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文学少年の恋物語 〜令和版源氏物語〜  作者: AYASAM
1年生1学期
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22/117

体育祭 その3 リレー、結果発表、写真撮影

体育祭完結編です。

 今日は体育祭三日目、すなわち最終日。

大掛かりな体育祭も大詰めだ。がんばろう!


今日俺が出場するのはクラス対抗リレーだ。

これは学年別で、走るのは一人あたりトラック半周、すなわち100メートルだ。

テイクオーバーゾーンの使い方によっては、走る距離を15メートルぐらいは伸縮することができる。

我がクラス1Bには陸上の全国大会出場者がいるので、その人のノウハウを活用できるため断然有利だ。

さらに幸運なことに、クラスには運動部の中でも優秀な人たちが集まっているから、これはもう一位を取りにいくしかないだろう。

みんなの足を引っ張らないよう頑張りますか。


「体育祭も最終日となりました! 悔いのない結果を残せるよう、皆さん全力で頑張りましょう!」


司会の三年生のテンションは非常に高い。


「最終日一発目の競技は……クラス対抗リレーだ!」


「出場選手は準備してください」


俺は陣地から出て、トラックに向かった。途中でライトが話しかけてきた。


「和人、一位狙っていこうぜ!」


「うん、頑張ろう!」


俺たちは他のクラスに習い、列を作って並んだ。トラックのこちら側は男子、あちら側は女子が並んでいる。というのも、俺たち男子は偶数番で、女子は奇数番だから、きれいに男女が分かれていた。

最初は女子からで、最後は男子でフィニッシュだ。


「準備が整ったようです。間もなくスタートします!」


会場が静まりかえり、


「位置について、よーい」


パーン! 開始のピストルと同時に周りから大喝采が起こった。


「今、スタートしました。前に出たのはF組。次にD組、B組と続きます。他のクラスも頑張ってください!」


滑り出しは好調だ。


「先頭のF組がバトンを渡しました! 続いて他の選手たちがバトンを渡していきます!」


一回目のバトン交換を終えて、順位の変動はない。


「おお、最下位だったC組が追い上げていく! A組、E組を追い越しました。二人抜きです!」


C組の男子の追い上げがすごい。俺たちB組に追いつこうとしている。ライト、超されるんじゃないぞ!


「バトンが渡りました。トップのF組、二位のD組は優位です」


B組とC組の中盤争いが勃発している。さて、どうなるやら。


「トップのF組は4人目がバトンを握りました。間もなくD組、そしてB、C組も引けをとりません!」


そろそろ出番だ。トラックに向かおう。

トラックの内側から順に、F組、D組と待機していた。それに続いて並ぶ。


「おおっと、B組の選手速い! 凄まじい加速でD組を追い越し、F組ももう目前だ!」


日代さんは足の回転がいつもより速い。練習の時よりも良いパフォーマンスを発揮しているようだ。

これは俺も頑張らなくてはならない。バトンパスミスは絶対に避けなければ。


俺はD組の選手とレーンを交換し、後ろを見ながらゆっくりと加速した。


「古暮君!」


日代さんの真剣な表情を捉えると、右手を後方に差し出して速度を上げた。


「はい!」


パシッ!


よし、上手くいった。バトンを左手に持ち替える。


そこからは、走る方向を向いてひたすら足を動かすだけだ。数メートル先のF組の男子を追っていく。


「さあ、前半の選手が走り終わり、全てのクラスが第六走者となりました。トップは変わらずF組です。

そして、B、C、D、A、Eの順です。E組、頑張ってください!」


俺はコーナーを曲がり、直線に入る。F組の男子との差は少しだけ縮まっていた。

そして、バトンゾーンに入った。


「東条さん、はい!」

「はい!」


俺は右手に持ったバトンを彼女の左手に渡す。


パシッ!


