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文学少年の恋物語 〜令和版源氏物語〜  作者: AYASAM
1年生1学期
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30/117

前期中間考査 一週間前

 6月13日。今日はテスト一週間前の月曜日だ。

俺は昨日の午後からアニメを夜遅くまで見ていたので、非常に寝不足だ。頭が少し痛い気がする。


少し重い足取りで後ろのドアから教室に入る。


「ライト、おはよう」

「おう、おはよう」


ライトは顔を上げて、元気に応えてくれた。彼の机の上には数学の参考書を開いて置いてある。


「ライト、真面目だね」

「そりゃーな。テストまであと一週間だしよ」

「そーだね」


俺はやる気のない返答をした。


「和人はテスト勉強捗ってるか?」

「うーん、ビミョーかな。特に英語が」


「あー英語か。単語とか文法とかいろいろあるからめんどいよな。まあでも一週間あるし、余裕でいけるっしょ」

「……なんか羨ましい。苦手な教科はないの?」

「特にねーな。授業聞いてれば大抵わかるし」


それ才能では? 俺も授業は真面目に聞いてるけど、ひっかかるところが結構あるぞ。


今までの自分を振り返っていると、チャイムが鳴った。


「はーい、それじゃあ朝会始めます」


起立・礼・着席の号令がかかる。


「来週はテストすでね。皆さん勉強は進んでますか?」


先生は周りを見渡す。半数以上のクラスメイトたちが一斉に目を伏せた。

俺もその一味だったが、周りの動向を具に確認しようと目をきょろきょろ動かしていたため、先生とばっちり目が合ってしまった。

先生はニッと口角を上げ、うんうんと頷いた。何を考えているかわからないが、妙な威圧感があるのが不安でならない。


「テスト一週間前なので、部活動は停止になります。これで一層勉強に集中できますね!」


一ノ瀬先生の言葉にはっきり圧力を感じた。


「えー、マジ?」「部活やれねーのか」「部停やだよー」


クラスが騒がしくなる。俺も心の中で大騒ぎ。


「とにかく、皆さん頑張ってくださいね。では、これで朝会を終わります」



一ノ瀬先生から開放され、ひと時の安息を得た。


「バスケ部も部活休みなの?」

「え、ああ。そうだよ。特に大会も無いしな」

「へー。こっちはもちろん休み」

「ふーん。文化部も同じか」

「じゃー、ライト。勉強教えてちょーだい」

「あー、わりーんだが、俺、部の連中と勉強する約束しててな。もうちょい早く言ってくれたらOKしたんだが、すまんな」

「そっか、わかった」


はぁ、なんてこった。男子で頼れる人、他にいないんだが。

自力で勉強しなければならないのか。とほほ。




 昼休み。

昼食を食べ終わり、図書館に向かった。図書館には非常に混んでいて、勉強スペースの席はほとんど空いていなかった。

四人用の大きな机が一つ空いていたが、座ろうか悩んでいる間に席を取られてしまった。

なので俺は結局教室に戻り、自席で勉強することにした。


教室にいるのは全体の三分の一くらいで、集中して勉強している人、駄弁っている人と様々だった。

普段昼休みは教室にいないので、昼の教室というものをあまり味わったことはなかったが、意外と居心地は良さそうだ。


「おい、待てよ」「ほら、遅-ぞ!」

「図書館行こうぜ!」「ここはこうやって…」


教室中から発せられる様々な種類の音は、午後のひとときをゆるやかに支えるBGM。心地の良い日差しに包まれながら、机という名のベットにまどろみ……。



はっ! そんなことを考えている暇はない。


俺は思考を切り替えて、英語の教科書を開いた。


現在完了はhave[has]+過去分詞、過去完了はhad+過去分詞。


現在完了は~していた。過去完了は~していた時、~すでにしていた。

二つの違いは、現在から過去をみるか、過去の一点から更なる過去をみるかだ。


うん、なんとなくわかってきた。

俺は苦労しながらも、勉強を続けた。


キーンコーンカーンカーン。昼休み終わりのチャイムが鳴った。テスト勉強はここまでにしよう。





 放課後。

今日から部活停止期間になったなので、残念だが琴吹さんと部室に向かうことはできない。声をかけようかと思ったが、彼女は数人の女子たちと一緒に教室を出ていった。

ライトも同じように、バスケ部の連中たちと教室を出ていった。

どちらも向かうのはおそらく図書館だろう。


