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文学少年の恋物語 〜令和版源氏物語〜  作者: AYASAM
1年生2学期
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新バンドメンバー勧誘 その1

 翌日の朝。少し早めに登校し、自席にて学校のアプリを開く。

ついこの前、ナノハから協力要請を受けた、バンドメンバー募集についてだ。

アプリの掲示板で部活動募集のページがあり、そこに新規投稿を打ち込むことにする。


――バンドメンバー募集。

高校生。ベース・キーボード募集。

POPSとロック。オリジナル、カバーどっちもやります。

興味ある人は連絡ください。


前にラインで送ってもらったナノハの投稿内容を参考に、投稿文を作成する。

送信ボタンを押すと、数画面に「投稿しました」の表示が出た。


これで一つ依頼はこなした。


スマホをポケットにしまう。次は知り合いに当たろう。


昼休み、移動教室の際にライトに声をかける。


「ライト、ちょっといいか」

「お、和人。どうした」


相変わらず爽やかな笑顔だ。

席替えをしてから一緒に移動する頻度が減ったため、少し悔やまれる。

だが、嘆いている場合ではない。手短に済ませよう。


「俺の友達がバンドやってて、メンバー探してるところで、

ベースとキーボードなんだけど、興味ありそうな人知らない?」

「うーん……」


少し考える素振り。


「俺の周りにはいなさそうだ。バンドじゃなくダンスならいるんだけど」

「そっか」

「わるいな。役に立てなくて」

「ううん」


答えてくれるだけありがたい。ライトはダメだったか。


次は万和人だ。彼は体育の準備体操のペアに誘った。


「万和人、ちょっと聞きたいんだけど」

「うん」

「知り合いがバンドメンバー探しててさ。ベースかキーボードで誰かいない?」


彼は軽く笑い、「ああ」と返事をする。


「興味ある人はいる。けど、やる気はそこそこだな」


夏の自由研究の序盤の彼みたいなのが来るとなると、それはナノハには合わないかもしれない。


「できれば熱意のある人が来てほしいところだけど」

「そうなると、ちょっと外れるかも」


その返答に俺は唸る。


「一応紹介してみるか? 温度差あるかもしれないけど、それでもいいなら」


一瞬考える。それは違う気がする。


「いや、大丈夫」

「そうか?」

「うん。他を当たってみるよ」


万和人もだめか。まだ知り合いの候補はいるので落胆はしない。


次は東条さんと日代さんだ。昼休憩が始まると同時に席を立ち、二人を学食に誘う。


「二人に聞きたいんだけど、バンドに興味ある人って、周りにいたりしない?」


俺の問いに、二人は顔を見合わせる。日代さんが口を開いた。


「私の知り合いにはいないかも。みんな聞き専かな。千鶴は?」


そう問われ、東条さんは「同じく」と答える。


「でも、もしかしたら見落としてるかもしれないから、一応聞いてみるね」

「お願いします」

「うん、任せて」


日代さんの人脈を持ってしても、収穫はなし。

彼女が一番頼りだったのに、心の中で落胆する。


そして放課後。最後に尋ねるのは春百だ。

すぐに彼女のクラスに向かったが、すでに席にはいなかったので、LINEで聞くことにする。


『春百。俺の知り合いでバンドメンバー探してるやつがいて、ベースかキーボードなんだけど誰かやってくれそうな人いないか?』

『キーボードなら心当たりは何人かいるけど』


その文章に一瞬、指が止まる。でも続きがあった。


『でも今は皆忙しそうだから無理かな』


そこまで読んで落胆する。

文面からして複数人いそうだけど、全員が無理なんて不運すぎる。


『一応聞いてはみるけど、期待しないでね』

『わかった。頼む』


トークを閉じる。



 そこから数日間、他の知り合いにも当たってみるが、成果は得られなかった。

返ってくるのは似たような答えばかり。


そもそも興味がない。興味はあるが忙しくて無理。

やってみたいけど、熱意はない。


それらを仕方のないことと飲み込む他なかった。


俺は廊下で一人、ため息を吐いた。

やはり簡単じゃない。

頭では分かっていたが、こうして並べられると現実として重い。


***


 そして翌週。知り合いは全滅だったので、次の策を打つ。

他人に声をかけることにする。

手始めに、一番可能性のありそうな軽音部を当たってみることにした。


軽音部の部室に来るのは初めてだ。

部室の扉の前で一度立ち止まる。中から音が漏れてくる。ギターとドラムの音。

少し強めにノックする。すると音が止んだ。


「どうぞー」


中に入ると、数人の生徒がこちらを見た。


「すみません、ちょっといいですか」


視線が集まる。


「はい、何か軽音部に用ですか?」


ギターを持った女子が声を掛けてきた。中靴の模様から3年生とわかる。


「俺は1-Bの古暮と言います」


そう名乗ってから、ナノハのバンドメンバー探しのことを簡潔に説明する。


「ベースかキーボードで、興味ある人いませんか」


一瞬の間が生じ、部員たちが顔を見合わせる。

最初に口を開いたのは、ギターの先輩だった。


「うちの部活、見ての通り少人数だから、バンドメンバーは固定になってて」


俺は相槌を入れて促す。


「うんうん。余ってる人はいなくて、ぴったりそろってるんだよね」


別の女子も続く。


「それに、もし外でバンドやるなら、自分でメンバーを集めたいかなって感じで」


その返答には多少驚く。軽音部の人たちは思ったよりやる気があるようだ。

断られてしまったが、納得はできた。

この学校の軽音部はちゃんとしているな。


「そうでしたか。わかりました。お時間を取らせてしまいすみません」

「いや、大丈夫だよ」


ギターの先輩が愛想よく答えてくれる。


「では、失礼します」


俺は軽く頭を下げて部室を出た。


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