よし、練習通りうまくいった。

俺は後続の選手たちの邪魔にならないよう、トラックの内側に入った。


「お疲れ、惜しかったな」

「うん。でも、これなら一位いけそうだね」

「そうだな」


俺は息を落ち着かせて、ライトの横に並び、リレーを観戦する。


「トップを争っているのはF組とB組だ! B組、F組を追い越すことができるか? 目が離せません」


東条さんの走りも結構よかった。陸上の選手並みにフォームが綺麗だった。


八人目、九人目と順調にバトンが受け継がれていき、残りはアンカーのみ。

アンカーの選手は半周ではなく、一周走ることになっている。

なので、アンカーが鍵を握っていることは確かだ。


「さあ、最後はアンカーです。F組、二位のB組を十メートルほど離してバトンを受け取った! このまま逃げ切れるか?」


「葉山君!」

「はい!」


葉山風人にバトンが渡った。


「アンカー、頑張れ!」「葉山君、ファイトー!」


1Bの陣地から盛大な応援がなされている。


彼は応援に応えるように加速していき、F組の選手との差がどんどん縮んでいった。そしてまもなく、


「おーっ、B組のアンカーがF組を追い越した!」

「彼は中学の陸上で全国大会出場経験があるそうです」


解説の三年生が丁寧に解説した。


「なんと! ますます加速しています! B組のアンカー、怒涛の勢いで二位を突き放した!」


葉山はなんとF組と十メートル程の差をつけて、


パーン!


「B組が一位でゴーーール!」


1Bの陣地を見ると、みんなが歓声を上げていた。


二位F組、三位C組……。


そして、まもなく全員がゴールした。

俺はE組の陣地に戻った。


「葉山君、すごーい!」「ほんとそれ!」


称賛の声が次々と上がる。

最後の印象が強すぎて、アンカーを走った葉山君以外の選手はあまり称賛されていない様子。

所詮俺たちは引き立て役。RPGでいうところの下っ端なのだ。


「ま、しゃーなしだろ。俺らとは格が違うからな」


ライトは投げやりに言った。


「そうだね。別に期待はしてない」

「お前は最高だったよ、和人!」


ライトは俺の肩をトントン叩いて賞賛してきた。


「……ありがとう。ライトも頑張った」

「おう。それじゃ俺、仕事あるから行くわ」

「ああ、頑張れ」


ライトは実行委員の仕事があるといい、そそくさと行ってしまった。


喜ぶのはまだ早い。競技が全部終わるまで気が抜けないな。といっても、俺の出場する競技はもうないが。


俺はリレーが終わったあと、何個か競技を観戦した。

そして、昼休み

食堂で早めに昼食を取った。

午後の競技が始めるまで、手持ち無沙汰だったので屋上に行った。


屋上には生徒が落ちないよう、高いフェンスが囲ってある。隙間から外を見ることが出来た。

グラウンドに人がパラパラといる。実行委員は忙しそうだ。


俺は屋上によく訪れる。教室とは違って、とても静かだ。

図書委員の当番でなく、特にこれと言った用事がない日は屋上に来る。そして本を読む。

絶好の読書ポイントだと思う。


とはいえ今日は体育祭だ。体育祭中は読書を我慢して、祭りに集中しなければ。

俺は屋上を後にした。


結局昼休みを教室で過ごし、午後になった。


借り物競争、クラブ対抗リレーと続いて、


「はい、これですべての競技が終了しました」

「点数の集計に入りますので、しばしの間休憩時間となります」


やっと終わったーと脱力感が押し寄せてきた。




 そして数十分後。


「これより閉会式を行います。まず、実行委員長による講評です」


実行委員長が登壇する。


「皆さん、三日間の体育祭お疲れさまでした。体育祭を無事成功させることが出来ました。これも皆さんのおかげです。ありがとうございます」


裏で一番頑張っていたのは多分彼だと思うが。


「あと、クラスTシャツですが、どのクラスも独創的で、選考のやりがいがありました」


あ、そうだった。忘れてた。それもクラスポイントに影響するんだっけ。


「……以上で終わります」


その後、校長先生の講評、生徒会の講評などが続き、待ちに待った結果発表だ。


「それでは実行委員長による、結果発表です」


実行委員長がまた檀上に上がる。


「初めに、MVPの発表をします。1年、2年、3年の順に、今回の体育祭で一番クラスに貢献した生徒を発表します!」

「まず、1年生……B組、日代ほのかさん!」


パチパチ。


皆、一斉に彼女を注目した。彼女は若干照れながらも「ありがとうございます」返した。

まさか本当にMVPを取ってしまうとは思わなかった。


「2年生……D組、八重樫卓也さん!」


パチパチ。


「3年生……A組、佐藤悠人さん!」


パチパチ!


歓声のボリュームが上がった。


「次に、クラスTシャツの最優秀賞の発表をします」

「最優秀賞は、3年A組です」


パチパチパチパチ!


歓声が体の芯まで響く轟音になった。


「それでは最後にクラスポイントの結果発表します。まず、3位、940点……2年D組!」


パチパチと軽く拍手が巻き起こった。


「次に、2位、980点……1年B組!」


パチパチパチ。より大きな拍手が起こった。

一位を逃してしまった……。

本気で取り組んだ分、相応の結果を期待していた。なので、嬉しさ半分、悔しさ半分といったところだ。

周りを見ると、本気で体育祭に挑んでいた連中は悔しそうな顔をしているし、そうでない一部の奴らは笑顔だった。


「そして、総合優勝は、990点……3年A組!」


パチパチパチパチパチパチ! 