俺はというと、昼に教室での勉強が結構捗ったので、放課後も教室で勉強してみることにした。

周りを見ると、残っている人は何人かいる。おしゃべりをしているグループがあるが、まもなく教室を出て行った。


話し声が遠のいていくのを聞き届けつつ、俺は教科書を開いた。

物理、英語を中心に、自分の苦手な分野や、不安な部分を集中的に勉強しようと思う。



 勉強して、二時間ぐらい経った。もう時刻は午後六時を回っている。

普段は午後六時四十分ごろに閉まるのだが、テスト期間は早く閉まるので、下校時刻まであと少しだ。


キーンコーンカーンコーン。


「下校時刻となりました。校内にまだ残っている生徒は戸締り、施錠をし、電気を消して速やかに帰りましょう」


下校終了のアナウンスが鳴った。前に聞いたが、放送部が、この放送をしているらしい。

俺はカバンに筆記用具と教科書類をしまい、それを背負う。

周りを見ると、教室で勉強しているのは五、六人ぐらいで、皆片付けをして帰る準備をしていた。

俺は周りの皆を習い、教室を出た。


「古暮君」


俺は後ろから声をかけられた。誰だろうと振り向くと、そこにはなんと日代さんがいた!


「古暮君の家はどの方向にあるの?」

「あー、商店街の方」

「じゃあ私と同じ方向だ」


日代さんは笑顔を見せる。今まで遠目にしか見なかったが、近くで見ると破壊力があるな。


「よかったら一緒に帰らない?」

「あ、うんいいよ」


まさかのイベント発生に俺は動揺を隠せない。もしかすると俺は乙女ゲームの攻略キャラで、主人公に簡単に落とされるチョロいサブキャラなのかもしれない。


「古暮君、教室にいたけど、試験勉強?」

「うん」

「なんかすごく難しそうな顔してたけど?」

「苦手な教科があってね」

「どの教科? 英語、数学?」

「え? まさにその二つなんだけどーー」


ピンポイントで当ててくるなんて、テクニシャンか何かか。……いや、目が良ければ教科書のデザインで何の科目か判断できるかもしれない。


「ふふ。またしても奇遇だね。私もその二つが足を引っ張ってて」

「そうなんだ」

「授業を受けて理解した気にはなるんだけど、いざ問題を解いてみると全然ダメなんだよね」

「あっ、わかる。復習せずにいてあとで痛い目見ることが多い」


俺は頷きつつ、自虐的にコメントする。


「うんうん。他の教科は大抵一回で覚えられるんだけど、英語と数学はそうはいかないんだよね」

「まあ、今までの知識と関連付けにくいっていうのはあるかもしれない」


少し考え、二つの教科が学習しにくい要因をひねり出す。


「あー、そうだね。なんかいい方法ないかな?」


日代さんは同意してくれた。良い方法を考えるが、とっさには出てこない。


「勉強の仕方は習わなかったから、どうすればいいか……」

「うーん。今回は間に合わないけど、試験が終わったら一度勉強方法を見直してみるのはアリだね」

「うん、そうだね」


日代さんの意見に同調する。


「じゃあさ、試験が終わったあとでいいから、お互いそれぞれで効率の良い勉強法を調べて、後で情報共有するのはどうかな?」

「いいアイデアだね。そうしようか」

「うん。よろしくね」


俺は返事をして提案を受け入れる。これで日代さんと共通の話題ができた。これからは気軽に話していけそうだ。



 その後も俺は日代さんと会話をこなしていく。完全にスムーズに受け答えができたわけではないが、彼女の聞く力は凄まじかったおかげで、一定の成果を得ることができた。


女子と下校するのは初めてというわけではないのだが、なにしろ相手があの日代さんであったため、緊張してしまったのはご愛嬌だ。


商店街の近くの交差点に着くと、日代さんは立ち止まった。信号の明かりが彼女の顔を明るく照らす。


「私はあっちだけど、古暮くんは?」

「こっちの方向」

「じゃあここでお別れだね。バイバイ」

「うん、また学校で」


彼女は横断歩道を渡り、住宅街に入っていった。俺はそれを見届けて、商店街の方へと歩き出した。





 夜。

夕食を済ませて二階に上がり、デスクにどっと腰を下ろした。

今日はいろいろ疲れた。教室での勉強が捗ったのは意外だった。そしてまさか、日代さんと一緒に下校することになるとはな。

前に琴吹さんと帰ったことがあっただけマシで、もしそれがなかったら緊張でうまく会話できなかった可能性が大だった。


それよりも、テストまであと一週間しかないので、なんとか頑張らなくては。




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