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文学少年の恋物語 〜令和版源氏物語〜  作者: AYASAM
1年生2学期
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113/117

新バンドメンバー勧誘 その2

 今日は10月14日の金曜日。

部活帰りに廊下を歩きながら、ふとナノハのバンドメンバー募集のことを考える。

手伝い始めて一週間が経過したわけだが、掲示板の通知は……ゼロ。反応は皆無だ。

知り合いは全滅。そして、軽音部を始めとして他人に声をかけてみたがすべて空振り。

二週間、文化祭準備の合間に動いてみたが、なかなか一筋縄ではいかないものだ。


やれることは、全部やったつもりだ。

ナノハのために動いた時間を無駄だったとは決して思わない。


ふと、彼女の言葉を思い出す。


――待ってるだけじゃなくて、見せたいんだよね。


最近のナノハは、吹っ切れたようで、芯の定まった姿は魅力的に映る。

少しでも彼女の力になれればーーそんな思いから行動してみたものの、芳しい結果は得られなかった。

正直、不甲斐ない。


このまま集まらなければ、ナノハはラブと二人で芸能高校の文化祭に望むことになる。

きっと、2ピースバンドでもライブを成功させることは可能だ。

その様子を、ただ観客席から見ているだけで本当にいいのだろうか。

……そんなわけ、ないだろ。


***


 夜。机に向かっていると、スマホを手に取る。


メッセージを打つ。


『今、電話できる?』


数秒後、既読がついた。


『できるよ』


すぐに通話をかける。


『もしもし』


ナノハの声がする。少しだけ間を置いて、口を開く。


「メン募の件、結論から言うな」

『うん』

「まだ見つかってない」


短く、はっきり。

言ったあとで、少しだけ息を吐く。


「学校の掲示板に応募出したし、軽音部とか知り合いとか、他にもいろんな人に当たってはみたけど」


できることは全部やった。


「ダメだった」


沈黙が訪れる。電話越しに、空気が静まった。


『そっか』


短い一言。責める感じはない。

それが逆に、ちくりと心に刺さった。


「ごめんな」


自然と言葉が出た。


『なんで謝るの?』


すぐに不思議そうな声色で返ってくる。


「頼まれてたことだし」

『でも、できることをやってくれたんでしょ?』

「まあそうだが」

『じゃあ、何も文句はないよ』


あっさりしている。

でも、その裏は信頼が隠されていると感じる。

少しだけ肩の力が抜けた。


そこで一度会話を止め、考える。

このままだと本番はどうするのか。もう二週間しかない。

メンバーが増えたとしても、練習時間が確保できるのか。

揃って文化祭に出られるかどうかは微妙なところだ。

ーーだったら。


「なあ」

「うん?」


少しだけ間を置く。


「文化祭ライブだけど、俺を臨時メンバーに加えてくれないか?」


そう言ったあと、静かになった。

それは数秒だったが、思ったより長く感じる。


『……和人が?』


少しだけ驚いた声。


「役立たずのまま終わりたくないし、近くでサポートしたいんだ」


俺は素直な気持ちを言う。

ナノハの求める演奏レベルに届くかは分からない。

でも、頑張っている彼女を助けるには、これが一番だと判断した。


『そっか』


小さく返事がある。生まれた沈黙は、きっと考えているのだろう。

決して強いるつもりはない。

あくまで提案であり、断られるなら今まで通りの距離を保つだけだ。


『じゃあ、お願いしよっかな』

「おう。任せろ」


短く答える。それで十分だった。


『ふふ、頼もしい』


少しだけ柔らかい声がした。

その様子に安心しつつ、身を引き締める。


「文化祭まで、あと二週間だよな?」

『うん』

「時間ないな」

『だね』


でも、その声に焦りはあまりない。

むしろ、前を向いているようだ。


「とりあえず曲はどうするんだ?」

『一曲はオリジナルで、もう曲は完成してる』


即答だった。


「そうか。どんな内容だ?」

『今の自分のための曲』


なるほど。彼女の心の内を書いた曲か。

返事をして、他の曲について聞いてみる。


「他の曲は?」

『MiraizとMioのカバー曲を1曲ずつやる予定』


どちらも馴染み深いアイドルで安心した。


「OK。あとで譜面か曲のデータ送ってくれるか?」


ナノハから「わかった」と了承が来る。


『じゃあ、ひとまず今日はこれで切るね』

「うん。じゃあ」

『おやすみ』


通話が切れる。スマホを机に置いて、背もたれに体を預ける。


文化祭まで二週間。

臨時メンバーとして加わることが決まった。

正直なところ、万全な状態に持っていけると断言はできない。


ーーけれど。


小さく息を吐く。


彼女の音楽を、未来へと広げていくために。

観客じゃなくて、一番近くで支える者として。

やれることをやろう。

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