことがあるが、彼は例外だろうな、などと雑念を抱きつつ、彼の取り巻きの賑やかな会話から意識をそらした。



 昼休みは学食でライトに探りを入れてみる。


「ねえ、ライト」

「なんだ?」

「自由研究何やるか決まった?」

「ああ、決まったぞ」

「あっ、そうなんだ。何やるか聞いてもいい?」

「まだ構想段階ではあるが、バスケに応用できそうなスポーツ科学を研究したいと思ってる」

「おお、すごい。実用的だ」

「まあな。せっかく研究するんだったら、実際に役立つテーマにしたほうがいいかと思ってな」

「ふーむ、なるほど」


ライトは思ったよりリアリストなのだろうかーーそんな疑問を抱きつつ話を続ける。


「誰と研究するの?」

「バスケ部の連中とやる予定だ」

「あっ、それはいいね。頑張って」


バスケ部の連中とは奏、黒井と白鳥の三人のことだろう。見た感じ仲良さそうだったが、一緒にやるということは結構仲が良いのだろうな。もしかするとライトのグループは良いところまで行けるのではないか。



 そして水曜日。

芳しい収穫が得られなかったが、今日こそは日代さんに返事を貰えるだろうと、期待と緊張が半々で登校する。

朝のSHRショート・ホーム・ルームが終わり次第、日代さんに声をかけられるが、またしても頭を下げられてしまった。どうやら日が経つにつれて彼女に声をかける生徒の数が増えているようで、他クラスの生徒からも勧誘されている模様。その中には魅力的なテーマもあり、選択肢を減らすのに思いのほか苦労しているようだ。

彼女が現状を詳しく話してくれるということは、俺のテーマは候補から外れていないということであり、日代さんと共同研究するという栄光を勝ち取ることができる可能性が残されているということだ。

俺は前日同様、頑張ってと励ましの声をかけるに留めた。


第一候補の返事がまたしても保留となってしまったため、作戦を続行することにした。

昼休みに万和人に声をかけ、学食で昼食を取りながら探りを入れてみる。


「万和人は自由研究、何調べるか決めててたりするの?」

「あー、いやいや。全然決めてないよ。和人は?」

「一応決めてはいるんだけど、メンバーが集まらなくて」

「おう、そうなのか。どんな研究だ?」

「一言で言えば学習方法と学習環境」

「ふーん、ぱっとしないな。具体的にどんなことを調べるんだ?」

「そうだねー、まだ構想段階だけどーー」


俺は少し考えて応える。


「例えば、学習方法で言ったら、英単語を暗記する方法はどんなものがあるかとか、テストまでの学習スケジュールの管理方法とか。学習環境で言ったら、スマホ・PC、どの機器を使って学習するのが良いかとか、どんな筆記用具使えばいいとかかな」

「なるほどな。具体的にされると、結構気になる話題だな」

「おっ、もしかして万和人、このテーマに興味ある?」

「そうかもしれないな」

「なら、一緒に研究しない? まだテーマ決まってないんだよね?」

「あーうん、決まってはいないんだけど……」


万和人は口ごもる。先約があるといけないので、確認しておくことにする。


「誰かから誘われてたりする?」

「いや、誘われてはいないよ……」


どうやら誰からも誘われてはいないらしい。となれば、やらない理由はなんだろう。

全然決めていないと言っていたので、他のテーマに心当たりがあるということはないだろう。

テーマに興味があるがやらない理由……もしや俺と一緒に研究するのが嫌ということだろうか。そうだった場合、ちょっとどころか無茶苦茶ショックなんだが。傷つきたくないので、理由は聞かないことにする。