会場が揺れるくらいの大轟音だ。雷が落ちた時より音が大きいかもしれない。


「それでは、体育祭の閉会を宣言します!」


パチパチ、ヒューと歓声が沸き起こった。


俺たちは教室に戻った。皆それぞれの思いを抱えながら教室に入る。


「はー、残念だったね」

「そうだね、あと少しってところだったのに」


俺は座席に座りながら、クラスの声を聞いていた。


十数分後、実行委員の二人が戻ってきた。


「お疲れー」

「あ、お疲れ」


それから数分後。

一ノ瀬先生が入ってきて、点呼を取った。


「皆さん、お疲れさま。今週はどの教科からも課題は出て無いので、ゆっくり休んでください」


先生は俺たちにやさしく微笑んだ。



 放課後。リーダーの水上が全体に話しかけた。


「みんな、ちょっといいか? 集合写真撮ろうぜ!」

「いいねいいね」「そうしようぜ」


皆同調したので、早速机を隅に寄せて並ぶ。


「んじゃーいくねー……タイマーオン!」


「我がクラス1Bの総合順位は何位?」


「「「にーっ!!!」」」


カシャ!


「オッケー、みんなサンキューな。写真は後でグループラインに送るわ」


その後、速攻で机を片付けて解散となった。


俺は配られたプリントをカバンに入れ終えて、周りを見た。

とっとと帰ったのはごく一部の生徒だけで、ほとんどの生徒が集まって、体育祭についてあれやこれやと振り返りをしているようだ。


俺は琴吹さんに話しかけた。


「今日って部活あったっけ?」

「先輩が今週は部活無いって言ってましたね」

「そっか……」

「私、ちょっと用事があるので、先に帰りますね」

「あ、うん。さようなら」

「さようなら」


彼女はさっさと帰ってしまった。


俺も帰ろうと思いカバン持ち上げる。


「古暮君。お疲れ様」


女子の声がして顔を上げると、体育祭のMVPの日代さんだった。


「あっ、お疲れ様です」


咄嗟に敬語が出てしまった。中学からの習慣だから仕方ない。

それに日代さんが話しかけられた驚きも相まって。


「なんで敬語?」

「日代さんMVPだから」

「敬意を払ってくれたわけだ?」


俺は静かに肯定する。


「ありがとう。古暮君も頑張ってたね」

「一位は一回も取れなかったけど」


そう苦笑して応える。もしすべて一位なら優勝していたのではと考えると悲しくなってくる。


「それでも、本気だったのはちゃんと伝わってるよ」


日代さんは俺の肩をポンと軽く叩く。


「だから、謙遜しないで」


俺がゆっくり顔を上げると、彼女は軽く頭を下げて、


「お疲れ様です。ふふ、お返し」


と柔和な笑みを見せた。その姿に思わず息を呑んでしまう。


「そういえば、古暮君ってクラスのグループライン入ってる?」

「えっーと……」


質問されてふと我に返る。

スマホを取り出して、ラインの友達欄を確認する。


「入ってない」

「ならライン交換しよっか。グループに誘ってあげるよ」

「お願い」


俺は頭を下げ、日代さんとラインを交換した。


「ありがと。じゃね、古暮君!」

「うん、さよなら」


彼女は教室を出ていった。嵐のような人だ。


今度こそ帰ろうと思いカバンを担ぐ。


「和人、お疲れ」


万和人が声をかけてきた。なかなか帰れない。まあ、帰ったところで何もすることはないのだが。


「あ、お疲れ」

「お前、結構活躍してたよな。やるじゃん」

「はは、クラスに貢献できてよかったよ」


照れているのをごまかしながら応える。


「なんか嫉妬しちまうな。文芸部なのにめっちゃ運動できるとか」

「まあね」

「いろいろ情報交換したいことあるから、ライン交換しようぜ」

「いいよ」


俺はスマホを再度取り出し、アプリを立ち上げる。

そして速やかに万和人と連絡先を交換した。


「サンキュー。じゃ、部活行くわ」

「うん。じゃあね」


万和人を教室から見送り、外を見ると日が沈み始めている。早く帰ろう。

帰り道は、脱力感と疲労感で、自転車をこぐのが昨日以上にしんどかった。

今日はよく眠れそうだ。




こんな青春時代を過ごしたかったです。

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