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文学少年の恋物語 〜令和版源氏物語〜  作者: AYASAM
1年生2学期
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夏の自由研究 万和人編パート7 主体性

 10月初週のとある放課後。

俺は久しぶりに学校の大図書館を利用することにした。

学習スペースの窓際の席にiPadを置き、資料フォルダを開く。

周囲には参考書を読む生徒や、文化祭準備の相談をしているグループがちらほら見える。


以前なら、放課後にわざわざ図書館へ来て作業するなんて考えられなかった。

飽きっぽい性格で、集中も続かない。

そもそも積極性があるタイプではなかった。


けれど今は違う。


提出期限が近づき、自由研究も最終段階に入っている。

和人は文芸部の展示、日代さんは文化祭実行委員会の仕事で忙しいらしい。

そのため、まとめ作業は俺が中心にやることを進言した。

中間発表では不甲斐ない成果だったので、ここで挽回する必要がある。


iPadの画面をスクロールしながら、研究データを整理していく。


今回のテーマは、いわば学び方の研究だ。


どんな環境で学ぶと集中しやすいのか。

どんな教材が効果的なのか。

どう勉強すれば、効率よく身につくのか。


三人で調査範囲を分担しながら、6月末からここまで検証を続けてきた。


最初に決めた役割分担のメモを開く。


物理的環境 全員

アナログ文房具 日代

社会的環境 櫻井

動画教材 櫻井

AI・チャットボット 古暮・櫻井

時間の使い方 古暮

習慣化のコツ 古暮・万和人


最初は意外と範囲が広いように思えたが、今となってはそう感じない。

俺は軽く息を吐きながら、資料をカテゴリごとに整理していく。


まずは日代さんのデータ。


彼女の資料は、相変わらず綺麗だった。

ノートアプリのスクリーンショット、時間管理のログ、区切り行動の検証結果。


特に興味深かったのは、切り替えの合図についての記録だ。


タイマーが鳴ったら立ち上がる。

ページが終わったら休憩する。

机を片付けたら勉強を終了する。


そういった行動ベースのルールを入れることで、ダラダラ続けにくくなる。

やる気スイッチの切り替えとでも言えばよいだろうか。

単純だが、再現性は非常に高そうに思える。


俺は要点をまとめながら、小さく頷く。


次に、和人の資料を開く。

こちらは情報量が多い。


学習ツールの比較。

優先順位の整理。

勉強時間の配分。

AI活用。

メタ認知。


専門的な事柄も多く、すんなり理解できない部分も多かった。

けれど、最近は少しずつ理解が進んでいる。


和人は、「努力の方法」だけではなく、「努力の方向性」を重視していた。


闇雲に勉強するのではなく、何を優先するべきか考える。 

完璧を目指すより、全体を崩さないことを重視する。


そういう発想は、以前の俺にはあまりなかった。

過去に本気で何かに取り組んだことがあるから、彼は目標設定に目が向いているのだろう。

やっぱり和人はすごい。俺は思わず苦笑しながら、データを閉じた。


最後に、自分の資料を見る。

主な担当は、アウトプットと習慣化。


AI試験モードの使用記録。

動画学習後の正答率。

外で勉強した日の集中度。

復習回数。


数字を見返していると、自分でも少し驚く。

夏休み前と比べて、勉強量そのものはそこまで変わっていない。

でも、理解度はかなり改善していた。


原因は、おそらくアウトプットだ。以前の俺は、動画を見て満足していた。


分かった気になる。

理解した気になる。


けれど実際に問題を解こうとすると、全然できない。


今回、AIを使って何度も問題演習を繰り返したことで、それがよく分かった。

結局、頭に定着させるには、“使う”しかない。

インプットだけでは足りないのだ。


『インプットよりもアウトプットの方が割合的には多くしないと学習効果が薄い。』


そう考察を打ち込みながら、俺はふと思う。


もし自由研究をやっていなかったら、たぶん俺は今でも、「勉強ってセンスだろ」とか言い訳していた気がする。

でも実際は、やり方で変わる部分もかなり大きいように思える。


もちろん、才能によって理解する速度に差は生じる。

けれど、自分に合った方法を探すだけでも、結果は変わる。

少なくとも、俺はそうだった。



 気づけば、外はかなり暗くなっていた。

図書館の照明が白く机を照らしている。

俺は一度肩を回し、スマホを手に取った。


グループLINE『自由研究』を開く。


『まとめ、だいたい整理できた』


送信すると、数分後に既読がつく。

最初に反応したのは日代さんだった。


『ありがとう。助かる』


続いて、和人からも返信が来る。


『さすがだ』


その一文を見て、少しだけ照れくさくなる。

夏休み前なら、間違いなくこういう役回りは避けていた。

面倒そうだったし、自分には無理だと思っていた。

けれど今は、そこまで嫌じゃない。

むしろ、自分のやったことが誰かの役に立っている感覚が、少し嬉しかった。


『まだ細かい修正は必要だけど、方向性はだいぶまとまったと思う』


そう送ると、


『了解』

『後で確認するね』


と返ってくる。


やり取りを終え、俺はスマホを伏せた。


静かな図書館の空気が広がる。自由研究を通して分かったことは多い。


勉強法に絶対の正解はないこと。

人によって合う方法が違うこと。

環境や習慣で集中力は変わること。


そして、少しずつでも試行錯誤を続ければ、人は案外変われるということ。


夏休み前の俺なら、こんなことを真面目に考えることもなかったと思う。


けれど今は違う。


どうすれば続けられるか。どうすれば伸びるか。

それらを自分なりに考えられるようになっている。


学び方を変えるだけで、人は少し前へ進める。

それを知れただけでも、この研究には意味があった。

それに、もし誰かが勉強で悩んでいるなら、俺は今回の経験を伝えられるだろう。


夏の自由研究、案外悪くなかったな。

俺ははにかみながら、大図書館を後にした。


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