「まあ、まだ時間あるし、最悪来週の授業で決めれば良いんだから」


俺はそんな風にごまかして、その場をやり過ごした。


 そして放課後。文芸部部室にて。俺は霞先輩に自由研究の話を聞いてみることにした。


「先輩は去年、自由研究ってやりましたか?」

「ああ、やったわね。というか今年もやってるわね」

「え、今年も?」

「そうよ。夏の自由研究は一年生とニ年生が毎年恒例だからね」

「あ、そうなんですね」


授業ではニ年生もやっているという話は聞かなかった。


「なら、去年と同じ研究をするというのは認められないのでしょうか?」

「いえ、そんなことはないわ。完全に同じならだめだけど、同じテーマでも違うことを調べるなり、考察の仕方を変えるなりして違う研究とすれば認められるみたいよ」

「なるほど……」


その帰り際。俺は琴吹さんに声をかけ、一緒に帰ることにした。


「琴吹さんは自由研究のテーマ決めましたか?」

「はい。決まってますよ」

「どんなテーマか聞いてもいいですか?」

「ええと、まだ詳しくは決めていませんが、コミュニケーションや言語に関する研究をしようと思います」

「ほう、文芸部っぽい」

「そうかもしれませんね。意識していたわけではないんですけど」

「メンバーはもう決まってるんですか?」

「はい。英語部の人たちが一緒にやってくれます。皆他クラスの子ですけど」


英語部と聞いて春百のことが思い浮かぶ。そういえばまだ探りを入れていなかったので、聞いてみることにした。


「……E組の高橋さんって知ってますか? 長い黒髪の女子なんですけど」

「あっ、はい! 高橋さんともう二人の子が誘ってくたんですよ」

「そっか。あいつ、やりおるな」

「古暮さんは高橋さんとお知り合いですか?」

「小学校の頃、習い事で一緒でした」

「へえ、そんな繋がりがあったんですね」

「あいつは一見大人しそうに見えますが、中身はものすごく陽気なやつなんで、気軽に接してやってください」

「そうなんですね。わかりました」


琴吹さんがフフと控えめに笑う。とてもいい笑顔いただきました。



 次は木曜日。

今日も今日とて、日代さんから返事が来ないかと期待しながら登校する。

平日はもう二日しかないので、そろそろ結論を聞かせてもらいたいところだ。

多少の不安が募ってはいるが、それの彼女の前で表に出すわけにはいかないだろう。対等な関係なのだから、誘った側は潔く待つのみだ。

昨日同様、朝のSHRが終わったのち、日代さんが話しかけてきた。


「古暮くん、おはよう」

「あっ、おはよう日代さん。ええっと……自由研究の件なんだけど」

「うん。決めたよ」


決めたーーその言葉にドキリとし、日代さんの表情を伺う。彼女はにこにこ笑顔だ。


「古暮くんの研究に参加してもいいかな?」


俺の聞き間違いでなければ、彼女は「参加してもいいか」と言った。それはつまり、参加する意思があるということで……、


「えっ、一緒にやってくれるの?」

「うん。まだ枠が残ってればだけど」

「もちろんあるよ! むしろ一つも埋まってないよ!」

「あはは、やっぱり?」

「うん。手当たり次第に勧誘はしたんだけど、全然手応えなくて」

「私も誘ってはみるけど、期待しないでね」


いやそこは日代さんに頑張ってもらはないと、とは突っ込まなかった。ぼっちが回避できただけでも十分なのではと感じたからだ。


「残り少ないけど、俺も頑張って誘ってみるよ」

「うん。お願いね」


キンコンとチャイムが鳴ったので、席につく。

倍率の極めて高い日代さんを仲間にすることができるとは、なんと素晴らしいことか。跳ね回りたい気分だ。

しかしその興奮はすぐに収まる。ふと、二人で足りるのかと疑問が浮かんだからだ。ボリュームの軽い小ボスのテーマならまだしも、俺が手を出そうとしているのは、ラスボス級。膨大な量のデータがネットに転がっているだろう。これを二人で開拓していくのは無理があるのではないか。

あと二人分の枠が空いている。せめてできる範囲で声をかけてみることにしよう。人手が大いに越したことはない。


 その日の夜。俺はラインで自由研究のメンバーを勧誘することにした。

あらかた知り合いには声をかけたが、万和人に関しては返事が貰えておらず、栄子には声をかけてすらいない。この二人がダメだとしても月曜の授業で募集できるだろうが、日代さんとペアで研究するというのも悪くない気がする。彼女と仲を深める良い機会になるのは間違いない。

その場合、研究範囲を絞る必要が出るだろうが、まだ調べていないのでなんとも言えないが……。


「栄子、自由研究のテーマって決まってるか?」

「決まってる」

「何やるん?」

「サブカルの考察」


ふむ。栄子はどうせファッションかサブカルの研究だろうなと見当していたが、正解だったようだ。アニメや漫画ではなくサブカルの考察と言うところ、特定のジャンルを決めていないのか、広義で共通する何かを考察するのか気になる点ではあるな。


「あんたは?」

「俺は学習方法と学習環境だな」

「何それ?」

「まあ、効率の良い勉強のやり方とか、どこで学習したら一番捗るかとかを研究する感じだな」

「ふーん」

「すごい興味なさそう」

「そのテーマ、人集まる?」


うっ、痛いところを突いてくる。まあ、何かしらに熱中している連中からすれば、勉強のやり方なんか興味持つ暇もないだろうけど。


「まあ、超絶不人気というか、認知されないテーマではあるな」

「だろうね」

「だが心配すること無かれ。メンバーを一人は確保した」

「もの好きもいるんだね」


「まあな」と返し俺は栄子との会話を切り上げる。次は万和人とチャットだ。


「万和人、自由研究の件なんだけど、テーマってまだ決まってない?」

「そうだね。まだ何も」

「誰かから誘われたりしなかった?」

「まあ、誘われはしたけど、イマイチだったから断った」


どうやら万和人のお眼鏡にかなうテーマはなかったようだ。ならばチャンスがあると言える。

なんとか説得できないだろうか。


「なら、月曜の授業で決める感じ?」

「うーん、まあそうなるかな」

「もし授業で良いテーマを見つけられなかったらどうするの?」

「考えてないな。一人でなんかやるかな」


一人でやる? 授業では確か2から4人で、1人では不可と言っていたはず。


「一人ではできないって倉石先生言ってたけど?」

「マジ? 聞いてなかったわ……」


大丈夫か万和人。なんだか自由研究に対して意欲というか、やる気が感じられないが。


「資料にも書いてあるよ。資料のニページ目見てみて」


少しの間の後、「ホントだ、書いてあるな」と返事がある。致命的な見落としに気づいて良かったな、本当に。


「昨日、俺の研究テーマに興味あるって言ってくれたよね? 学習方法と学習環境」

「うん。そうだな」

「あれから他の人も勧誘して、一人大物が仲間になってくれたんだ」

「大物?」


ちょっと小賢しいかもしれないが、ここは日代さんをエサにして誘ってみる。うまく釣れると良いが。


「何を隠そう、日代さんです」

「ええっーー!? マジで?」

「冗談ではありません。今日の朝、返事を貰いました」

「ああ、そういや二人、朝話してたな」


やはり見られていたか。日代さんは視線を集めやすいから、教室内の会話は監視下にあると言って良い。


「そうそう。まあ口約束ではあるんだけどね」


日代さんの性格は優れているので、やっぱり他の子と組むねと鞍替えされる可能性は極めて低いだろう。絶対に裏切らないかと言われれば断言はできないが、そう信じる他ない。


「日代さんが裏切ることはないだろ」


俺の考えを見透かしているかのような返事だ。万和人は俺と違ってどこか鋭いところがある。


「だよね。このままだと二人でやることになるかもしれないんだけど、それだと心もとないんだよね。学習に関する事っていろんなジャンルがあるから、人が大いに越したことはないんだよね」

「単に人手が欲しいってことなら、誰でもいいんじゃないか?」

「まあそうだね」


日代さんというエサをまけば、おそらく純情な男子が誰かしら釣れるだろう。しかし、それでは条件が不足している。


「でも、このテーマに興味のある人ならなお良し」

「まあ、それはそうだな」

「その条件に合致する生徒は、現状で一人しかいない」

「……俺か」

「当たり! だから、できればお願いしたいんだよね」

「ちょっと考えさせてくれ」


ここで返信は途絶えた。今日はもう寝よう。



 それから三日後。日曜日の夕方。気づけば万和人からチャットが来ていた。


「和人」

「どした?」

「自由研究なんだが、俺決めたわ」


決めたーーデジャブを感じる。まさかこれは……!


「お前のチームに入れてくれないか?」


来たー! 素晴らしい。万和人が仲間になった。


「もちろん! ありがとう」

「ま、俺にはあんま期待しないでくれ」


万和人から積極性に欠けるメッセージが返ってくる。なんとも頼りないことだ。

やるからには一定の成果を上げたいところだ。高得点を狙いに行くとかではないが、中の上くらいを目指していきたい。


「一緒に頑張ろう!」

「おう」


これでメンバーは三人。これだけの戦力があればいろいろなことを調べることができるだろう。欲を言えばもう一人欲しいところだが、この面子で満足しても良いという気持ちもある。

知り合いに片っ端から探りを入れた結果、収穫は一人だった。そうだ、日代さんに報告しなければ。

俺は日代さんに早速チャットを飛ばす。成果報告だ。


「日代さん、自由研究だけど、仲間が一人増えました」

「ほんと? 誰?」

「櫻井」

「おー、櫻井くんか。古暮くんナイス」


シロクマのスタンプ「グッジョブ」が送られてくる。シロクマよ、この一週間で俺は何度お前の顔を見たことか……。


「ありがとう。そっちは成果あった?」

「ごめん。何の成果も得られませんでした」


シロクマのスタンプ「無念」が送られてくる。シロクマはがっくりと肩を落としていた。


「謝ることはないよ。むしろ勧誘してくれただけで感謝だよ」


そうなだめつつ、明日の授業での成果に期待して会話を終える。メンバーは増えるに越したことはないが、増えなかったとしても大丈夫だろう。

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